団トルポロン、ポロン綺麗な音が鳴る。
優しくて、繊細でそれでいて心躍るような美しい音‥。
その音をもっとよく聞こうと耳を傾けるとブツリと、その音は唐突に止んでしまった。
不思議に思い、音の主を見つめると彼の指は震え、そのまま再び鍵盤を触ることはなかった。
***
「それではーー次、トルペくん。演奏を始めてください。」
こうやって彼の演奏を聴くのは何度目だろうか。
彼は何度も何度もこの楽団のオーディションに申し込んでいた。
最初の方こそ、人前で弾けない欠点がある以上採用することはないだろうと最終選考に行く前に彼を落としていたが、彼はそれでも我が楽団のオーディションに参加し続けていた。
僕は致命的な欠点を抱えながらも、楽団でピアノを弾きたいという彼の強い意志に負け、彼を最終選考まで通すようになった。
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