アズール︎︎ ♀ちゃんは努力家「アズール、こちらの書類はどちらに保管しますか?」
ジェイドが甲斐甲斐しくアズールの世話をやいている。
「では、そちらの机の一番上の引き出しにお願いします」
アズールはベットから指示を出す。
「アズール、野菜スープと粥ってのを作ってみた。食べれる?」
フロイドは小さな器に盛り付けた質素な食事を提供する。
「ありがとうございます。食べれると思います」
アズールは答えた。
そう。アズールは風邪を引いたのだ。もう熱は引いたものの、心配性なウツボ達によって今日もベットの住人となっている。
ジェイドとフロイドとお付き合いを始めて約半年。アズールが初めて病気をしたのである。
普段はなかなかアズールの部屋である寮長室に2人を入れないのだが、今回は看病をすると言い出し、かなり説得されたので了承して入室許可を出している。
いつもならベットで食事などしないが、病人と言う事で、フロイドが作ってくれたじっくり野菜を煮込んだスープと粥と言うどちらも病人食だと言われるモノを口にする。どちらも少量だったので、あっという間に食べ切ることが出来た。
どちらも熱々の食べ物なので、食べ終わるとじんわりと汗をかく。
そんなアズールを見てジェイドが
「お風呂に入りますか?」
と聞いてきたので、
「そうですね。昨日は熱で入れなかったので入りたいです」
アズールは何も考えずに答えた。
「では準備をして参ります」
ジェイドはバスルームへと消えていった。
「オレは食器洗ってくる〜」
フロイドはキッチンへと消えていった。
至れり尽くせりで有り難いなとアズールは布団に潜り込む。
少しウトウトすると、
「アズール、そのまま寝ますか? それとも汗を流しますか?」
とジェイドに聞かれた。
「……お風呂に入りたい……」
アズールは寝ぼけながら言うと
「ではバスタオルと着替えの用意をして参ります」
とジェイドが言った。
フロイドが
「アズール起きれる?」
とゆっくりと支えて起こしてくれる。先程ジェイドは着替えの用意をしてくれると言わなかったか?とアズールは頭の中で考えてから、ハッと気付いた。
「あぁ! ジェイドダメです! クローゼットの引き出しを開けてはいけません!」
アズールは大慌ててジェイドを止める。
ジェイドは何故かバスタオルの入ってる引き出しをちゃんと理解していて、バスタオルを手にし、今から着替えを準備しようとしていた。
「何故です? 着替えを出すだけですよ?」
ジェイドは不思議そうに首を傾げる。
「しっ、下着を見られたくありません。自分で用意します。バスタオルを出して貰っただけで十分です。ありがとうございます」
そう言ってアズールがベットから出ようとすると、フロイドがガッチリと阻止した。
「なんかアズールおかしい。何か隠してねぇ?」
フロイドがアズールを覗き込む。
「何も隠していません。兎に角、僕はお風呂に入るのでお前たちは一旦出で行って下さい」
アズールはスッパリと言い切る。
双子はお互いを見て納得のいかない様な顔をしていたが、渋々
「お風呂から上がったら、またお呼び下さいね」
「待ってるね」
と口々に言うと出て行った。
それからアズールはダッシュで下着の入った引き出しを大きく開けて、いちばん奥まで手を突っ込む。
「ない! なんで?」
アズールは叫ぶ。下着がぐちゃぐちゃになるのも気にせず、引き出しの中をかき回す。
そう。アズールは見られたくないものを下着入れの引き出しに隠していたのだ。
「お探し物はこれですか?」
ジェイドがフロイドの持っているモノを丁寧に5本の指を綺麗に揃えて指さす。
フロイドはニッコリと微笑みながら、指点されたモノをゆるゆると振り回す。
「あ!」
アズールはプルプルと震えながら、ジェイドとフロイドを睨みつける。
「どうやって入ってきたんです? それに何でお前達がソレを持ってるんです?」
アズールは恥ずかしさのあまり、顔から火が出そうな勢いだった。
「部屋には合鍵で入りました。副寮長として、何かあった時の為にと渡して頂いていたので、役に立って良かったです」
ジェイドは満面の笑みで答えた。
「これはぁ、昨日たまたまオレが見つけちゃったぁ」
フロイドは大人の玩具をブンブンと振り回す。
アズールが隠していたモノは大人の玩具である。
「フロイド、返しなさい!」
アズールは勢いよくフロイドに突進して、取り返そうと必死であるが如何せん身長差があるので、フロイドが手を上にあげ頭上高くに大人の玩具を掲げると、アズールは取り返せない。
「フロイド! 返して下さい」
アズールは懇願する。
「ではアズール、何故こんなモノを貴女がお持ちなのか、理由をお聞かせ願えませんか?」
ジェイドがフロイドの持っている大人の玩具を受け取る。
男性器を模したグロテスクなディルドだ。唯一の救いは比較的サイズが小さいことかもしれない。
ジェイドとフロイドの視線がアズールに突き刺す。
「場合によっちゃあ、マジで修羅場かも〜」
とフロイドは物騒な事を言い出す。
「なんです? 僕がアダルトトイを持っていたらダメなのか?」
「所持しているだけなら構いません。ただ使用したのかが気になります」
ジェイドは言う。
「……まだ、使えてません。その前に見つかってしまったので」
アズールはごにょごにょと呟く。
「なんでこんなモン使おうと思ったの?」
フロイドは優しく聞いてくる。
「その……初めては痛いと聞いたので、自主訓練していって慣らしていこうかと思ったんです。2人に迷惑をかけたくないから」
アズールの話を聞くとジェイドは、優しくアズールを抱きしめた。
「迷惑なんてありません。それよりも僕達にご相談下さったら良かったのに」
ジェイドは心底ホッとしている。
「マジで良かった〜。ジェイドこれ見つけた時、マジでやばかったからね? 大型客船、沈没させる勢いだったからね? ほんとアズールはオレたちの斜め上を行くからおもしれーけど、今回のは笑えねぇ〜」
フロイドがアズールとジェイドごと抱きしめる。
「ん? 何故船を沈没させるんです? それに僕は面白さを求めてやっているんじゃないんですよ。僕は真剣です!」
アズールはジェイドとフロイドに抱きしめられながら、無益な殺生は止めなさいと言い含める。
「ほら、理由を言いましたから返して下さい」
アズールが手を差し出すと
「こちらは僕が責任を持って処分しておきますね。例え無機物でもアズールのナカに入るだなんて許せません」
とジェイドが言った。
「そんな事……そしたら練習出来ないじゃないか」
アズールは反論する。
「何故僕達と一緒ではいけないのですか? アズールお一人で練習しなくても良いのでは?」
「そうそう。3人でえっちするんでしょ。それなら3人で練習しようよ」
ジェイドとフロイドが諭す。
「……お前たちと、その、えっ…ちする時は完璧な僕でいたかったんです」
アズールは恥ずかしそうに言う。
「完璧じゃないとダメなんて事はありません。僕達と一緒に練習しませんか?」
「そうそう。どんなアズールでもオレたちは受け止める自信あるよ。それにオレたちだって初めてて、どうしたら良いか分かんないし一緒に学んでいこうよ」
ジェイドとフロイドがアズールに向かって手を差しのべる。
アズールはその2人の手を握り返すと
「分かりました。3人で練習しましょう!」
アズールが言うと、ジェイドは早速魔法で大人の玩具を抹消した。
そしてえっちを3人で学んでいくのだが、やはり努力の君アズールは、ぐんぐんと性の勉強をして実技も伴い、ジェイドとフロイドが翻弄されることになる。
性に関してもアズールは優秀だった。大人の玩具など必要なかったのである。
【END】