市役所の男 にぎやかになってきた周囲にはっと気づかされて、タイムカードを押しに戻った。8時45分。いまだに紙に印字される勤務開始時刻は僕の正確な労働時間をかき消す。
あらかた片付けた積み残しの仕事をもう一度確認する。メールに添付するもの、裏紙でプリントアウトするもの、新品の紙で刷っていいもの。ひとつひとつが僕の査定に、さっき始まったばかりの労働時間の時給にかかわってくる。念のため作業ごとにフォルダ分けをして、まずはメーラーを立ち上げる。
〈【ご確認】来週13日の会議資料につきまして(品川)〉
さして重要とも思えない資料をパワーポイントとワード、両方添付して上司に送る。上司は僕と同じ年に学部卒でこの市役所に入ってきた男だ。当然年は僕より下になる。
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