その線の先「ミスラの生命線長いですね」
包み込んだミスラの掌を見て晶は呟いた。
「何か線なんてありました」と興味なさ気な返事が晶の耳元に届く。
今日は後ろから抱きしめられる体勢でベッドに横になっているため晶からミスラの表情は見えない。それでも一緒に過ごすうちに声色で会話をする気があるのかないのかくらいはわかるようになっていた。そして今回は前者だ。
「俺たちの世界で手相占いっていうのがあって、この長さなんですけど」
そっとミスラの掌の線をなぞるが、途中でギュッと指を握りしめられ動きを止められる。「占いなんて双子みたいなことやめて下さいよ」と少し不機嫌さが交じる声に変わった。
「そんなもので俺の死期がわかるはずないでしょう」
「そもそも死にませんし」と言うと興味を無くしたようにパッと晶の指を解放した。
人間に比べ長い長い時を生きる魔法使いに生命線の長さなんてあったものじゃないだろう。ミスラの言葉に、それもそうだなと思い晶は苦笑する。
すると気を抜いていた晶の手首が握られグッと持ち上げられる。
「どれでしたっけ、これ? なんだ賢者様も長いじゃないですか」
「よくわかりませんけど」と付け足し手首を握ったまま今度はミスラが晶の掌の線を長い親指でなぞる。
「これだと俺と同じくらい生きるってことですか」
まぁ俺の方が生きますけど、とミスラらしい一言に晶の口元が綻ぶ。
そして今度こそこの話は終わりなのだろう、晶の腕を掴んでいた手が緩まり催促するようにミスラは指を絡める。
「同じくらいは難しくても、少しでも一緒にいられるように頑張りますね」
呟かれた声はミスラには届かないくらい小さいものだった。代わりに晶はミスラの手をいつもより少し力を込めて包み込んだ。