狭いところで待ち合わせコンコン、とノックの音がして、顔を上げると、操縦席のガラスの向こうに稲汰郎がいた。あんまり良い予感はしなくて、
「こんなところにいたんですか。部屋にもトレーニングルームにもいないから、探しちゃいましたよ」
継衛改二の操縦席、ハッチを開けて、
「広報局の人に頼まれちゃったんですけど。
「そもそも俺は承諾していないんだが」
「そうなんですか? なんで」
「俺の仕事じゃない」
「功労者の記念インタビューなんだからいいようにしか書かないですよ。士気のためにもちょっとくらい受けてあげたらいいじゃないですか」
「嫌だと言っている」
「頑固だな~!」
「て言うか、狭くないんですか?」
「あの個室ユニットだって狭いだろ」
「は?」
稲汰郎がぽかんと口を開ける。
「これ」
と言って稲汰郎は、両手で体のまわりにくるっと円を描く。
「うん」
「それとこれ」
続けて、さっきよりふた回りほど大きめに四角形を描く。
「うん」
「同じですか?!」
「同じとは言っていない。違わないと言っている」
「またヘリクツ言って!」
「俺なんて、自分の部屋持てたってだけで狂喜乱舞でしたよ」
「寮のベッドで飛び跳ねて壊して廊下に立たされた訓練生ってもしかしてお前か?」
「立たされてません。正座です」
「同じだろ」
「違いますよ!」
「ああもう、うるさい奴だな。お前、入れ」
「えっ、なんで……」
「いいから、操縦席に座れ」
「は、はい」
その膝の上にのしかかって、
「俺はお喋りな男が嫌いなんだ。黙らせてやりたくなる」
といってチューする。したかっただけじゃんね;;;