異世界トリップしたJK夢主と高杉晋作の紆余曲折SAITAMAに異世界転生(トリップ)しちゃったJKと高杉さんのおはなし
fate世界線ではないところから来た女の子なので、魔術?サーヴァント?なにそれ?って感じ。
もちろんカルデアのことも知らない。ここが昭和…?って困惑してたら、侵入者扱いされてた夢主は捕えられて社長のもとに連れてこられる。
怯える夢主に人好きのする笑みを浮かべた彼がにっこりと笑って自己紹介するわけさ。
「僕は高杉晋作、君は誰かな?」
「た、高杉晋作……!?え、昭和で!?」
「……おっと、僕の事知ってるんだ」
「し、知ってるというか、授業で習ったくらいで……。でもその時江戸時代のはずだし……」
どうやら戸惑いを隠せない様子。本当にただの一般人らしい。
これが演技だとしたら本当に尊敬するよ。なんて今だ挙動不審な少女を見下ろしつつ内心嘲笑う。白魚のような手。何も苦労なんてしたことのないような整えられた髪や服装やそのお高そうな荷物たち。どれひとつとっても彼にとっては物足りず、つまらない不愉快なものだ。
毒にも薬にもならない存在だから捨て置こうと思うけれど、なにかしらの餌くらいにはなってくれるかも、という理由で手元においておくことにする。
鯖だからある程度の現代知識はもちろんあるだろうし、それを活用してて当然なんだけど、JKという思春期真っ只中の彼女の考え方や行動は割りと新鮮に見てるのかもしれない。
絆されることはなさそうだから、何がきっかけで情を抱くんだろうね、彼は。
知る人が誰もいない、頼れる人もいない世界でがんばってもがき苦しんでる少女に手を差し伸べるのは簡単だけれど、そうすると依存されちゃうからねぇ。
「へったくそな笑顔」
従業員たちと一緒に仕事をしている少女を見て、彼はつまらなそうに頬杖をつきながらそう呟く。
「そう思うのでしたら、少しくらい彼女に目をかけてあげればよろしいのに」
「えー。そんなことして惚れられちゃったらどうするのさ」
「ホーリーシット!彼女はそもそももうあなた様には期待しておりませんでしょう!」
その通りだ、と高杉は頷く他ない。すがられる前に突き放し、なにもしてこなかったのだから。
かといって衣食住の面倒は見てるのだからそこまで言われる筋合いはないだろう。
「それはそれで腹が立つなぁ」
どの口が、と阿国は怒りそうになるも高杉の表情を見て口をつぐむ。少し寂しそうにどこか遠くを見るような目に、このお方もこんなお顔をされるのですね……と驚く他なかった。
「仲直りは早いうちがよろしいと言いますし」
「ええ?僕たち喧嘩してたの?」
「それに近いものでしょう」
確かにそうかもねぇ、と思いつつも彼の重い腰は上がらない。はあ、とため息をついた阿国はなんだかんだ人がいいので、社長を助けるべく少女の名前を呼び手招きするのだった。
(追記)
キ神化計画を進めていた高杉からして異物は邪魔だったはず。
普段ならおもしろそう、となるだろうけど、計画の歪みになってしまったら目も当てられない、と最初から割りと辛辣だった。
夢主もそれを感じ取っていたから怯えるし、近づこうとはしなかった。
きっと歩み寄るなら夢主からになるよ。
この高杉さんは頑なだろうからね。
何も知らない、誰も知る人もいない、縁も縁もない土地でたったひとりで懸命に生きようと努力する姿は好ましいと言えなくはないけれど……。みたいな。
魔力もなく非力な存在で役立ちそうもないけど、という気持ちの方が強いかも。
阿国は異世界から来たという少女にかなり同情的。
それに異世界というワードに興味津々だと思う。
女の子同士だしいろいろお話しして、仲良くなってそうだね。女子会しててくれ。
で、たまに夢主から高杉の話を聞くことがある。
「悪い人じゃないことはわかってるんです。だって、こんなにも怪しいじゃないですか」
自分でいうのもなんですけど、と諦めたように笑う夢主に、本当にあの人は不器用ですねえ、と内心ため息をつく。
「まあ……。そんな風にお考えなさらなくても」
「感謝してるんです。こんな私に居場所をくれて、助けてくれたから。……今だって彼の庇護がなければ生きていられないこともちゃんとわかってます」
「夢主様……」
「もちろんきちんとお話ししたいという気持ちもあるんです。でも、彼は私のことが嫌いみたいだから」
眉を下げ仕方がない、といった風に呟く夢主にどうしたものかと阿国は悩んでしまう。
とっても愛らしい異世界からの少女。どうしてあんなにも社長は彼女を遠ざけるのか。……まあ、なんとなく理由はわかりますけれど。幼稚ですわよねぇ。なんて。
こんなにか弱い乙女一人を守り通せずなーにが社長でしょうか。
日頃の鬱憤もあり流石に物申さねば気が済まないと、阿国は立ち上がり力強く語る。
「夢主様、今から社長もとへ参りましょう!」
「えっ!?」
気にしないようにしても頭の片隅にちらつくから、イライラが募るばかり。
やるべきことは山積みなのにそんなくだらないことに割く時間は、高杉には残されていないのだ。
しかしまあ見つけたからには面倒を見なければならないだろう。
それに勤王党へ行かれたら今よりも格段に面倒なことになりそうだからね。
とか考えてる。
歩み寄った二人はきっと夢主のいた時代の話、すなわち未来の話を聞いて楽しくなっていくんだと思う。
ドローンとかロボットとか!
「今までごめんね。ひどい態度だっただろ、僕」
「え!?いえ、それは仕方ないですよ。だって怪しいですもん」
わたわたと慌てたように両手を振る夢主に、高杉が彼女に対してそういう態度をとることは当然だと明確にされたようで腹が立つ。
恨んでくれればどんなに良かったか。どうして君は僕の前で笑ってくれるんだ?
「…………。そういう君だから僕は」
「高杉さん?」
聞き取れなかったのか小首を傾げる夢主の頭をよしよしと撫でる。
「明日暇ならどこかに出掛けよう。遠出したことないだろ」
「い、いいんですか!?」
「ああ。大船に乗ったつもりでいてくれたまえ」
自信ありげに笑う高杉に夢主もようやく微笑みを浮かべた。しばしその笑みに見とれてしまいはっとなるも、やはりそこから視線を外せそうにない。
「ありがとうございます!」
そんな風に幸せそうに笑わないでくれ。自分が惨めになるだろう?なんてこと、おくびにも出せるはずもなく、ただひたすらに忸怩たる思いを抱き続けるのだ。
最初は遠ざけるし、そこからしばらくずっとそばには近寄らせない。
空気を読むのが得意な日本人なのでその気持ちをくんで高杉に近寄らないが、助けてくれた人に変わりはないのでずっとずっと感謝の気持ちを抱いていたし、恩返しをしないとと考えている健気な夢主。
橋渡しは阿国さんで、積極的に近づいていくのは夢主。
高杉は自分がひどい態度をとっていたことをきちんと自覚しているので、歩み寄る夢主を警戒するし、なんで?と不思議に思う。
べつに媚を売らなくたって、衣食住を困らせるつもりなんてないのに。
それをぽつりと阿国に呟けばめっちゃくちゃ怒られてしまった。
夢主の気持ちを蔑ろにするな!!みたいな感じで。
そこから高杉も気持ちを入れ替えて夢主に接するけど、純粋に高杉に感謝を伝えて助けてくれた恩人と敬ってくれている様子に、自分はどれだけ子供じみたことを、と少しだけ落ち込んでしまった。
夢主には恋愛感情はないし高杉もそんなつもりなかったけど、いつだってにこにこと慕ってくれ裏表もない純粋な少女に、いつのまにかのめり込んでしまう。
次は僕が追いかける番だよな、と少しずつ男を出していく高杉に戸惑い逃げ出そうとする。
どこで間違った?と冷静に考える高杉と、阿国にどうして?どうして?と混乱した様子で相談する夢主。
恋のキューピットになるしかありませんねえ!と一肌脱ぐ阿国さん。
紆余曲折あり付き合うことになって、一歩ずつ少女から大人に花開く様子を間近で見て、ますます夢主に溺れる高杉。
最初であった頃からだいぶ印象が変わってしまった高杉に困惑することも多いけれど、大切にしてくれる彼のそばにいられて嬉しいなあ、と夢主は高杉の隣で幸せそうに微笑むのだ。