何かが御幸の後ろを着いてきている。
　密かに吐き出される獣じみた呼吸音と、人ならざるモノの気配。
　先ほどまで出ていた月は厚い雲に隠れ、切れかけた蛍光灯が頼りなく通路を照らす。
　室内練習場を出て自販機に寄り、一階の寮部屋を通り過ぎ、階段を昇っても離れない足音に、御幸は小さく息を吐いた。
　ここが寮ではなくて自分がか弱い女の子だったならば、それはそれは怯えた顔を見せることが出来ただろうし、それなりに相手の畏怖欲が満たされたのかもしれない。いやまあ、これはあいつの性質としてやっているだけで、あいつ自身には特に畏怖欲がないことは知っているけれど。
　それはそれで、どうなのだろう。
　そんなことをつらつらと考えていたら、自室のドアに辿り着いてしまった。このまま気付かないふりで中に入ってしまうことも出来るが、流石の御幸もそこまで人でなしではない。これで今週何度目だ、と思いつつも、だらりと後ろを振り返る。

【えなみず/Я】需要喝牛奶吗？东云绘名最近总能在房间里闻到一股淡淡的奶味。
这个奶味并不是市面上售卖的奶的香味，而是接近于她以前做生活实践体验，给奶牛挤奶时，那股带着腥味的气味。
她在房间里找了很久，起初她以为是晓山瑞希忘记把冰箱里的过期牛奶扔了，在厨房里翻了个底朝天也没看到问题的根源，但相方早就把盒装牛奶都换成了奶粉，根本就不存在这一可能性；后来她在浴室的粉色毛巾上也闻到了这股奶味，她正想着对方是不是把自己的毛巾当成抹布了，结果那人红着脸闯进热气腾腾的浴室里，说着“毛巾需要拿去洗了”后便把毛巾一把夺走；直到在某天夜里，晓山瑞希照常在睡前为两人冲泡一杯温热的牛奶时，东云绘名突然发现了关键点。
她装模作样地嗅了一下牛奶散发的香气，然后借着喝牛奶的动作观察对方毫无破绽的表情，最后舔了舔嘴唇，摆出不经意的样子询问道：“瑞希，奶的味道好像不对吧？”