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    aaaoichi

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    aaaoichi

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    7月のやつ。一回別れたロナドラが、ハントのためににっぴきで海に行くとこ。お茶を濁すのに進化したリンボーダンサーを出すかまよう。

     新横浜から小一時間、一般道を走り続け、逗子半島へと辿り着く。
     コンパクトカーとドラルクの相性は悪くなかったのか、座席の固さや振動に死ぬことはなかった。
     塵が車体に入り込んでしまったら故障の原因になるかもしれないと、彼を入れる瓶を用意しようか真剣に考えたロナルドの懸念を吹き飛ばすかのような能天気さで後部座席に陣取り、チャイルドシーツに掛けたジョンと楽しげに会話をしている。
     助手席には着替えなどが入った大きめのザックがひとつ。特に宿泊の予定はない。以前、マイクロビキニが海に出現した時に得た教訓だ。
     また退治人の衣装を吹き飛ばされたとしても、素っ裸でどうすることも出来ないという状況を回避出来る。
     使う機会に恵まれないことを祈るばかりだが、備えは怠らないに限る。
     閑静な住宅街を抜け、なだらかな上り坂を進んだ先、緩いカーブを曲がるとフロントガラス一面に海が広がった。
     後部座席から歓声が上がる。
    「おお、海だよ! ジョン」
     ヌーッ
    「さすがにこう見ると迫力があるね」
     家では滅多に聞くことのない無邪気な声にロナルド頬が緩む。太陽が完全に沈んでしまったこの時間の海を人間の目では暗闇しか把握することは出来ないが、あのつぶらな瞳に、どう映っているのか気になった。
    「ジョン、やっぱり横浜の海と違う?」
     ヌ……ヌー……ヌヌヌヌイ……ヌヌヌヌ、ヌヌヌイ
    「えっ」
     わからない。ここから見えない。そう気落ちしたような声が耳に届き、慌ててバックミラーで確認するとジョンの瞳は憂いていた。
     ジョンにぬか喜びさせてんじゃねぇ、クソ砂ッ。そう怒鳴ってやろうとドラルクに視線を向ける。けれど、その暴言は、長い耳を下げ、申し訳なさそうに丸い頭を撫でている姿に、喉の奥で潰された。
    「ああ、そうだよね……チャイルドシートからは見えないね。ごめんよ、はしゃいじゃって」
     ヌヌヌヌヌヌヌ、ヌヌヌイヌヌイイ
    「そんな悲しいこと言わないで。私は君と一緒に楽しみたいから、あとで遊びに行こうね」
     ヌーイッ
    「あのなぁ、一応言っておくけど、遊びじゃねーぞ……」
     勘違いすんなよ。そう滲ませるが、随分と軽いものになった。苦言を呈す対象にジョンも含まれているのだから仕方がない部分だろう。
     ふたりと一匹で海を訪れるのは吸血鬼化した海の家の依頼だった。
     レンタカーは明日の営業が始まらなければ返却出来ない。朝日が昇る前に帰るようなスケジュールでも十分間に合う。
     だから、退治が終わった後で、少しくらいなら遊んでもいいかもしれない。
     さすがのドラルクも砂浜であれば、流されることもないだろう。
     土地勘がないのは、確かに心許ない部分はあるが、まぁなんとかなるだろう。とっとと終わらせよう。そう思ってロナルドは姿勢を正し、ステアリングを握り直した。
     海に面した道を三キロほど走って、別荘が立ち並ぶ区画に辿り着く。進むごとに家と家との間隔が開いていった。七月の中旬、夏休み前だから、灯りが付いている家はそう多くはなかった。
     ヘッドライトをロービームからハイビームに切り替える。全く人気のない光景にロナルドが口角をひくつかせ、アクセルを踏む脚の力を抜いた。
     ほんの少し前に楽観視していた心は欠片もなく消えている。
     やべぇかも。そう言いかけた時、後部座席から不信感を滲ませたドラルクの声が掛かった。
    「なぁ、ロナルドくん、ナビ間違ってるんじゃない?」
    「ドラ公も……やっぱ、そう思う?」
    「まったく、住所確認した方がいい」
     溜息と共にドラルクが澪乗り出すと、青白い光を湛えたカーナビが耳障りのいい声で、目的地周辺であることを告げた。
     すると、それまでの暗闇が嘘のように、一番奥――崖にほど近い家の明かりが灯る。思わずブレーキを掛けたロナルドは息を飲み、車内に緊張感が生まれたことを肌で感じた。
     吸血鬼がビビってんじゃねぇよ。せせら笑ってやるのが、常の行動だとは思うのだが、この場を脱却する術はステアリングを握っているロナルドしか持っていない。
     言いようのない使命感が胸に湧き、ごくり、と生唾を飲みこんだ。
     腹筋に力を入れ、覚悟を決める。
     一旦開けた道路まで戻ろうとギアへ手を伸ばすと、視界の端で動きがあった。
     玄関のドアが緩慢な動きで開いたのだ。
     ヒュッ、と喉が鳴る。そして、堪えきれなかった恐怖が外へと溢れた。
    「オギャ――ッッッ」
    「オギャ――ッッッ」
     ヌ――――ッッッ
     車内は発せられた三つの絶叫は、当然車外にも漏れており、ロナルドの到着を待ちわびていた男性はそのあまりの大きさに瞳を瞬かせた。
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