悪夢『きっちゃん』
『なに?ゆきんこ』
『はーなーれーろーなのだー』
そう言って手で彼の体を推しやろうとするも
安城はぎゅうぎゅうと抱きしめる手を離さなかった
『苦しいのだきっちゃん!…きっちゃん?』
返事がなくなった安城の表情を伺おうと顔を見上げる
ポロポロ
!!
安城が泣いていた
抱きしめる力はそのままに
ゆきんこを見つめる目は優しいのに
その灰色の目から涙が頬を伝っている
『きっちゃんどうしたのだ?
どこか苦しいのか?』
雪がそう問うと
ゆっくり安城が口を開く
『ゆきんこが…いなくなる夢を見た
やっと帰ってきたと思ったのに
向こうで新しく好きな人が出来たって…
この人と結婚するのだって…
知らない男が空港まで迎えにきたんだ…』
『俺…バカだから格好つけてさ
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