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    つけもの

    女体化とかエチ絵の練習置き場

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    つけもの

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    パソコンのデータ整理中に見つけた大学の課題。エッセイを書く課題があって、そのとき書いた文。s評価もらえてうれしかったのと、自分でもお気に入りだから保存用。

    愛すべき能力使いあなたは、なんだか憎めない人間と出会ったことがあるだろうか。私は、そういう存在と高校に入って初めて出会った。ああ、こういう人は特殊能力を使っているのだなと、感心した思い出がある。
    その子の名前を仮にKとしよう。Kと初めて会ったのは、入学して間もないころ、部活での顔合わせだった。Kは先輩に好きなものを聞かれ、周りはアイドル名やバンド名を答えているところ、まさかの「イチゴが好きです!」と満面の笑みで答えていた。いや、小学生か。心の中で思わず突っ込んでしまった。天然なのか、狙っているのか、どっちにしてもあまり関わりたくないタイプの人間だな、とその瞬間は思った。が、なんと彼女と登下校をともにすることになった。部活内で同じ電車を使うのが、Kと私だったのだ。そして、彼女の特殊能力に付き合わされることになってしまったのだ。
    Kの特殊能力、それは、信号に全部捕まることだった。駅から学校までは自転車を使うのだが、一人で10分くらいの道をKと一緒に登校すると、最低でもその倍はかかる。初めの頃こそ、たまたまだと気に留めなかったが、一か月も続けば誰でもたまたまなんて思えなくなるだろう。さらに、問題はKの性格だった。Kは超マイペースだ。田舎だったため、1時間に1本しか電車が来ない。電車を逃すことは、この辺境の地ではあんまりな苦行である。特に遊びたい盛りのJKにとって、死を意味するのだ。だからこそ、部活や学校終わりは、彼女の特殊能力をかんがえ、早く出ようというのだが、いつも彼女は、にへらと笑い、「まだ大丈夫」といった。そして事件が起こった。炎天下の中、いつも通り、全部の信号に捕まりマイペースなKに合わせていた帰りだ。駐輪場に入った瞬間に、電車が来てしまったのだ。しかし、幸いなことに駐輪場からホームまで走れば間に合う距離だ。私たちは全力でダッシュした。そして私が改札を抜け、電車に入ろうとした瞬間、後ろで音がした。「チャージしてください。」無慈悲に改札のアナウンスがそう促す。プシュー。目の前からは、扉の閉まる気の抜けた音。そして私は後方を振り返る。Kはすっきりとした笑顔でこう言った。「チャージしてなかった!」そうして、暑い駅で小一時間雨のように降り注ぐ蝉の声を聞くことになった。
    文句を書き連ねているが、本気でKに怒りを覚えたことはない。大体、「しょうがないな。次は気を付けてね。」で終わってしまう。今度こそ言ってやると思うのに、いつも許してしまうのだ。これこそ最も殊勝なKの特殊能力の一つだ。彼女が怒られているところを、卒業のそのときまで、終ぞ見ることはなかったし、私も怒らなかった。きっと彼女が特殊能力を使い、喜怒哀楽の怒を消しているに違いない。ああなんてずるい、憎めないやつだ。喜怒哀楽の首尾だけをとったような、あっけらかんとした笑顔が素敵な彼女。やっぱりあんたみたいなやつ、あんた意外とは関わりたくないわ。そう思いながら、今日も彼女から送られてくる、ご飯の写真にスタンプを返すのだ。
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