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    みえろ

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    みえろ

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    伯仲習作1

    自分が伯仲について考えるために書いた作品です。


    Res。/レゾ タグについてはこちら(ttps://dic.pixiv.net/a/ReS%E3%80%82)参照。

    https://marshmallow-qa.com/segmenterin?utm_medium=url_text&utm_source=promotion
    誤字脱字等ありましたらご連絡いただけると幸いです。

    #刀剣乱舞
    swordDance
    #二次創作
    secondaryCreation
    #山姥切長義(刀剣乱舞)
    yamamuCutNagi
    #山姥切国広(刀剣乱舞)
    #ReS。

     視線が痛い。
     そう感じながら出陣するのは何度目になるだろうかと、山姥切国広は自問する。わからない。数えるのはもうやめたのだった。
     わかるのは、これがいつから始まったのかということだ。
     始まりは、一振の刀の顕現だった。国広の本科――山姥切長義。
     この本丸では、新しく顕現した刀がある程度暮らしに慣れた頃、しばらく近侍に就くことになっている。近侍の仕事の中には、出陣部隊の見送りも含まれる。
     今日も、隊長である国広を、射るように見ている目があった。
    「……行くぞ」
     国広は部隊に向かって呼びかけた。号令に呼応して、部隊は移動を始める。
    「まったく、……なんて、俺の仕事じゃ――」
     視線に背を向け、逃げるような気持ちで出陣する。
     いつまでこれが続くのだろうか。それはわからない。
     わかるのは、痛みには慣れるということだ。



     戦闘を終え、本丸に帰還する。
     出迎えの中に近侍はいなかった。何か他に仕事があったのか、国広が主への報告を済ませるあいだも、姿は見えなかった。内心でほっとしながら審神者の前を辞す。
     ところが、己の部屋まであと数歩というところで、鉢合わせになった。
    「やあ」
     長義は国広の行く手を遮るように、廊下の真ん中に立っている。無視するわけにもいかず、国広は顔を上げた。
     長義が、軽く片手を上げながら言った。
    「おかえり、偽物くん」
     相手の口元に浮かぶのは友好的な笑み。その口から発せられるのは、笑みに似つかわしくない言葉。
     何度も聞いた言葉だ。
     長義がここに顕現してから、何度も、何度も、繰り返し。
    「写しは――」
    「偽物くんは、いつまで偽物くんでいるつもりなのかな」
    「写しは、偽物とは違う」
     うつむき、フードを引き下ろして答えた。
     これもそうだ。何度も繰り返した返事。繰り返したやりとり。意味のないやりとりだ。いつだって、相手はこちらの話など聞いてはいないのだから。
     そう思っていたのに、今日は違った。
    「ああ、その通りだ」
     国広の言葉を、長義は鷹揚に肯定した。国広はつかのま息が止まるほど驚いた。
     思わず顔を上げる。その瞬間に長義と目が合った。こちらを真正面から射貫く瞳。出陣の度に国広のことを刺していた瞳だ。
     国広は再び顔を伏せた。長義が同意するのであれば、これ以上の会話は必要ない。相手が退いて、道を空けてくれるのを国広は待った。
     だがいつまで待っても、長義が動く様子はない。
     長義が、すう、と息を吸う。何かを言おうとしているのだと気がついた。
     気がついたところで、どうというわけではないのだが。
    「お前は、お前の本歌であるこの俺が」
     相手はそこで一度言葉を切った。今度は一体何を言い出すのだろう。そう思いながら黙って待つ。
    「写しと、贋作の違いもわからないと思っているのかな」
     長義は問うた。穏やかに、けれど明瞭に。そんなことを言われるのは初めてだった。どういう意味なのだろう、と考える。何を意図した質問なのだろう。
    「いるのかな?」
     考えているあいだに、問いは繰り返された。よりゆっくりと、はっきりと。一音一音を、噛んで含めるように。
     そもそも、と国広は思う。長義がこちらの答えを求めること自体が、初めてではないか。これまで長義が国広に投げた問いかけは、どれも問いかけの形をした主張でしかなかったと記憶している。
     長義の意図はわからない。だから、浮かんだ答えをありのまま口にした。
    「……思っていない」
     口に出してみると、にわかに思考がまとまった。
    「だからこそ、お前がなぜ俺のことをそう呼ぶのかがわからない」
     ひと息に言った。そして、気づいた。どうして今まで思い至らなかったのだろう。
     相手は己の本科である。国広が打たれた時のことを、誰より知っている存在のはずだ。
     ふ、と長義が息を漏らした。かと思うと、声を上げて笑い始めた。いかにも可笑しそうに。
     国広はうつむいたまま、待った。笑いが止むのを待って、口を開いた。
    「何が可笑しい」
    「いや、なに……」
     こみ上げる笑いを抑えるかのように、長義が息を吐く。国広は少しだけ視線を上げた。相手の顔の下半分が見えるほどに。長義は片手で口元を押さえていた。それでもわかるくらいに、相手の口は笑みの形を作っている。
    「嬉しくてね。はじめて偽物くんと会話が成立したよ」
     またわからないことを言い出した、と思った。意味はわからないが、長義の口調は真に嬉しそうだった。
    「……何が言いたいんだ」
    「言葉の通りだよ、偽物くん」
    「写しは――」
     反射的に口に出そうになる言葉を押しとどめた。思っていない。先ほどそう言った以上、この反論は成り立たない。
     国広は口を噤んだ。そして、どうすればこの会話を打ち切れるかを考えた。そもそも、どうしてこの会話が始まったのだったか。それは明白だ。向こうが話しかけてくるからである。
    「……どうして、いつも俺にかまう」
    「おや。お前がそれを言うのかい」
     心外だというように、長義は言った。国広は首をかしげた。
    「俺は、何も」
    「何年だったかな」
    「何?」
    「ここに俺がいなかった期間だ。そのあいだ、お前はよく俺の話をしていたのだろう? 主から聞いているよ」
    「それは……」
    「せっかく、こうして俺が顕現したんだ。俺の話は、俺のいるところでしようじゃないか。それに、俺も、お前の話がしたい。お前が俺の話をしていたように。いけないか?」
    「…………いや」
     否、と答えるしかないではないか。そのように言われてしまっては。
     長義はまた笑みを浮かべてうなずいている。どうやら、国広の答えに満足したようだった。
    「今日も出陣ご苦労だったね。偽物くん?」
    「……」
     返す言葉を持たない国広を置き去りにして、長義は去る。
    「だから、なぜ……」
     深くため息をついてから、国広は自分だけの部屋に戻った。



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    みえろ

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    山姥切国広と大包平の短編です。おもしれー男を見つけてしまった山姥切国広。
    霊力供給(?)ネタです。キスまでの接触があります。

    某本丸を見ていいなと思った組み合わせではありますが、某本丸とは別のとある本丸の話です。

    作中で大包平→山姥切国広の呼び方は山姥切としていますが、どちらもいるときはフルネームで呼び分けているのかなあと考えています。
    一匹狼、おもしれー男に出会う1.
    「俺も行く」
     そう口にした瞬間、部隊の視線がさっと自分に集まるのを大包平は感じた。ただ一振り山姥切国広だけが、思案するようにゆっくりとこちらを振り向いた。
     感情の読めない碧の瞳、その視線を真正面から受け止める。咄嗟に口をついて出た言葉だったが、間違った判断だとは思っていなかった。山姥切は否と言うかも知れない。だとしても、大包平はあくまで主張を通すつもりでいた。
     だから、皆が静かに見守る中、山姥切が黙ってうなずいた時、大包平は思わず目をまたたいた。頭の中で組み立てていた反論が霧散する。誰にとっても予想外だったのだろう、かすかなざわめきが部隊の中を駆け抜けた。
     刀を手に、山姥切は立ち上がった。大包平もそれに続く。最後に隊長を振り返り、ひとつ大きくうなずいた。俺に任せておけという意気だったのだが、曖昧にうなずき返す隊長の顔には、期待よりも心配が現れていた。
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     だから、皆が静かに見守る中、山姥切が黙ってうなずいた時、大包平は思わず目をまたたいた。頭の中で組み立てていた反論が霧散する。誰にとっても予想外だったのだろう、かすかなざわめきが部隊の中を駆け抜けた。
     刀を手に、山姥切は立ち上がった。大包平もそれに続く。最後に隊長を振り返り、ひとつ大きくうなずいた。俺に任せておけという意気だったのだが、曖昧にうなずき返す隊長の顔には、期待よりも心配が現れていた。
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