無題①
獅子神がネコを拾った。
栗色の毛をしたそのネコは、栄養が足りていないのか随分と痩せ細っていた。まだ随分幼く見える上、体格の良い獅子神に連れられていると余計に小さく感じられる。
ネコは怯えた顔をして、獅子神から離れようとしなかった。
「あー……お前なら診てくれるんじゃねぇかと」
「専門外なのだが」
インターホンが鳴った時から、その姿は見えていた。村雨が玄関のドアを開けてやると、カメラ越しに見た時と同じように、それは獅子神の腕の中に抱えられている。
まずネコを見て、そのまま視線を獅子神へ向けた。無言で言葉を促すと、少し言い淀んでから、獅子神は村雨の家へとその拾い物を運んできた理由を告げた。
素気無く答えると、獅子神は困ったように眉を下げる。ぎゅうとネコを守るように抱き寄せた。
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