守り神から祝福を(アタル) 白い吐息に被さるよう、チラチラと舞う粉雪。この惑星は年中寒いと聞いたが、今日はとりわけ寒さが強い。
仕事終わりにふらりと歩く賑やかな街。立ち並ぶ露店の店員達は、寒さをモノともしない。
住民達が言うには、近くこの星の守り神の生誕祭があるとのこと。ならば今の時期は何処も賑わうだろう。
「お兄さん」
露店を見るように歩いていれば、一人の少女がアタルを呼び止めた。
「お一ついかが?」
差し出されたのは綺麗にラッピングされた一輪の花。それは彼もよく知る花だが、この星の気候では育たない。
「コレは……」
「珍しいでしょ。これね『ひょん』って言うの」
「ひょん?」
しかし思っていた名前とは違い、アタルは困惑する。
「そうよ『咲くはずのない場所に、咲く花のこと』を言うんだって」
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