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    ainagiyu

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    ainagiyu

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    ケルト神話風パロで書こうとしていたダイユウ……

    ガラル地方が存在する今、書く必要性を見出せなくなってしまった(´・ω・`)

    #ダイユウ

    Will of Fate 創星神の遣わす精霊は、世界に詩を届け、数多の恩恵を授けた。
     故に精霊は神と同一視され、人々は精霊を信仰する。
     そうして、この世界は数多の精霊に見守られてきた。
     人々は精霊を慈しみ、愛し、感謝をささげる。
     精霊は、総じて大事にされる存在であり、目に見えない存在だ。
     ――只一人の精霊を除いては。

    「ダイゴ様、本日は法王様に御用でしょうか?」
     朝日が照らす大聖堂の正門の前で、二人の衛兵は銀髪の青年――ダイゴに敬礼をする。
    「ああ、そうだね。法王即位式は親父に頼まれた件のせいで行けなかったから、顔ぐらいは拝んでやろうと思ってさ。」
    「そうでしたか。それでは、お入りくださいませ。」
     目の前で交差していた二本の衛兵の槍が離れ、ダイゴの入城を許す。
    「ありがとう、いつもお疲れ様。」
     ダイゴは軽く手をあげると、大聖堂の中へと入って行った。
    「法王……か。」
     法王となった友人が元気でいるか、ダイゴは少し心配でいた。
     ダイゴの暮らす国では、数多の人々が様々な精霊を信仰する。その中で、法王は数多の精霊信仰をまとめ上げる役目を担っていた。その責任たるや、一言で言い表せるものではない。
     人も、精霊も、様々な在り方で世界に存在する。考え方も、表現の仕方も、実に多彩だ。そうした人たちが互いに衝突しないようにするという仕事は、いかほどの労力を使うものなのか、ダイゴには想像も及ばない。
     しかし、法王になるのは、友人の夢であった。不遇にある少数信仰の精霊も平等に扱わせると志して早十年、友人はその夢を叶えたのである。夢をかなえた友人の顔ぐらいは拝んでやらねば気が済まない。ダイゴは聖堂を歩き、法王を探して歩く。
    「……?」
     聖堂内を歩いて行く中で、ダイゴは視界の端に、ふと白い服が見えたような気がした。それが気になり、思わず振り向く。
    「子ども……?」
     濃い茶色の短い髪をした、子どもらしき後姿が歩いているのが見える。服装からして聖歌隊の一員のような気もしたが、何となく様子がおかしい。ダイゴは見過ごすことができなくて、子供を追いかけることにした。
    「ねえ、君!」
     子どもがビクリと身体を震わせて、こちらを向いた。灰色がかった薄く青い瞳が、ダイゴを見る。その瞳には、どこか生気が感じられなかった。ダイゴは一瞬訝しげに思ったものの、聖歌隊の最年長にあたるであろう年格好である。このくらいの歳になれば、歌うことを辞める子も多い。きっと、この子供もそんな悩みを持っているだろうと思って、ダイゴは努めて優しく話しかけた。
    「大丈夫かい?」
    「……!」
     ダイゴが屈んで視線を合わせると、子どもは驚いた様に目を見開く。
    「あの、僕……」
    「ああ、ボクは怪しい者じゃないよ。デボンの領主の息子なんだ。名前はダイゴ。君の名前は?」
    「ユウキ……」
    「そうか、君はユウキくんっていうんだね。」
     ダイゴがそう言ったのを聞いて、子ども――ユウキはとても驚いたような顔をした。
    「……ユウキくん?」
     ダイゴが尚も話を続けようとした時、聞きなれた声がダイゴを呼んだ。
    「ダイゴ! 来ていたのか!」
     ダイゴは立ち上がって振り向くと、法王になった友人――ミクリに笑いかける。
    「ミクリ! いや、法王様、お元気な様で安心しましたよ!」
    「やめろ、気持ち悪い。お前に敬語を使われるのは薄ら寒いな。」
    「酷くないかい? まあ、即位式に来られなくて、すまなかったね。親父があんな用事を言わなけりゃ……」
    「ところで、その子と何をしていたんだ?」
     突然、ミクリが鋭い顔つきでダイゴに詰め寄る。ダイゴは驚いたものの、助け船が来たと思って笑って話を続ける。
    「ああ、丁度良かった。この子、聖歌隊の子みたいなんだけど、悩んでいるみたいなんだよね。ユウキくんっていうみたいなんだけど……」
    「待て、ダイゴ。何故その子の名前を知っている?」
     ミクリが驚いた表情でダイゴに詰め寄る。ダイゴはいよいよ訳が分からなくなった。
    「何故って……この子から訊いたに決まっているじゃないか。」
    「それは……本当か、ダイゴ。」
     深刻な表情を浮かべるミクリに、ダイゴは尋ねる。
    「本当だよ。さっきからどうしたんだい、ミクリ。この子は普通の子どもじゃないか。」
    「確かに、な……」
     ミクリは溜息を吐いて、笑う。
    「そうだ、丁度良い。ユウキくんの悩みを、聞いてやってくれないか、ダイゴ。」
    「いいけど……法王様の方が良いんじゃないの?」
    「その子は、お前と話したいんだろう……なあ、ユウキくん?」
    「はい、ミクリ様……僕、ダイゴ様と話してみたいです!」
     ユウキがダイゴの服の裾をつかむ。ダイゴは面食らったが、微笑んでいるユウキの顔を見たら、話してみたいという気分になる。
    「じゃあ、話そうか、ユウキくん。」
    「部屋と茶ぐらいは用意してやる。用意ができたら呼んでやるから、ユウキくんのことは、くれぐれも頼むぞ。」
     ミクリは衣装を翻すと、その場を去って行く。残されたダイゴは、ユウキと顔を見合わせた。
    「じゃあ、どこで話そうか、ユウキくん。」
    「中庭に行きましょう、ダイゴ様。」
     二人は手を繋いで中庭へと向かう。他愛のない御喋りだけのつもりだった。それが大事に繋がるなど、この時のダイゴは予想していなかった。
    *   *   *
     中庭に行く道すがら、ユウキは楽しそうにダイゴに話しかける。
    「ダイゴ様は、デボンの領主様のご子息なのですね。大聖堂にいらっしゃるのは初めてですか?」
    「ああ、情けない事に初めてなんだ。ミクリの即位式には出るつもりだったんだけど、親父がボクに用事を言いつけたから、出られなかったんだ。」
    「その、ミクリ様とは、どういった関係なのでしょうか?」
    「ミクリとは幼馴染なんだよ。おふくろの影響もあって、子どもの頃は礼拝堂によく通っていたんだけど、その礼拝堂を祀っていた一族の子どもが、ミクリだったって訳さ。」
    「では、ミクリ様の御友人なんですね。」
    「……あの、さ、ユウキくん。」
    「何でしょう、ダイゴ様。」
     ダイゴは歩みを止めると、ユウキに目線を合わせて跪く。
    「そんなに畏まらなくていいよ。こう、せめて、もっと砕けた感じでいいんだ。」
    「砕けた……?」
     首を傾げるユウキに、ダイゴは笑いかける。
    「あんまり堅苦しいのは嫌いなんだ。もっと、友達に話しかけるような感じで良いんだよ。」
    「ともだち……?」
     不思議そうな顔を浮かべたユウキに、ダイゴは困った表情を浮かべる。
    「えっと……そうだね、もっと言いやすい感じで良いんだ。ボクが話している風に、話せないかい?」
    「そうですか……その、ダイゴさん?」
    「……まあ、それが言いやすいなら、いいや。早く中庭に行こうか。」
     ダイゴは立ち上がって、再びユウキの手を引いた。
     ユウキは始終不思議そうな顔をしている。しばらく何かを考えているようだったが、中庭に着くと配置されている適当な切り石にダイゴと並んで座った。ダイゴは隣に座ったユウキに柔らかく微笑みかける。
    「それで、何だか悩んでいるみたいだったけど、良ければ話してみてくれないかな。」
    「その……」
     ユウキは一瞬目を逸らしてから、再びダイゴを見る。視線がためらう様にさ迷ったが、しばらくしてユウキはおずおずと口を開いた。
    「今度の儀式で、歌わなくてはならないのです。それが僕の役目……なんですけど……」
    「けど?」
    「……歌うのに疲れてしまって。休みたい、と言うか、何と言うか、そんな感じです。」
    「そう……確かに、儀式は大変だろうね。」
    「ええ、まあ……」
     何となく歯切れの悪い物言いを、ダイゴは不思議に思ったものの、ユウキの頭をポンポンとなでた。
    「よく頑張っているんだね。えらいよ。」
     ユウキは呆然としたようにダイゴを見る。
    「ダイゴ様……」
    「……『様』じゃなくて、せめて『さん』付けにしてくれないかな?」
    「えっと、じゃあ、ダイゴさん……」
     はにかみ笑うユウキを見て、ダイゴは温かな気持ちになる。何となく和やかな雰囲気に包まれて笑っていると、使いと思われる一人の神官がダイゴの元へとやってきた。
    「ダイゴ様、御子様、お部屋の準備が整っております。法王様がお待ちですよ。」
    「ああ、ありがとう。じゃあ、行こうか。」
     ダイゴはユウキに手を差し伸べる。ユウキが笑ってダイゴの手を取るのを見て、神官はとても驚いたような表情を浮かべた。
    「み、御子様……?」
    「ん? どうしたんだい?」
    「いえ、何でもございません……部屋まで案内いたします。どうぞ、こちらへ。」
     ダイゴは内心で首を傾げながら、ユウキの手を引いて歩いて行く。部屋の前に着き、神官が会釈して去った後、ダイゴはユウキを連れて部屋の中へと入った。ミクリは窓辺に佇み、入ってきたダイゴとユウキを交互に見遣って、少し微笑んだ。
    「待たせたな。紅茶と菓子があるから、そこのテーブルの前に座るといい。」
    「へえ、まるで王族みたいだ。」
     ダイゴが感心して思った事を呟くと、ミクリは苦笑いを浮かべた。
    「法王は、それだけの責任がある。難儀な役だよ。」
    「本当だね……さあ、ユウキくん、こっちに座りなよ。」
     ダイゴは椅子を引いてユウキに座るように促す。ユウキは一瞬ためらったものの、おずおずと椅子に座り、目の前の菓子をジッと見つめた。
     ダイゴがもう一つの椅子を引いて座ると、ミクリが微笑んで言った。
    「ユウキくんと話すのは、どんな感じだ?」
    「どんな感じって……別に、普通だよ。ねえ、ユウキくん?」
    「は、はい!」
     目の前のティーセットに見惚れていたのか、ユウキはびっくりした様に返事をする。そんなユウキを見て、ミクリは感心したように頷いた。
    「ふむ……ダイゴには、本当にユウキくんの声が聞こえるんだな。」
    「何を言っているんだ、ミクリ?」
     ダイゴが不思議に思って尋ねると、ミクリは真剣な表情で言った。
    「この子は……ユウキくんは、普通の子どもじゃないんだよ、ダイゴ。」
     ミクリはユウキの頭をなでながら、言った。
    「この子は、《戴冠石の精霊》なんだ。」
     告げられた言葉は、ダイゴには到底信じられることではなかった。
    *   *   *
     《戴冠石》――真の王の到来を告げる石と言い伝えられている、伝説の石がある。「運命の石」とも呼ばれ、真の王が現れると歌うと言われている。
    「《戴冠石》……実在しているとはね。」
     ダイゴは未だに信じられないといった表情のままだ。対するミクリは、苦笑いをして溜息を吐く。
    「無理もない。その石が実際に歌ったという記録は、今も出てきていないのだからな。」
     ほう、と溜息を吐き、ダイゴはわくわくした様子でミクリに笑いかける。
    「ねえ、ミクリ、その石なんだけど……」
    「はいはい、見たいんだろう? お前ならそう言うと思っていたよ、この石オタクめ。」
    「……石オタク?」
     ユウキが不思議そうに首を傾げたのに対して、ダイゴは苦笑いを浮かべた。
    「まあ、うん、石が大好きなんだ。」
    「この変わり者は、いい年をして色々な場所へ石を探しに行っているからな。」
    「当たっているけど、それを君が言うのかい?」
     からかい混じりに続けたミクリに、ダイゴは溜息を吐いて笑う。
    「色々な場所……ダイゴさんは、遠くに行った事があるのですか?」
     ユウキが目をキラキラさせて話に食いつく。ダイゴは微笑ましく思って、話を続けた。
    「そうだよ。このホウエンだけじゃなくて、カントー、ジョウト、シンオウ、イッシュ、カロスにも行ったね。地質学調査の一環だったんだけど、場所によって採れる石も違うから、なかなか面白いよ。」
    「そうなんですね……いいなあ、見てみたいです。」
    「ホウエンは小さな生き物の死骸が重なってできたチャートが取れるよ。石器時代にはよく使われた石でね、とても硬いんだ。見てみたいなら、今度連れて行ってあげようか?」
    「いいんですか?」
    「こら、ダイゴにそんな権限はないだろう。」
     盛り上がる二人の会話を落ち着かせるように、ミクリが割って入る。
    「いくら私の友人でも、お前は教会の部外者だ。《戴冠石の精霊》を連れ出せば、重罪に問われる。……せめて、実物を持ち込む程度にしておいてくれ。」
     そこまで厳重に保護されていると思っていなかったダイゴは驚いたものの、ミクリの代替案で話は解決すると思い、ユウキに笑いかけた。
    「分かった、今度持っているコレクションを見せに来るよ。」
    「はい……。」
     何となくしょんぼりしたユウキに、ミクリが肩を優しく叩く。
    「今は何もできないが、何とかしてやるさ。さあダイゴ、《戴冠石》を見に行くのだろう。案内してやる。……ユウキくんも一緒に来なさい。」
    「……わかりました、ミクリ様。」
     ミクリがユウキの手を引いて、椅子から立ち上がらせる。ダイゴは、ユウキがどことなく諦念を含んだ表情を浮かべているような気がした。それに何となく引っ掛かりを覚えたが、何と声をかけたら良いか解らず、そのままミクリの後をついて行くことしかできなかった。
    *   *   *
     《戴冠石》が鎮座する祭壇は様々なステンドグラスからの光を受け、淡くその存在を主張していた。
    「これが、《戴冠石》かい……?」
     祀られている《戴冠石》は小さなもので、手のひらに収まる大きさの水晶のような石だった。しかし、その形は滑らかではなく、何かの衝撃で割れてしまったような形をしている。拍子抜けするダイゴにミクリは苦笑いを浮かべ、説明する。
    「伝承では、真なる王の到来の時に歌い出すと言われている。実際に歌われた記録はないが、はるか昔、創星神アルセウスが降り立ち予言したという伝承が残っている。」
    「それで、この石が伝わってきたというのかい? でも、それじゃあ、何でユウキくんは精霊だと?」
    「ユウキくんが触れると、この石は真の姿を取り戻す。……すまないが、ユウキくん、触れてみてくれないか?」
    「……わかりました、ミクリ様。」
     ユウキはそっと祭壇に近づくと、《戴冠石》に触れる。すると、《戴冠石》は虹色に輝き始める。
    「これは……!」
    「伝承では、アルセウス降臨の際に虹色に輝いていたという。真なる精霊が触れることで、真なる王の選定が行えるとのことだ。ユウキくんは、こう見えて百年程、この教会に居る記録がある。」
    「百年……」
     呆然とするダイゴに、微かな声が聞こえてくる。
    『お前に、託す……』
    「……?」
     どこから聞こえたかも解らない。ダイゴが聞こえてきた声について思案しようとすると、ユウキがおそるおそると言った様子でミクリを見る。
    「……もう、いいですか?」
    「ああ、すまなかった。もう祭壇に戻していい。」
     ユウキは丁寧に、しかし手早く祭壇に石を戻す。虹色に輝いた石は、もうただの透明な石に戻っていた。ユウキはダイゴを見て、小さく声をかける。
    「その、ダイゴさん、あの……」
    「……どうしたんだい、ユウキくん?」
    「ここまでいらっしゃったのですから……僕の歌を、聴いてもらえませんか?」
     ダイゴの元まで歩き、ユウキが控えめに申し出る。そんなユウキに、ミクリが心配する表情を浮かべた。
    「いいのか、ユウキくん。君は……」
    「いいんです。ダイゴさんには聴いて頂きたいのです。駄目ですか、ダイゴさん……」
     段々しょんぼりとしていくユウキに、ダイゴは慌てて声をかけた。
    「聴いてみたいよ。君が、歌ってもいいのなら。」
    「……はい!」
     ユウキは、嬉しそうに笑うと、すぅっと深呼吸して、静かに歌い出した。
     Utinam sis felix in aeternum.
     Ego semper wish it.
     In nomine Dei.
     Je continue à souhaiter.
     I wish forever……
    *   *   *
    「ダイゴさん……僕の声が聞こえる人……」
     とある昏い一室の中で、ユウキは夕陽の空をを眺めていた。そんなユウキを、気遣わしげにミクリは見つめる。
    「大丈夫か、ユウキくん。」
    「ええ。大丈夫です、ミクリ様。」
     ユウキは入口の扉にもたれるミクリを振り向く。ユウキの瞳からは、憂いが感じられた。
    「ダイゴさんは、もうお休みになられてしまったのですか?」
    「いや、調べたいことがあると言っていたから、さっき別れたところだよ。それより、今日は一体どうしたんだ?」
     ミクリの疑問に、ユウキは目を伏せて静かに話す。
    「……わかりません。言葉では、説明できないと思います……ただ、あの人は、良い方ですね。僕のことを、そのままで見て下さいました。」
    「ああ、彼奴は人を見る目がある。昔からあんな感じだったよ。」
    「初対面で僕に手を差し伸べて下さったんです……優しい方なんですね。」
    「そうだな……それで無茶をしたというのですか、御子殿。」
     険しい顔をするミクリに、ユウキは悲しげな表情を浮かべる。
    「止めて下さい、ミクリ様……貴方まで『あの人達』と同じ言い方をされては、とても辛いです。」
    「……君の歌は、祝福の力がある。だが、君の消耗が激しいのも事実だ。」
    「おまじない程度の歌ですよ。あれくらいで倒れたりはしません。」
    「だが……儀式は……」
     力なく俯いたミクリに歩み寄り、ユウキはミクリの目をじっと見上げた。
    「……もう、慣れました。僕は、奉仕しなければ。」
    「ユウキくん……」
     ユウキは、サッと俯いて窓辺に向かう。
    「僕は、もう少し空を眺めます。ミクリ様は、お気遣いなく。やるべきことは、山の様にありますよ。」
    「困ったことがあれば、叫ぶんだ。君はどうも、声を出すことになれないようだからな……。」
    「……。」
     ユウキは何も言わず、空を眺める。そんなユウキを見ながら、ミクリは黙って部屋を出た。
     百年前から、まともな人間が上に立つことがなかったのは、何の因果だろうか。そんなことを思いながら。
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