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    kano5969

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    kano5969

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    よくわからん司レオ

    No TITLE昼を少し過ぎた午後。
    カーテンの開いた大きな窓から差し込む日が絨毯の上で寝そべっているレオの髪をより暖かい色に照らしていた。癖の付いた跳ね回る髪も柔らかそうに溶けて見える。思わず手を伸ばしたくなったが、生憎と司の両手は塞がっている。
    鼻歌混じりにうつ伏せたまま作曲に勤しむレオの背中に溜息を吐いて、司はその背中の上に両腕に抱えていた乾いたばかりの洗濯物をドサドサと降らせると、驚いたレオから間の抜けた声が上がった。
    「ふぎゃっ?!なんだなんだ敵襲か?いつから此処は戦場になったんだ?」
    「何を寝惚けた事を言ってるんですか……お休みだからと言ってゴロゴロしていないで畳むのを手伝ってください」
    「おまえはお母さんか?それともセナか?大穴でケイト?」
    「貴方と居たら誰でもこうなります……」
    司は洗濯物を背負ったまま動こうとしないレオの隣に両膝を着いて座り込み、シャツを一枚拾ってその膝の上で畳み始めた。
    司とレオが寝食を共にするようになってから、当然家事は各々がする事になったが、放って置くとレオの部屋は散らかり放題、洗濯物もギリギリまで溜めてしまう。そんなレオを動かすのは中々に骨が折れる。だからといって全てを代わりに行ってしまえばレオは堕落する一方。自分は母親でも嫁でもない。そもそもレオとてそれを望んではいないだろう、と司はもう一度溜息を吐いてレオの温まった頬を突いた。
    「レオさん、今日は何の日でしょう?」
    「んん?1月1日だから元日だろ?数少ないお正月休み!」
    「はい、ですので初詣に行きませんか?」
    「…………行く!」
    頬を突く指は柔らかく穏やかでどちらかというと指先で撫でられている心地良さにレオは目を細めたが、デートの申し出を受けるとガバリと身を起こした。そのせいで、その背中から洗濯物の山は崩れ落ちた。
    「では、手伝って頂けますね?」
    「うんっ!ちゃっちゃと終わらせよう!」
    「……そんなに初詣に行きたかったのですか?それでしたら言ってくだされば良かったのに」
    その場に胡座を搔いて座り直しレオも洗濯物を手に取ると早速と畳み始める。嬉しそうに笑みを浮かべるレオの様子に、予想以上に上手く行った誘導が逆に疑問となって司は首を傾がせた。
    「端と〜端を合わせて〜♪ん〜……うん」
    微妙な間を置いて頷いたレオに不思議に思いながら、真面目に取り組む姿にまぁ良いかと流す。レオの『洗濯物を畳む唄』をBGMに黙々と片付けているとふとレオの手が止まったことに気付き司は視線をレオへと向けた。レオは何故か司の下着を両手で広げマジマジと眺めていて、司は思わず噴き出す。
    「ちょっ……何見てるんですか!?」
    「いや、スオ〜ってこんなパンツ穿いてるんだなって」
    「何ですかそれは……初めて見るわけでもないでしょうに」
    「そうだけど、スオ〜のパンツ全部把握してるわけじゃないし!」
    「把握されたくないのですが?……レオさんだっていつの間にこんな変な下着を買ったんです?」
    レオから自身の下着を奪い取り、司も手近にあったレオの下着を広げて掲げて見せると、レオはケラケラと指差して笑いながら同意する様に頷いた。
    「スイカ柄!どっかの国で買ったんだよな〜どこだったかな?黄色いスイカバージョンもあったからスオ〜にもお土産で買おうと思ったんだけど絶対穿いてくれなそうだしヤメた!」
    「止めて正解です……スイカ柄って……ふふ」
    止めていた手を再度動かし始め、時折互いの衣服に突っ込みを入れながら漸く全てを畳み終えると、レオはふぅと息を付き正座をしていた司の膝の上にゴロリと転がって頭を乗せた。
    「あ、何故横になるんですか!初詣は……?」
    「ちょっと休憩〜!洗い立ての洗濯物とお日様の匂いとスオ〜の固い膝!なんか霊感湧いてきたかも?スオ〜紙とペンをくれ〜」
    「忙しないですね、もう……レオさんが邪魔で動けません!」
    「うー……んん〜……っ」
    駄々を捏ねる子供のように司の膝で頭を左右に振って唸り声を上げたレオだが、やがて大人しく司の腹部に額を埋めるようにして抱き着いた。
    「何がしたいんですか……日が暮れてしまいますよ?」
    司は咎める言葉とは裏腹に優しい声音と手付きでレオの髪を撫でる。先程は触れられなかったその髪に触れるとやはり暖かくて柔らかい感触に口元が緩む。
    「何がしたい……んー……なんだろう……イチャイチャしたい」
    「は……い……え?」
    「年末忙しかっただろ?スキンシップが足りない気がする」
    思いがけない言葉に司は目を丸くした。元よりレオはスキンシップが多い方ではあるが、わざわざ言葉になどするタイプではない。司の気持ちなど関係なしに気の向くままに勝手に絡んでくるからだ。言葉にされると中々に気恥ずかしさを感じる。
    「えぇと……では、その……どうすれば?」
    「スオ〜はどうしたい?」
    「そう言われましても……」
    こうして触れ合う事も随分と自然に出来るようになったとはいえ、いざ改まると途端にどうしたら良いか分からなくなる。
    (Kissが欲しいのでしょうか……それとも
    もっと……いえ、私がどうしたいかと問われていますし……)
    沸々と司の頬に熱が溜まっていく。久方振りに恋人と二人きりで過ごしているのだ。求められて、健全な男子の欲を刺激されない方がオカシイというもの。
    ゆるりと伸びてきたレオの手が満足気にそんな司の頬を撫で包むとレオは悪戯な笑みを浮かべていた。

    「スオ〜のえっち!」
    「何でですか?!」
    「そういう顔してる」
    「貴方がそういう……誘うような事を言うからで!」
    「別に悪いとは言ってないだろ〜?同じ気持ちだって思ったら嬉しいじゃん」
    「つまり、レオさんはその……シたい、と?」
    「スオ〜がシたい事がシたい」
    「狡いです!」

    レオは無邪気に笑ったかと思えば、薄い腹筋に力を込めて起き上がり、ついでとばかりに司の唇を掠めた。頬はまだレオの手に包まれたまま唇に柔い感触と濡れた音。司の瞬きも追い付かない程素早く離れたソレは至近距離で弧を描いた。

    「初詣行く?」

    試すような視線が腹立たしい。司はじとりとした目をレオに向けてから挑戦を受け取ってレオの顎先を掴むと奪う様にレオの唇を塞いだ。
    猫が戯れるようなレオのキスとは違い意地の悪い舌も咎めて、呼吸も思考も支配するように深く長く、いつまでも離れない。咥内に溜まっていく唾液を飲み込みたくても司の舌先に邪魔されて上手く下せず口端から伝い落ちていった。まるでお仕置きをされてるみたいだとレオの手が司の頬をペチペチと叩き降参を認めると漸く解放されて盛大に空気を求める声が漏れた。苦しそうに、けれど色の点ったレオを勝ち誇った顔で見つめる司は先程のレオを真似て笑みを作った。

    「初詣に行きましょうか?」

    口元を乱暴に拭ったレオは少し膨れて見せたが直ぐに愉しそうに笑いだしそのまま凭れるように司に抱き着いて首を振った。

    「負けず嫌いめ」
    「どっちがですか」
    「スオ〜……シよ」
    「おや、何をでしょう?」
    「スオ〜がシたいこと」
    「負けず嫌いですね……」
    「どっちがだよ」

    レオは司の肩口に顎を乗せて耳元にふっと息を吹き掛ける。ふるりと擽ったさに震えた司の耳に小さなお強請りの声が届くと、レオより司の方が少し照れていて、けれど満足そうに綻んでレオの腰元から背を這ってレオの後頭部をポンポンとあやした。

    昼を過ぎたばかりの午後。穏やかな日差しはカーテンで遮る。切り離された空間の内と外で緩やかに橙と紅が溶けていき、月が昇るとしっとりとした星が降りていた。


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