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    🎾 /月寿

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    月寿 ※大学三年生×大学一年生
    秋の始め、月光さんに会いに行く寿三郎くんの話
    月寿の日おめでとうございます!(遅刻)

    満月が近づいてくる 「お、紅葉や」

     秋とは、知らん間に近づいてきよるもの。
     小学生の頃は、遠足やら運動会やら学校行事の準備が始まると、子どもながらに秋を実感したもんやなぁ。中学ん時は、部活をサボってフラフラしよると金木犀の香りがして、もう秋やなぁってぼんやり空を見上げてみたり。高校はテニスに打ちこんどったせいか記憶が薄い。夏の大会と夏休みが終わって、気がつけば秋、みたいな。でもまさか、大学生になって初めて発見した秋が、ラーメン屋でもろたスタンプラリー用紙の絵柄になるとは思いもよらんかったけどな。
     まだまだ暑くて、ちょっと歩いただけでも汗が滲むっちゅうのに、街はもう、秋を演出するのに躍起になっとる。服屋のマネキン、百円均一のハロウィンコーナー。行楽弁当のチラシに、『秋限定!紫いもパフェ』のポスター。他にもいろいろ。駅に隣接した商業施設を、てっぺんのレストラン街から地下の食品フロアまで下る間にも、そこかしこに秋が溢れとる。ついこの間まで真夏やった気ぃするのに、九月に入った途端にコレやもんな。急に「もう秋です」と言われてもピンと来んのに、こうも秋ムードを押し付けられると、なんや自分が身に付けとるオレンジ色のTシャツとスポーツサンダルが浮いとるような気ぃさえしてくるわ。
     食品フロアを散策しながら、お目当てのスイーツショップを目指す。この駅を利用する度に立ち寄る店で、値段はそこそこするけれど、その分味は折り紙つき。自分へのご褒美、と言う言葉を覚えたのは最近のことやね。この駅へ来ること自体がご褒美みたいなもんやから、ご褒美の二乗になってまうんやけどな? 価値あるものへ対価を払うことは、悪いことではない。そう教えてくれた人へのお土産も兼ねているから、ちょっとくらい奮発したる。
     八月に買うたオレンジゼリーとレアチーズのカップデザートがさっぱりしていてうまかったから、これはリピートせなっちゅうことで、かなり楽しみにしとったんやけど。
    「……まぁ、秋やからね」
     その店も、隣の店も、そのまた隣も。ショーケースの中で推されているのは芋、栗、かぼちゃ。さっぱりっちゅうより、ほっくりっちゅう言葉が似合いそうなスイーツばかり並んどるわ。うんうん、俺のこと太らせる気満々やね。芋、栗、かぼちゃのスイーツなんて、うまいに決まっとるもんな。俺の心はさっぱり爽やかなフルーツの気分から一転。結局選びきれんくて、スイートポテトとかぼちゃプリン、モンブランケーキをそれぞれ二つずつ購入してもうた。
     もう一切何も買いません。速やかに目的地に向わな、ここには誘惑が多すぎる。と、踵を返したところでふと目に入ったのは。
    「……お月見団子」
     向かいの和菓子屋に掲げられたのぼりをそのまんま読み上げると、「今年の中秋の名月は九月十日なんですよ」と、店のお姉さんに話しかけられる。
    「へぇ。十日って言うたらもうすぐやないですか」
    「今のところ天気予報は晴れですから、綺麗な満月が見られるといいですね」
     その笑顔に負けて月見団子も購入。もろたばかりのスタンプラリー台紙が、あっという間に半分埋まってもうたわ。せやけどこればかりは仕方がない。俺の目と脳みそは、『月』の文字に敏感に反応してまうように作り替えられて久しいから。

     外に出ると空はすっかり暗くて、半袖から覗く肌を擽る風がちょっぴり冷たい。ちょっと前まで、もうちょい夕方の時間が長かった気ぃするのに。
     目的地のアパートが近づいてくると、いつだって胸がざわざわして落ち着かない。待ちきれへんくて鼻歌をうたいながら歩く日もあれば、やけに足取りが重い日もある。今日は前者やね。両手いっぱいのスイーツを披露したら、どんな反応すんねやろ。呆れるやろか。笑ってくれるやろか。
     空を見上げると、満月になりきらない月がふわりと輝いている。きれいな円を描いてなくたって、こないに美しい。満月の日だけもてはやすなんて、勿体ないと思うんやけどなぁ。



    「……秋ですね」
     さすが冷え性の月光さん。もう長袖のもこもこを羽織っとる。色はこっくりとした茶色で秋らしい。スタンプラリー台紙のイラストより先に、月光さんの姿で秋を感じたかったわ。
     はあ……とため息をつくと不思議そうに首を傾げられたので、かわええなあと思いつつ、「そんなことよりも!」と、両手いっぱいのお土産を差し出す。
     さあ、どないな反応を見せてくれますか!と、期待をたっぷり込めて少し高い位置にある顔を見上げる。呆れるやろか、買いすぎやって怒られるやろか。しばしの間を置いて、ひょいと紙袋を受け取った月光さんは。
    「重かっただろう。外は暑くなかったか」
     そう言って優しく微笑んだ。これはちょっと予想外やね。「いえ全然」と返すつもりが「あ、好きです」と、ちんぷんかんぷんな返事をしてもうた。だってそんなのずるい。反則ですわ。好きなのに、もっと好きになってまうやんか。
    「毛利、顔が赤いぞ」
    「……原因はアンタやってわかっとるやろ」
     この人たらし。と、視線で訴えかける。当たり前やけど効果はなし。誰彼構わずたらされたらかなわんので、ほんまは一生毛利寿三郎たらしでいてほしい。そない図々しいこと、まだ口には出せんけど。
    「今回はいつまで泊まるつもりだ」
    「あ~、何も決めてへんくて。バイトのシフト入っとるけど、ここから行ける距離やしなぁ」
    「それなら、十日までいるといい」
    「十日?」
     ……十日。九月十日。なんや聞いたことある数字やなと思ったら、さっき教えてもろた『中秋の名月』の日やな。
     頭の中に、一つの光景が浮かぶ。ベランダで寄り添い合って、丸くなっていく月を見守る月光さんと俺。椅子やテーブルは無いから、レジャーシートを買うてくるか、最悪いらん紙でも敷いたればええやろ。幸い甘いものはぎょうさんあるし、毎晩飲み物とおつまみなんかも用意して。うはぁ、最高やね。せやけど俺は、欲張りなので。
    「ほんなら、十一日の朝までおってもええ?」
     満月を見届けて解散なんて勿体ないやんな。
     色々な期待を込めて長い腕にしがみつく。「構わない」と呟く声は平静を装っとるけど、ほっぺたはほんのり赤い。ああもう、ほんまにかわええ。めっちゃ好きです。
     くいくいと腕を引けば、俺の願いを正しく読み取った唇が、ゆっくりと近づいてきた。










    外歩いてきた毛利くんが汗だくになってると思ってクーラーをつけて待っていたら冷え冷えになっちゃって、もこもこを着てしのぐ月光さんかわいいです(捕捉)
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