きみのいる場所なら、どこでも(神玲)自分をあげる。
そんな意味に思えてしまうから、彼女の誕生日にプロポーズをするのは『ない』と思った。
じゃあ、君が欲しいと自分の誕生日にプロポーズするのは『あり』なのか。
想いを込めた指輪は用意してあるのに、自分の理想のタイミングと場所だけが用意できていない。君ならきっと、どんなタイミングでも喜んでくれるとは思うのだけれども。
答えが出ないまま、ちいさなため息がテーブルに落ちた。
手を動かしているうちに答えがみつかるかも知れないと、今日だけで何枚もレースを編み上げた手はそろそろ限界。これでお終いにしようと、とじ針を手にしたときだった。
「亜貴さん、遅くなってすみません!」
アトリエのドアが開いて、うだるような熱気と共に、額に汗を残したままの玲が入ってきた。仕事が終わったあと真っ直ぐに来てくれたんだろう。
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