もう揃わない三角関係 昔の夢を見た。
うっすらと目覚めながらも、瞼の裏に残った面影を惜しむような気持ちで目を閉じたままでいると、布団の上に投げ出された手に誰かが触れた。ためらうように、指先で手首の辺りをそっと撫でる感触。
こんなふうに触れられた事もあったな。
夢で会った人物がまだ隣りにいるような気がして、引玉はそっと呟いた。
「……鑑玉?」
その途端に、引玉に触れる指が止まった。
ん? と思っていると、今度はがしっと強く手首を掴まれた。骨が折れそうなほどの馬鹿力に、夢の余韻が一気に吹き飛ぶ。
「師兄」
目を開けると、隣りにいたのはかつての親友ではなく、寝起きで癖っ毛が爆発している権一真だった。
「一真、どうした?」
「……おれのこと、鑑玉だと思ったのか?」
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