🐴🎋とカレー。M💿モブ視点。今日の昼食は珍しくデリバリーだった。
というのも簓さんが「たまには出前のご飯食べたない?」と思いついたからだった。
左馬刻さんの「合歓の弁当のおかず作りすぎて余った分やる…」と言い訳にもなっていない豪勢な手料理のお弁当しょっちゅう食べてるでしょうに…というモブ達の冷ややかな視線はまるで効いていなかったようだ。
今日は弁当を作らなくってもいい社会科見学だったのをモブたちは知るよしもないのだが。
食事に関心がなく、ペラペラの体だから仕方なくと言ってはいるものの簓さん本人が美味しい、お店開けるんちゃう?幸せな味がするなぁ、と満面の笑みで自分の作った食事をしている簓さんを眺めている時あの表情を滅多に変えない左馬刻さんの顔。
本人が微笑んでいるのを自分自身では気付いてないんだろう。
あんなに優しい顔をするのは簓さんか最愛の妹の合歓さんに限定だと思う。
カレー専門店のカレーが食べたいと言い出したのは簓さんである。
店までほど近かったので受け取りにいった事務員が帰ってくるやいなやほぼ全員が群がってきた。
揚げ物のトッピングのもの、野菜盛り沢山のもの、期間限定品と様々だ。
「左馬刻のこれやろ?」
簓さんが肉が多く盛られたビーフカレーの大盛りを左馬刻さんに渡している。
「ああ。…」
カレーのルーを見た瞬間何故か左馬刻さんが固まったような気がしたような…?
その様子を知ってか知らずか簓さんはいつもと変わらぬペースで
「あ!温泉卵乗せようと思ったんにカレーまとまって入ってる袋に入れたまんまやったわ!左馬刻取ってきて♪」
「なんで簓のを俺様が取りに行かないといけねぇんだよ…」
事務所のモブ達は思った。文句は言いながら取りにはいくんですね…と。
口にはせずとも目で語り合った。
大量のカレーが入っている外に出向いているチームの分も大きなビニール袋から温泉卵をガサガサ探している左馬刻さんは結構シュールだな…と思っていると、その時簓さんは何をしているのかと思えば左馬刻さんのカレーに溶け込んでほぼ原型もないような小さなニンジンを自分のカレーにぽいぽいと移し、あまつさえ自分自身のカレーのビーフも少し分けて移していたので見てしまったので口が塞がらない。
「ん、簓」
知ってか知らずか半熟玉子を左馬刻さんが渡すと
「おおきに!」
花が咲いたような笑みでニコニコと笑う。
即座にスプーンですくって食べようとする全員に簓さんが声をかける。
「食べる前にいただきます、言うんは小さな子供でも常識やで!」
チーム内が飼いならされたように各々にいただきますと口走る。
「ほーら、左馬刻も。せーの」
「「いただきます」」
…いや、カップルか?今の御時世こんな20代でアオハルなカップルもなかなか見ることはない…
こんな二人がイケブクロの街、それ以外のテリトリーも仕切ろうと飛躍してるのだから本当に驚きだ。
「…ん?」
左馬刻さんもさすがに気付いたようだった。
あきらかに増えている肉、消えているニンジン。
「出前も美味しいなぁ。左馬刻の料理が一番やけどな」
言及させる間もなく簓さんの言葉と笑顔がが飛んでくる。
左馬刻さんは大きな目をパチクリしたあと言葉少なく
「…そうかよ」
とだけこらえきれない笑みをこぼした。
皆でワイワイとした食事が終わったところで思い出したかのように今日の外回り担当が声を上げた。
「繁華街の果物屋が余って困るから食べて、だそうなんですけど…」
イケブクロの繁華街で不当なみかじめを行っていた夜の店の問題を解決したのはここ最近の話だ。
だが繁華街での経営も相まって夜中まで営業している近場の果物屋まで助けた覚えは毛頭ない。
「まあ好意は素直に受け取っても罰は当たらんと思うで~知らんけど」
簓さんは笑顔で箱に詰まったりんごを受け取る。
左馬刻さんはその様子を見るとりんごを手でとり吟味しているのか目にかなったものを2つ手に取った。
事務所には小さなキッチン…というまでにはいかないが最低限の台所がある。
シャリシャリと皮をむく音が聞こえてくる。
何故かうさぎの耳つきのりんごが更に置かれて簓さんの目の前に置かれた。
「簓、食え」
「なんで?向いたの左馬刻やん」
「…カレーの肉もニンジンもお前の仕業だろ、あきらかに簓の栄養が足りてねえんだよ」
一見わかりにくいとされる簓さんの顔は心なしか赤い。
「バレるのは仕方ないと思ってたけど、じゃあ遠慮なく…あ!」
「なんだよ、何か文句でもあんのか」
「うさぎのりんご可愛いから写真撮ってええ?」
「……好きにしろ」
…この街を仕切っているはずのトップ二人は仕事の時はどんな殺戮も厭わないのに
事務所では今日も今日とて甘い空気を出して平和です。