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    Sam

    洋ゲーと洋画沼の住人です。

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    pixivに置いていたアサクリオデッセイのアレクシオス×タレタスです。イベントムービー後の話。

    #アサクリオデッセイ
    assassinsCreedOdyssey
    #アレクシオス
    alexios
    #タレタス
    lettuce
    #アレタレ

     其処に突っ立った儘か、それともこれからが本番か――。心を奪うつもりなら力量を見極めたいと挑んで来た相手をまさに完膚無き迄に打ちのめした直後だった。皮肉の混在した誘い文句にアレクシオスは目蓋を僅かに持ち上げ面食らった表情を見せたが、それも一瞬の事。相手の放った言葉の意図を理解出来ぬ程、アレクシオスは愚か者でも、ましてや色恋沙汰の駆引きに疎い訳では無かった。
     地面に座り込む彼に手を差し出す。その差し伸べた手は武人の其れらしく、甲には無数の傷痕と指先は柄の握りで独特の歪みが生じている。タレタスは片側の口角を上げながら素直に応じ、その武骨な手の感触の悪さを堪能する風にも思える緩慢な動作で立ち上がった。

     薄い唇に付着する砂埃の味は、深く舌を咥内へ忍ばせる行為で鉄錆の独特さも入り交じった。
     この男との口吸いは、この地へ上陸してからこれが二度目の経験であった、と抱き寄せた腰に腕を回しながらアレクシオスは思い返す。両者共に一平卒では無い、であるからこそ戦場では命を最大限に預ける武具の重厚さが互いの身体の距離感を煽る。汲み上げる焦燥感。これ迄も愛を囁いた幾人もの相手へとして来た同様の手慣れた所作で、堪らず衣類を剥ぎ取って行く。下着に指をかけた時、それ迄主導権を放棄して押し黙っていたタレタスがようやく声を出した。
    「…………なんて目をしているんだ、お前は」
     微苦笑に似た笑いを含みつつ落とした息は艶やかな吐息にも、その一方で色気とは程遠い溜め息にも聞こえる。「なんて」目とは果たして己がどんな目をしているのか問い質すも、相手は目尻を僅かに弛めるだけに留まった。だがその双眸には出逢った頃には感じ取る事の無かった温かさ以上の感情が煌々と宿っている事をアレクシオスは理解した。
    「心を奪いたいなら全力で来いと言ったな。それでどうなんだ、俺は勝っただろう」
     そう。理解はしたが相手の口から直接答えを聞きたくて堪らなくなるのはアレクシオスの良くも悪くも一つの性質だった。善悪無く詰め寄る口調にタレタスからは瞬き一度分の逡巡が窺え知れた。だが彼もまた元来実直で気骨のある男であるが故、とうに惚れた相手から一心に向けられた其れに応えぬ選択肢は用意されていない。
     タレタスは今の感情に当て嵌まる言葉を脳裏から探し得ようと暫し伏し目がちになる。戦の話題では歯切れ良く軽快に、だがそれが恋や愛の話題となれば如何に相手を傷付けぬ様に己もまた傷付かぬ様に思案しながら話す男だった。アレクシオスは常日頃の毅然とした態度とは裏腹な、その稀に見せる思慮深い姿にも好感を抱いていた。
    (あんたに可愛らしい一面がある事に気付いているのは、俺を含めて極僅かだろう)
     今日此処の場に招かれた時もそうだ、島一帯に咲き乱れる花が美しいからと道標に誘う繊細な発想をする人間は果たして如何ばかりか。
    (…………可愛い、か)
     力量を見せる為に戦った時、無意識下で容貌を可愛いと何度も褒め称えていた。タレタスは挑発から来る揶揄と受け取ったのだろうが、あれはそう言った下卑た類いのつもりでは無かった。本当に意図せずして漏れてしまった胸中に抱える想いである。
     これ迄も一夜を共に過ごす相手なら幾人も居たが、何れの相手に対しても欲望を解消する手段としての関係性としか考えてはいなかったし今回もそうなるであろうと踏んでいた。だがそれは今や酷い思い違いであると断言出来る。
     不意に視線が交錯した。伝えるべき台詞が見付かったのであろう決意の面差し。炎々と燃ゆる熱情の籠った瞳に半ば見惚れながら、アレクシオスは相手の紡ぐ言葉を待った。






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