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    Maue_3

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    Maue_3

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    サクレイオンリー開催おめでとうございます。直前に書いているので、誤字脱字あればすみません。修正したものは後ほどpixivにも掲載する予定です。多分…

    フェチズム高校生の頃、女性アイドルのグラビアを囲んで友人たちと話をしたことがある。この子は可愛い、この子の胸が大きい、この子は足が綺麗だとか。そういう話だ。昼休みの教室でワァワァ騒いだのは今となっては高校生らしい思い出のひとつかもしれない。その時、友人の一人がポニーテールについて熱く語っていた。正直、ロングだろうがショートだろうが、結んでようがおろしてようがなんでもいい自分にとって、彼の熱意はすごいと思いはすれど、完全に理解はできなかった。
    「つまりギャップってこと?」
    「違う!!何でそうなるお前はバカか!?」
    いつも周りをよく見て、人との争いを避けるような温厚な友人がそんな強い言葉を使ったのは、後にも先にもあの時だけだ。思えば、あれはフェチというやつなのだろう。あーあるよね、そういうの。足とか、指とか?その頃のサクヤはどこか他人事だった。可愛い女の子は好きだし、女の子が可愛くなろうと努力する姿も好きだ。だから、ある一点にそれくらいの情熱を持ったりすることは、これからもないと。そう思っていた。







    いつも行くようなスーパーよりも少し大人しいBGMが響く店内。カートを押すサクヤの横を、海外セレブのような出で立ちのレイが歩く。レイが持つだけで特売の野菜も高級有機野菜に見えてきそうだな。変装のためにかけた伊達メガネの向こうで真剣に商品を見つめるレイを見つめていると、気づいた彼が「どうした」とこちらを向く。
    「いんや、なんでもー。スーパーにいるレイって面白いなと思っただけ」
    「たしかにこういったスーパーはあまり来たことはないが……」
    「ぽいわー。まあ俺もこういうのはあんま来たことないけど」
    「そうなのか」
    「全部高いもん。あ、お酒もうちょいいる?」
    「未成年も多い。足りなければそれぞれが買いに行けばいいだろう」
    「そうねー代わりにジュースもう一本買っとくか」
    2リットルのペットボトルをカゴに入れ、メモを確認する。大体のおつかいは完了したことを確かめてから、レジに向かった。カゴの中には高級スーパーで買うにしては庶民的なお菓子やジュースと共に、たこ焼きのための材料が入っていた。今日は、ビバレンメンバーでたこ焼きパーティーの日だ。
    VS AMBIVALENZというオーディションで競い合った14人は、その半分である7人がデビューした後も交流が続いていた。海外で活躍する者もいたため、頻繁ではないが年に一度は全員が集まる機会があった。今回はアグリたっての希望で、たこ焼きをすることになり、サクヤとレイはその買い出しに出ていた。他の面々は、仕事の関係でギリギリに来たり、部屋の準備をしており、二人は彼らに頼まれる形で近場の高級スーパーに来たのだが、なんとなく気を使われたのだろうなと察していた。
    デビューして、一年と少しが経った時に付き合っていることをメンバーに打ち明けた。何人かは驚き、何人かは「やっと言ったか」と呆れたように息を吐き、何人かは自分のことのように喜んでくれた。それから集まる度に、何回かこうやって二人きりにしようとセッティングしてくれるのだが、少し気恥ずかしい。その気遣いはありがたいことではあるので、言いはしないが。
    エコバックにポテチを入れるのに手こずるレイを手助けし、それなりの量になった袋を分け合って店を出る。元々買い出し自体ついでというか、頼まれた量もそれほど多くはなかったので、二人で十分持てる量だ。スーパーから14人が集まる部屋までは歩いてもそこまで時間はかからない。だが、その少しの時間だけでもこんな風に、隣に立って歩けることが幸せだった。こんな家族みたいな空間を生まれた境遇も生きてきた環境も全く違うレイと共に過ごせていることが、なによりも嬉しい。
    「嬉しそうだな」
    「嘘、顔に出てた?」
    「ふ。お前は存外わかりやすい」
    「えーうそぉ……ん」
    ふと、頭に冷たい雫が落ちてきた。上を見上げると空が少し暗い。空からパタ、と細かな水滴が落ちてきたかと思えば、それは一瞬のうちに大きな雨粒となって二人に降り注いだ。
    「やば、とりあえず走ろ!」
    空いていた手を掴み、ザァザァと降り注ぐ雨の中、水音を立てて走り出した。地面で弾けた雨が、足元を濡らす。通気性のいいスニーカーなんて履くんじゃなかった。靴下に染み込んでくる水を感じながら、必死に屋根のあるところを探す。「サクヤ!」と声を上げたレイが指を差す。その先に、二人程度の雨宿りなら十分なシャッターの降りた店先を見つけた。二人揃って、そちらに向かってスピードを上げて走る。その屋根の下に着く頃には、少し息が上がっていた。
    「はぁ、は……ひーめっちゃ濡れたー!」
    「雨に濡れる私もまた、美しい……」
    「はいはいキレイキレイ。てかタオル……あー部屋に置いてきちゃった」
    「構わん。すぐに止むだろう」
    降り注ぐ雨は音こそザァザァと大きいものの、空自体はそこまで暗くはない。レイの言う通りすぐに止むだろう。いざとなれば誰かに迎えに来てもらえばいい、とぼんやりその雨を眺めた。厚手のTシャツに染み込んだ雨は重たく、靴は靴下まで濡れている。少し気持ちが沈むのを自分でも感じながら、ふとレイの方に視線を向けた。
    雨に濡れた質のいいシャツが張り付いて、彼の肌が少し透けている。手触りのいいシャツは濡れてもなおその質感を残しており、そのせいか肌の透けがどこか高尚さを感じさせた。悩ましげな表情で、雫の滴る長い髪を耳にかける長い指先までもが絵画か彫刻のようだ。その指先が、首に張り付いた濡れた髪を持ち上げる。あらわになった白い首筋に、雨が一筋滑り落ちた。はらりと指先からこぼれた髪の一房が、その肌にまたひたりと落ちる。思わず、ごくりと唾を飲み込んだ。
    「どうした」
    「えっ、いや、な、んでもない!」
    不意にレイがこちらを向き、ばっちり目が合う。自分が時間を忘れて彼を見つめていたことに気づき、思わず自分で自分に平手打ちをした。気持ちいいくらい音の鳴った平手打ちを見て、レイが困惑する。
    「本当にどうした?」
    「いや……ちょっと……悪霊退散……」
    「本当にどうした……?」
    困惑するレイをよそに、サクヤは頭を抱えた。いやそんな、まさかそんな。髪をかき上げる仕草とか、そのかき上げた先にあった白く美しい滑らかな首筋に、ドキッとしたとか。そんな高校生みたいな。
    ふと、あの時ポニーテールを熱弁していた友人を思い出す。まさか、自分が彼の言うことを納得できる日が来るなんて。ああ確かにギャップじゃないわ。なんかよくわかんないけど、ギャップとかそういう話じゃない。目を奪われ、心を奪われ、思考を奪われる。抗えない欲が溢れ出す。友人の熱弁を数年越しに理解して、重く深く息を吐きながらしゃがみ込む。
    「サクヤ?」
    声にチラリと視線を上げる。心配そうに名前を呼ぶレイの、髪の張り付いた白い首筋が目に入る。
    「……はあーーーーー」
    「おい、大丈夫か……?」
    「ほんと、あの……なんでもないです……」
    そう言いながら、サクヤはまた頭を抱えた。







    14人が集まるには十分な広さの部屋で、各々が楽しそうに時間を過ごす。そんな中サクヤは一人、ダイニングテーブルで缶チューハイ片手に静かに座っていた。
    視線の先で、レイがキッチンに立つ。エプロンをつけ、クックやアグリと言葉を交わしながら、笑い合っている。腕まくりをしてまな板と向き合おうとしたレイを、アグリが引き止め、ヘアゴムを渡した。彼が礼を言い、そのヘアゴムで髪を結う。首筋から髪を一つにまとめ、少し高い位置でそれを結ぶ。首と、腕と、慣れた手つきでヘアゴムを動かす指から、目を離せなかった。唾を飲み込む自分をかき消すように、酒を煽る。
    「ほ〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん」
    「ングッ」
    突然、横から聞こえた声に酒が思わぬところに入る。咳き込むサクヤに「あーあー」と言いながらティッシュを差し出した男に、礼より先に睨みつけた。男は、イッセイは面白そうにニヤニヤと笑みを浮かべている。たこ焼き大臣として皆にレクチャーしていたはずの男は、いつの間にやらサクヤを観察していたらしい。
    「……イッセイ、たこ焼きもういいの」
    「まあ、みんなそれなりに回せるようになったし」
    「あっそ」
    「で?サクヤくんはそんな熱心になに見てたん?」
    「べつにぃ」
    問いから逃げるように視線を左へ逸らす。その視線を遮るように、イッセイがわざわざサクヤの左側に移動してきた。笑うイッセイは、サクヤの肩を抱き寄せ耳元で囁く。
    「サクヤくんも、男の子やなぁ」
    「……うるせー」
    「あはっ!声ちっさ!」
    「うるせーーーーーーー!!!!!」
    「うるさっ」
    「サクヤ、うるさい」
    反抗するように耳元で大声を出したせいで、近くにいたスバルに怒られた。弟くらい歳の離れたスバルに怒られた二人は「ごめん…」「すんません…」とすっかりおとなしくなる。が、サクヤが「お前のせいだぞ」とでも言うように、イッセイの腹を肘で殴ると、机の下で足を踏んづけて反撃してきた。それに対し、彼の腕を思いっきりつねると、今度は拳が太ももに振り下ろされる。
    「……」
    「……」
    「こらそこ。喧嘩しない」
    無言のまま机の下の攻防を続けていると、呆れたシオンが二人の頭を小突く。またも歳の離れた少年に怒られた二人は借りてきた猫のように大人しくなった。二人して怒られたことをごまかすように、缶チューハイを煽る。サクヤの視線の先では、未だ三人がキャイキャイと楽しそうにキッチンに立っていた。
    「まあ?男の子やし?ポニーテールにドキッとすんのは普通なんちゃう?知らんけど」
    「お前こういう時だけほんとイキイキしてるよね……」
    「だ〜って、サクヤくんいつやったか『女の子は似合ってたら髪型なんでもいい』って言っとったやん」
    サクヤの視線の先を見透かしたイッセイが、心を読んでくる。睨みつけるも彼には少しのダメージもないし、なんならより楽しそうに言葉を紡ぐ。缶チューハイを机に置き、サクヤは観念して頭を抱えた。
    「レイだったらそりゃなんでもいいけどさぁ」
    また視線をキッチンに向ける。レイの結んだ髪が、彼が動くたびにふわふわと揺れる。おくれ毛の残る首筋を、自然と目で追ってしまう。
    「俺、首フェチなのかもしんない……」
    ぐずぐずと酒の回った頭が、言葉をこぼした。そして、イッセイはそれを聞き逃すような男ではなかった。
    「みんなー!!サクヤくんが惚気とるー!」
    「おい、ちょ」
    「えっ!なになにー!」
    「俺も聞きたーい!」
    「お、俺も……」
    「ちょっと。ナゴム兄さんに聞かせるならちゃんとした話にしてよ」
    「私も私も」
    「集まんな集まんな!てかレイが来るのはおかしくない!?」
    イッセイのよく通る大声に、後ろでたこ焼き器と格闘していたタイヨウやナゴムだけでなく、キッチンからボウルを持ったレイまでもがサクヤたちの座っていたテーブルに集まってくる。たこ焼き器でベビーカステラを焼きたいと言っていたから、多分その生地だろう。レイは、持っていたボウルをテーブルに置くと、くすりと笑ってサクヤを見た。
    「サクヤが私のどこが好きか、私だって聞きたい」
    その指先が、サクヤの髪を撫でる。楽しそうに、嬉しそうに、いたずらを仕掛けた子供のように、それでいて妖艶な悪魔のように、レイがサクヤにそう言った。周りが呆気に取られたのも束の間、アグリとタイヨウが「わー!!」と歓喜の声を上げた。
    「ヒュー!」
    「いただきましたぁ〜!」
    「クラッカー鳴らすか!無口も鳴らそうぜ!」
    「な、なんで持ってきてんのー!?」
    「お二人が幸せそうで、僕、ぼく……!」
    「フタバが感極まって泣いちゃった……」
    「結婚式のテンションだね……」
    「おい、コイツ真っ赤だぞ」
    「ほんまや。アハハ!!呆けてもうてるやん!」
    わぁっと盛り上がるその中心で、真っ赤になったサクヤにレイがくすくすと笑いかける。出会った頃はもっと初心で、世間知らずで、どこか子供っぽくて、可愛かったのに。今じゃ俺がレイにどんどん変えられている。
    ああ、俺、レイにこれ以上狂わされたらどうしよう。
    頭を抱えたサクヤは、本日数度目にもなる、ため息を吐いた。
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    Maue_3

    DONEサクレイオンリー開催おめでとうございます。直前に書いているので、誤字脱字あればすみません。修正したものは後ほどpixivにも掲載する予定です。多分…
    フェチズム高校生の頃、女性アイドルのグラビアを囲んで友人たちと話をしたことがある。この子は可愛い、この子の胸が大きい、この子は足が綺麗だとか。そういう話だ。昼休みの教室でワァワァ騒いだのは今となっては高校生らしい思い出のひとつかもしれない。その時、友人の一人がポニーテールについて熱く語っていた。正直、ロングだろうがショートだろうが、結んでようがおろしてようがなんでもいい自分にとって、彼の熱意はすごいと思いはすれど、完全に理解はできなかった。
    「つまりギャップってこと?」
    「違う!!何でそうなるお前はバカか!?」
    いつも周りをよく見て、人との争いを避けるような温厚な友人がそんな強い言葉を使ったのは、後にも先にもあの時だけだ。思えば、あれはフェチというやつなのだろう。あーあるよね、そういうの。足とか、指とか?その頃のサクヤはどこか他人事だった。可愛い女の子は好きだし、女の子が可愛くなろうと努力する姿も好きだ。だから、ある一点にそれくらいの情熱を持ったりすることは、これからもないと。そう思っていた。
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    Maue_3

    DONE表に上げたイッセイおたおめSSの画像じゃないverです
    青い光に包まれてその日はイッセイの誕生日で、同時にツアーの中日であった。
    候補生としてオーディションに参加してから、デビューしてからの現在まで、互いの誕生日はそれなりに盛大に祝い続けてきた。それまで誕生日のことを特に気にもしてこなかったイッセイが、少しは気にするようになったのもVS AMBIVALENZあってのことだろう。とはいえ、イッセイが誕生日に対して人よりも冷めているのは今も同じだった。
    これまでの感じやと、次のMCでサプライズケーキが出てくるんやろな。と、ドキドキもワクワクもせずに彼は考えていた。彼の頭では貰った時のリアクションやコメントに何を言うかがぐるぐる巡っており、そこには少しも楽しいだとか嬉しいだとかを考える余地はない。バクステでタイヨウとクックのデュエット曲を眺めながら水を飲む。そういえば、初めてライブで誕生日ケーキが出たんは、タイヨウやったっけ。あの時は泣いてコメントを貰うまでに少し時間がかかってたなぁ。なんて、随分と前のことを思い出してくすりと笑った。自分には到底できないことだ。可愛らしい、と思うと同時に、どこか羨ましかった。誕生日を素直に喜べて、サプライズに感極まる彼が、なんだか、羨ましい気がした。
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