無様に悲鳴を上げた侍女を細い腕が薙ぎ払う。
たおやかな白い手からは想像もつかない力が人一人を扉へと叩き付けた。
へたり込んだまま投げ飛ばされた同僚に視線を向け再び戻せば、主人の夜着が眼前に迫っていた。頭上から普段と変わりない主人の楽しげな声が降り注ぐ。
ねぇ、貴方はこの秘密を墓まで持っていけるかしら?
赤子ほどの大きさもある卵を抱えて皇妃は微笑んだ。
帝国には竜騎士がいる。世界最強のドラゴンを倒せるのはドラゴンしかいないんだ。そのためにはドラゴンを探し出して、契約し竜騎士になるしかない。そうしなければ国はすべて帝国に滅ぼされてしまう。
契約なんて馬鹿なまねだ。驚異的な回復、力の増大、契約モンスターの力、それは確かに得難いものだが、契約には必ず代償が伴う。過去の契約者たちの末路は悲惨だ。帝国の竜騎士の噂を知っているのだろう。慈愛の姫、第3皇女ユーフェミアが今では冷酷な殺戮者だ。お前は何を失う?
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