ふ、と目が覚めた。海の底にたゆたっているかのような浮遊感に身を任せ、もう1度目を閉じようとする。それなのに、何やら聞き覚えがあるような声に妨げられた。
「ちょっとちょっと、寝ないでよ、辻ちゃん」
唸りながら寝返りをうつと今度は揺さぶられる。心地よい時間を邪魔された俺は顔を顰めて起き上がった。
「なんで、す……あ、なた、は…?」
目深なフードで顔の3分の2程が見えない男がそこにいた。見覚えはない、気がする。男は辛うじて見える口を弓なりにしならせた。
「誰…と言われると困るけど……強いて言うならセンパイ、かな?」
「センパイ…?」
「あー…もう時間みたいだ。意外と早いね。また今度話そっか」
「え、ちょ…ッうわ?!」
2269