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    干し②

    ※NSFR 成人向け内容を含みます。
    ※RPS

    SG/サンギフ
    客ザゲ/ユンピョン
    D.P./ジュノヨルジュノ
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    干し②

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    客ザゲSS。ギルヨン、ユン、ファピョンがコ刑事の家族に誘われて海辺でバーベキューする話です。2022年10月〜オンイベで豆折本にして頒布していました。お手にとってくださった方、どうもありがとうございました。

    ##ザゲ

    渚のきょうだい(再録)「海、ですか」
     ギルヨンは調書を打ち込む手を止めて、先輩でありバディのコ刑事を見つめ返した。差し入れの缶コーヒーは結露ですっかり濡れていた。外回りから帰ってきたコ刑事は滴る汗を拭いながら続ける。
    「うちの車にはワイフと娘を載せて、着替えを積んだらパンパンだ。
    パラソルやらバーベキューの道具は載せきれない。お前の車を出してくれ。知り合いを連れてきてもいいぞ。休みとっとけよ」
    「…わかりました。ふたり、連れてきます」
    ***
     網の上で肉と野菜がシュウシュウと白い煙をあげている。
    「人の奢りで食う飯が一番うまいな」
     ファピョンが牛肉を飲み込んでからしみじみとこぼした。
    「食べた分ちゃんと働けよ。片付けは任せたからな」
     コ刑事が釘を刺すと笑いが起こった。コ家族はよく笑う人たちで、人付き合いが苦手なギルヨンを気にかけてくれる。ファピョンはヘラヘラと笑い、わかってますよ、と返しつつ、新しい肉に箸を伸ばす。
    「ファピョンさん。それまだ焼けてないですよ」
     ユンが眉根をひそめるのを見て、愉快な気分になったギルヨンもふっと笑みをこぼした。
     ファピョンがコの娘のイェインを波際に連れ出した。寄せて帰る波を追いかけては逃げて遊んでいると、ユンが片手に小さな麦わら帽子を持ってやってきた。ユンは少女の前に跪いて、汗で湿る額から前髪を掻き分け帽子を被せる。
    「ありがとう!」
    「どういたしまして」
    「おじちゃんからもプレゼント、はい」
     ファピョンもユンの隣にしゃがみ込むと、小さな手のひらの上に桜色の貝殻をのせてやった。
    「わぁ!きれい」
     貝に注がれていた少女の視線が、ふと、ファピョンの右目を覆う眼帯に移った。
    「おじちゃん、おめめ、どうしたの?」
    「んー?これは…」
    「悪いやつに刺されたんです」
     ファピョンが言い淀む間に、ユンが勝手に答える。
    「刺されたの?どうして逃げなかったの?パパは怖い人に会ったら逃げなさいっていってたよ」 
    「他の人たちが痛い思いするのが嫌だったから、おじちゃんたちとギルヨン姉さんとで戦ったんだよ」
     ファピョンが答えると、隣でユンもゆっくりと頷いた。
    「おじちゃんたち、頑張ったんだねぇ」
     小さな手がファピョンとユンの頭を撫でる。
    「おーい。お前ら!年長者にばっかり働かせやがって!交代しろ!」
     グリルの前で汗だくになったコ刑事が、トングを振りながら声を張り上げてファピョンとユンを叱りつけた。ファピョンは肩をすくめて、苦笑した。
    「よし、じゃあパパのところに戻ろうか、競争しよう」
    ***
     ギルヨンは戻ってきたイェインの汗を拭ってやりながら尋ねた。
    「喉渇いたでしょ?梨ジュース、好き?」
    「好き!」
     ジュースの缶を小さな手に握らせる。少女は涼を楽しむように缶を赤い頬に当ててから、んしょ、と声を出してプルタブを起こした。
    「お姉ちゃんはどうして警察のお仕事したいと思ったの?ママは、女の子は危ないことしちゃいけないって言うよ」
    「うーん。理由はたくさんあるかな。うちのお母さんが、すっごく、かっこいい警察官だったんだ。それに、悪いことをした奴らが罰も受けずに暮らしているのが許せなかったから、自分の手で捕まえたかった。あとはね、大事な人を守りれるようになりたかった。そういう気持ちに男女の違いはないでしょう?」
    「おじちゃんたちはお姉ちゃんの大事な人?」
    「うん、そうだね、きょうだいみたいに思ってるかな。ちゃんとご飯食べてるか。夜眠れてるか。悲しい思いしてないか。気になってしまうの。もう、みんな大人なのにね」
    「きょうだい!わたしもね、お姉ちゃんになるんだよ。まだ妹か弟かわからないけど、ママのお腹の中で、生まれてくるための準備をしてるんだって」
    「会えるのが楽しみ?」
    「うん!毎日話しかけてるの。はやく一緒に遊びたいなぁ」
    ***
     食事の片付けが終わってしばらく経ち、家族はパラソルの下で昼寝を始めた。来年の夏も、ふたりを連れてこよう。ギルヨンは波際で水を掛け合っているファピョンとユンを眺めながらぼんやりと考えていた。いくら明るい思い出を重ねようが、辛く苦しい夜の海での記憶は消えることがないかもしれない。ただ、眩しい日差しの下で子どものように笑うふたりを、次の夏も見たいと思った。

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