「お、これは運動会か?この頃から大きいんだな、周りから頭ひとつ抜けてる」
「‥‥‥」
「ん、これは遠足だな。ははは、両手いっぱいに菓子抱えて可愛いな」
「‥‥‥あのさぁ」
一言も返事を返していないのにさして気にした様子もなく、延々とベラベラベラベラ喋り続ける男に紫原は我慢の限界を迎え渋々声をかけた。相手にするのは面倒で、しかしながらこうも延々と話しかけられ続けるのはいい加減うざったい。胸の辺りがつっかえる感覚に大好きなポテトチップス(2袋目)へ伸びる手が止まるくらいで、正直言って迷惑もいいところだった。
だから2つを天秤にかけ、仕方なしに前者を選んだに過ぎない。だというのに目の前であぐらを組む男——木吉鉄平は紫原の声を聞くなりバッと顔を上げ、嬉しそうに目を輝かせた。そしてその大きな手には、足元には大量のアルバムが置かれてあった。
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