酔生夢死 月は眉のように細く無数の星が瞬いている夜だった。
雲夢江氏の若い門弟は、戌の刻が終わろうとしているときある高貴な絵師が滞在している金麟台の部屋へやってきた。
大きく燃え上がるろうそくの明かりに少女の満面の笑顔を浮かびあがる。
「白木蓮殿、これがこたびの姿絵の報酬にございます」
江澄の弟子である白蓮蓮が、腰ひもから卓の上にぱんぱんに膨らんだ小さな革袋を恭しくおくなり、じゃらじゃらと特定の貨幣がこすれあう音がおびただしく聞こえた。
その音からおそらくは庶民であれば数か月余裕をもって暮らせるほどの金子が入っていることに藍曦臣は気付いて目を丸くした。たった二枚の姿絵にこんな大金をなぜ。
「こんなにかい?」
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