ベナハクSSクロウは言葉に窮していた。
目の前の相手が苦手というわけではない。寧ろ心から尊敬しているし、飾らないその性格には親しみすら覚える程だ。
それにしても、だ。
こうも真正面から見つめられては流石のクロウでも掛ける言葉が見付からない。
それに加え、左隣から背筋も凍るような無言の圧力。
明らかに、機嫌が悪い。
そんな二人の視線の中、クロウはどうやってこの窮地を脱するか考えていた。
(声を掛けるしか、ねぇか……)
「そ、」
「クロウは」
意を決して掛けようとした「総大将」の言葉は、ハクオロの声によって遮断された。
依然としてハクオロはクロウを真っ直ぐ見据えたままだ。
「な、んですかぃ、総大将?」
あまりの空気の悪さに声が上擦ってしまったが、幸いにもその揚げ足を取る者はこの場には居なかった。
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