Knights of Night① 普段とさして変わりのない日だった。
市中巡回の途中、その気配を捉えるまでは。
「どうかしましたか?」
「吸血鬼の気配がする」
斜め後ろから聞いてきたサギョウに答えつつ、踵を返して足を進めたのは今しがた通ってきた路地。
だがそこには誰もいない、何もいない。
数十秒前に通過したときと寸分の変わりもない。
「……います?」
「いない、ように見える」
立ち止まり、視覚ではなく嗅覚でもなく、五感とは別の感覚で追った気配は微かなもの。
辿るように振り向いた先には警戒を滲ませたサギョウの姿、その頭の上には吸血ゴボウのゴビー。
「……妙だな、確かにこの辺りから感じるのだが」
「ゴビーの気配と混ざっちゃってるんですかね? 僕ら少し離れてみますよ」
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