「暑くて敵いませんわ……」
生温い扇風機の風を受けながらセリーヌは独りごちた。
首振り機能も動かしたくない気分だったが、隣のレナも我慢しているのだから、唯一の涼を分け合わねばならない。うちわを緩やかに扇いで凌ぐ。
「付き合わせてごめんなさい、セリーヌさん」
「いいですわよ、特に用事もありませんでしたし」
レナの申し訳なさそうな態度に、セリーヌは最小限の動きで首を横に振った。
本格的な夏本番、を過ぎてもまだまだ暑い九月半ば。学生で一人暮らしをしている、レナのワンルームのエアコンが壊れた。送風量が少なく、電源を入れる時も大きめの異音がする。大家に相談したところ、すぐ専門業者に見てもらえることになった。レナがセリーヌにその旨を伝えると、女の子一人じゃ何かと不安でしょう、と言いすぐに飛んできてくれた。
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