𖠚ᐝ 窓から光が差し込む部屋に、トタトタという足音が近付く。
カーテンを開けている寝ぼけ眼の兄と、階段を降りリビングへとやってきた弟が顔を合わせた。
「おはよう、兄さん」
「おはようございます」
目が合い、にっこりと微笑む。久しぶりの二人揃っての休暇は、なんだか心まで穏やかになるようだ。
「みんなもおはよう」
そう言ってクダリは小さなボールから、大事な家族たちを放つ。ノボリも続いてカチリと音をたてボールのボタンを押した。
出てきた家族たちも皆この休みの日を楽しみにしていたようで、飛び出すように出てくるデンチュラに、踊るように舞うシャンデラで部屋の中はごった返した。
シビルドンのタックルまがいな愛情表現をくらいながら、朝ごはん作るね、とクダリがキッチンへ向かう。ではこちらでコーヒーの準備を、とノボリがカップを取り出す。
「あっ!!」
刹那、足元を移動していたイワパレスにつまづき、ノボリが転倒した。
ノボリが尻もちをつく音とともに、ポケモンたちとクダリの悲鳴に近しい声が響く。
「兄さん!イワパレス!大丈夫!?」
「えぇ、私は平気です。イワパレス、怪我はございませんか? 完全に私の不注意です。申し訳ございません·····」
盛大にすっ転んだ自分よりも他者を心配する自らのマスターに、イワパレスは申し訳なさそうに小さく鳴き声を上げた。
「とりあえず、二人とも無事でよかった。他のみんなは怪我してない?」
そう言いながらクダリが見回すと、ドリュウズが自らの爪先で破片のようなものをつついていた。どうやら、今の騒動でカップがひとつ割れてしまったようだ。
「あ、これ·····」