朝焼けを進む 龍と初めて思いが重なった日。七月のとある雨の日だった。
送り梅雨、というやつだったか。その日は関東全域が激しい雨に襲われていて、たまたま自分の車で移動する予定だった英雄は、ふと、龍の顔を思い浮かべた。日頃から不運対策に心を砕いている龍のことだから、傘くらいは持っているだろう。しかし、雨だけならまだしも風が出てきたら? 雷が鳴り始めたら? 電車が止まって帰れなくなったら? およそ成人男性に対する心配の仕方ではないと自覚しつつも、自覚したところで心配しないように振る舞うこともできない。握野英雄は、そういう面倒見の良さを兼ね備えた男だった。
いや、実のところは「面倒見が良いから」だけではなかった。英雄は木村龍という青年に、淡い恋心を抱いていたのだ。
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