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    Satsuki

    短い話を書きます。
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    Satsuki

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    よいこのアガルタ童話。アシュずきんちゃん。のんRさんのイラストが可愛かったので落書きしました。ギャグです。怒らないでください。ユリアシュ??

    アシュずきんちゃん あるところに、アッシュくんという、それはそれは可憐な男の子がいました。いつも赤い頭巾をかぶっていたので、みんなから親しみを込めて「アシュずきんちゃん」と呼ばれていました。アシュずきんちゃんはとても優しく、頼まれれば何でもお手伝いをしてくれたり、自分からも進んで困っている人を助けてくれたりと、いつも頼れる男の子なので、みんなから大層可愛がられていました。
     ある日、アシュずきんちゃんは、森に1人で住んでいるおばあさんの所へお使いに行くことになりました。
    「いいかいアシュずきんちゃん。森の中には、怖くて恐ろしい狼が住んでいるから、気をつけておゆき。決して道草を食ったりなんかしちゃあいけないよ」
    「はい、分かりました!」
     アシュずきんちゃんは、おばあさんへのお届け物を持って、一人で森の中へと入って行きました。森の中は静かで、鳥たちの鳴き声だけが聞こえてきます。しかし、元気に小道を歩いていくアシュずきんちゃんの姿を、木の陰からそっと見ている影がありました。そう、ユーリス狼です。彼は、とても美しい菫色の髪の毛をして、灰色の長い尻尾と、同じく灰色の大きな耳を持つ美少年です。何を隠そう、ユーリス狼は、森に住むソロンおばあさんから言われて、アシュずきんちゃんを捕食(make love)するために狙っていたのでした。そうです、このお使いは、闇に蠢く者たちの罠だったのです。
    「捕食って言ったってなあ……」
     ユーリス狼は、ちょっと、いやかなり困ったように頭をかきました。ソロンおばあさんの言葉が、大きな狼の耳に蘇ります。
    「待っていたぞ、狼よ」
    「いやなんでだよ。狼じゃねえし、このふざけた世界はなんなんだ?」
    「ここはワシが作り出したおとぎ話(妄想)の世界だ。お前はワシの言うことを聞かねば、一生この世界を彷徨い、やがて死ぬことになるであろう」
    「なんだと……!?」
    「いいか、よく聞け。今にアシュずきんがこの小屋を訪ねて来る。ワシは物陰に隠れているから、お前は寝台で待ち伏せをしてアシュずきんを捕食(make love)するのだ」
    「捕食(make love)……」
    「そう、捕食(make love)だ」
    (ジジイ、何考えてんだか分からねえけど、元の世界に戻るにはやるしかねぇ)
     ユーリス狼は、はあ、と溜息を吐いて、大きな尻尾を揺らします。と、その時。
    「やあ、ユーリス!」
     ユーリス狼は、突然声をかけられてビクッと身体を竦ませました。見ると、アシュずきんちゃんがにっこりと笑ってユーリスの後ろに立っているではありませんか。きっと忍び足スキルを習得しているに違いありません。
    「こんなところで何をしているの?」
    「いや、別に、なんでもねえよ」
     ユーリス狼はごまかすようにそう言うと、アシュずきんちゃんのお使いの籠を見てニヤッと笑いました。
    「お前はどこへ行くんだ?」
    「病気のおばあさんのところへ、お使いに行くんだ」
    「そうか、それならそこの花畑で、スミレの花でも摘んでいってやれば喜ぶんじゃないか?(おばあさんじゃなくて、じいさんだけどな)」
    「わあ、それはとってもいい考えだね! ありがとうユーリス!」
     アシュずきんちゃんをうまく花畑へと誘い込むと、ユーリス狼は急いでおばあさんの家まで走って戻ります。そして、ヤケクソのようにソロンおばあさんを寝台から追い出して、自分が寝台へもぐりこみました。
     やがてアシュずきんちゃんがおばあさんの家に辿り着くと、ユーリス狼はおばあさんの声を真似をして、アッシュずきんちゃんを中へと招き入れます。
    「こんにちは、おばあさん。具合はどうですか?」
    「ああ、だいぶ、いいんだよ」
    「あれ? おばあさん、どうしてそんなに大きな耳をしているんですか?」
    「お前の可愛い声をよく聞くためさ」
    「そうなんですね。じゃあおばあさん、どうしてそんなに大きな手をしているんですか? するどい爪もありますけど……」
    「そうだな、お前の事をしっかりと抱きしめるためさ」
    「じゃあ……どうして、そんなに大きな口をしているんですか?」
    「それは、お前を、捕食(make love)するためさ!!」
     ユーリス狼はそう叫ぶと、寝台から飛び起きました。そして、驚いて目を丸くしているアシュずきんちゃんのことを、素早く押し倒してしまいます。突然押さえつけられたアシュずきんちゃんは、寝台の上でユーリス狼に馬乗りにされて、身動きを取ることができません。
    「さあ、大人しく捕食(make love)されるんだな!」
    「そんな、嫌だよ食べないで!」
     思いのほかアシュずきんちゃんが本気で暴れるので、ユーリス狼は舌打ちをして、乱暴にアシュずきんちゃんの洋服をむしり取ります。
    「痛い! 痛いよ、やめて!」
     アシュずきんちゃんの叫び声にハッとして見ると、ユーリス狼の爪が食い込んで、アシュずきんちゃんの白い手首から血が滲んでいます。
    「ちぇっ。お前が抵抗するから、痛い目見ることになるんだぜ」
     まるで悪党の言いようです。ユーリス狼は仕方なしに、涙ぐんでいるアシュずきんちゃんの手首の傷に顔を近づけて、ペロペロと傷を舐めてやりました。見れば、服を破られて露わになった体にも、引っ掻きキズが付いてしまっています。ユーリス狼は怯えているアシュずきんちゃんをあやすように、しかし両腕は押さえつけたまま、傷ついた場所を一つ一つ丁寧に舐めてやりました。
    「くすぐったいよ……」
     その優しい仕草に、アシュずきんちゃんは瞳に戸惑いを浮かべてユーリス狼のことを見上げます。ユーリス狼も、なにもアシュずきんちゃに酷いことがしたいわけではないのです。ただ、捕食(make love)をしないとこの世界からは出られません。
     ユーリス狼は、困ったように顔を顰めて肩をすくめると、今度は先ほどまでとは打って変わって、とても優しい手つきでアシュずきんちゃんの肌を撫で始めました。首筋や胸元をペロペロ舐めて、涙をそっと拭ってやります。
    「ユーリス……?」
     アシュずきんちゃんは、優しくなった狼に困惑して名前を呼びます。このままだと食べられてしまうというのに、狼にもどうやら事情があるようで、どうしたら良いのかわからないのです。
     しかしだんだん恥ずかしい場所にまでユーリス狼の手が伸びてくるので、もじもじと足を閉じ合わせて体を捩り、逃げようとしました。
    「そ、そこは……あっ♡」
     ユーリス狼は黙ったまま、とうとう自分も服を脱ぎ捨てると、アシュずきんの肌に肌を重ね合わせて、ぎゅっと抱いてやりました。アシュずきんも、解放された両手をぎこちなくユーリス狼の肩に置いてみます。その肌はあたたかくて、なめらかで、とても彼のことを恐ろしい狼だとは思えませんでした。
    「僕のこと、食べるつもりなの……?」
    「……ああ。そうしねえと、俺もお前もここから抜け出せねえ」
    「よく分からないけど……事情があるんだね。……食べられるのは怖いけど、君にだったら……」
    (良いぞ、そこだ! いけ! 捕食するのだ!)
     ソロンおばあさんが物陰でガッツポーズをした、その時でした。
     バリバリバリ!!!
     物凄い轟音がして、突然おばあさんの家の真ん中の空間が切り裂かれたのです。
    「アッシュ、ユーリス、無事か?」
    「「先生!?」」
     ユーリスとアッシュは、同時に声を上げました。空間の裂け目から顔を出していたのは、天帝の剣を携えし我らが担任、ベレト先生だったのです。
    「な、なんと……! 凶星はワシの妄想をも切り裂くか……!」
     ベレト先生が一歩こちらの世界に足を踏み入れると、その姿はたちまち大きな銃を持った狩人に変化しました。すぐさまその猟銃を構え、ソロンおばあさんを一撃。あえなく術は破られて、アッシュとユーリスは無事、元の世界に戻ることができましたとさ。
     めでたし、めでたし…………






    (い、一体なんだったんだろう、あの世界は……よく覚えてないけど、僕、どうしてあんな……???)
     アッシュは元の世界に戻った後も、しばらくまともにユーリスの顔を見ることができませんでした。今だって、目も合わせることもできずに彼とすれ違うと、一瞬、あの大きな耳とふさふさの尻尾が見えたような気がしてしまいます。ドキリとして思わず振り返ると、ユーリスもまた、アッシュの頭に真っ赤な頭巾が被さっているような気がして、こちらを見たところでした。
     ユーリスはアッシュと目が合うと、にやっと意味ありげに笑って見せました。
    (あんまり見てると……今度こそ食っちまうぞ!)
    (……!)
     その手にはやっぱり鋭い爪が残っているように見えて、アッシュはありもしない引っ掻き傷が、ひりひり痛む気がします。そして、その傷をなぞった、ユーリスの熱く濡れた舌の感触を思い出してしまうのです。カッと顔を赤らめると、アッシュはぱたぱたと逃げて行きました。ユーリスはその後ろ姿を見送って、狼のような舌なめずりをひとつ。
     どうやら、この世界でアッシュが捕食されてしまう日も、遠くないのかもしれませんね。

    終わり
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