BEYOND11話で美羽はアルタイルに触れ、対話をする。
その際、アルタイルとともにいた島のゴルディアス結晶とクロッシングして、弓子・エメリーとの再会を果たした。

ゴルディアス結晶は存在と無の地平線とも呼ばれ、SDPの源にもなっている結晶体のことだが、大きな特徴として存在していた者たちの情報を保存し成長する特性がある。
これはミールそのものの本来の性質が形となったものだ。
再会した弓子・エメリーも保存された本人たちの情報を元にミールが「美羽に最も近しい者」の姿を再現して見せている姿である。
去り行くものたちの記憶、受け継がれていく人の意思の集合体。
いなくなった者たちのことを決して忘れない───ゴルディアス結晶は人の目線からすればそのための記憶装置のようなものだ。

そしてゴルディアス結晶は、竜宮島だけに存在するものではない。
BEYOND11話時点では、第三アルヴィス「海神島」のコア、正確にはそのミールと北極ミールの欠片が同化して生まれた現「プロメテウス」にも存在している。

竜宮島と同じアーカディアンプロジェクトの一端である海神島、その島のコアは「ワダツミノミコト」と呼ばれ、かつては皆城乙姫と同じように島にいる生命を守る存在であった。
しかし、人類軍の作戦によって島ごとすべてを滅ぼされ、自身はろ獲され、北極ミールの欠片であるベイグランドと同化させられ、更には戦うためのパペットを産み出し続けさせられて、膨大な憎しみを抱えてしまった。そこには悲しみもあったはずだが、それに耐えられなかったか、それとも別の形で憎しみを学んだ北極ミールの欠片との同化の影響か、次第になにをなんのために憎んでいたのかすらも忘れ、ただただ強い憎しみのために何もかもを滅ぼす絶望の存在へと変わってしまった。
それが現在の「マレスペロ」である。
そんなマレスペロをコアとするプロメテウスに存在するゴルディアス結晶に蓄積されている「存在していた者たちの情報」は上記の通り、主に憎しみだ。赤い月と称されるほど、憎しみで膨れ上がり強大な存在となっている。


一度要点を簡単にまとめると、
海神島と竜宮島はもともとアーカディアンプロジェクトによって同じ瀬戸内海ミールを分けあい作られた島である。
今でこそさまざまな要因から激しく敵対しているものの、本来それぞれの島のミールは同一の存在であった。


美羽が弓子たちの記憶との再会を果たしたのも束の間、突然クロッシングが切れ、暗闇に取り残された。そして頭上に強く輝く謎の光が現れる。
頭上の星といえばアルタイルミールを連想するが、アルタイルは今美羽との対話の最中であり、目の前にいる相手だ。ならば頭上にいるのは？現状で頭上にいるミールといえば赤い月、プロメテウスである。
このとき、竜宮ミールと同一の存在であった海神ミール=プロメテウス、そのゴルディアス結晶が、竜宮ミールを通して美羽にクロッシングを試みたものと思われる。
美羽はおそらくこのときにかつての海神島の記憶を見せてもらった。これ以降、美羽は「あの子(マレスペロ)とおはなししなきゃ」「(赤い月が)とっても悲しんでる……」と、マレスペロを気遣う発言が増えている。
マレスペロが生まれ変わる直前、美羽がマレスペロとクロッシングして「皆があなたに感謝していた」と伝えることができたのも、美羽が最高のエスペラントだから、というだけでなく、もともとミール同士が同一の存在だからであり、プロメテウスの悲しい記憶を美羽が共有され、それに共感できたからであろう。

美羽がマレスペロに向けた「あなたは私、私はあなた」は「あなたの悲しい気持ちは私にも分かる」という意味であり、かつて一騎がHEAVEN AND EARTHで操に投げかけることができた気持ちと同じもの。人が人として他者に与えることができる一番優しい気持ち「共感」が素直に現れた言葉だ。

マレスペロの気持ちを理解し共感することのできた美羽が、ゴルディアス結晶の中にいる「かつて海神島に生きていた者たち」の、ワダツミノミコトを想う気持ちを伝えたことで、マレスペロは憎しみをすべて捨て、生まれ変わる気持ちになることができたのだろう。