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    いなーさ

    @ottonounkohunda

    すたおのSS保管置き場です

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    いなーさ

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    レオディの日に寄せて

    #SO2
    #レオディ

     特段、動物が好きなわけではない。毛嫌いするほどでもないが、積極的に関わろうとも思わない。寄ってきたら無碍に扱うことはしないけれど。
     尻尾を振り、口を開けて舌を出す白い毛並みの犬はどことなく嬉しそうで、立っているディアスの前から座って動かなかった。従順そうで、誰かさんとは正反対だな、と心の中で呟く。
    「……どこで拾ってきたの、それ」
     売店から出てきたレオンは頗る嫌な顔をしている。
    「拾ったつもりはない。勝手に着いてきている」
     そう言いレオンの買った荷物を取り上げると、本日の宿屋の方へ足を向けた。ディアスが歩くと犬も立ち上がり、一、二歩離れてその後ろをついて回る。レオンが苛つきながらその犬を横から追い抜くと、犬がグルルル、と低く唸ってから吠えた。うるさそうに猫耳を塞ぐ。
    「犬より絶対に絶対に猫の方が賢いんだからね」
     レオンはディアスのマントの裾を摘むと、背後の犬に向かってべっ、と大きく舌を出した。犬の歩みが止まり、尻尾が悲しげに垂れる。もう追ってはこなかった。
    「大人げないな……」
     まだ子供だもん、と言い返してこない辺りが、レオンなりのプライドを感じさせる。ディアスから子供扱いをされるのは何より癪なのだ。しばらくしてレオンが口を開いた。
    「ねぇ、お兄ちゃんは犬と猫、どっちが好きなの?」
    「……。お前、この状況で俺が犬って答えたらどうするつもりだ」
    「浮気者、って軽蔑する」
    「うわき……」
    「ぼく一人じゃ満足できないんだね……」
    「おい、誤解を招く言い方はやめろ」
    「じゃあお兄ちゃん、早く猫って言ってよ」
    「別に猫は好きじゃない」
     レオンが目を見開くと、マントを摘んでいた手を離す。
     宿屋に着き、予約を済ませていた部屋に入る。ディアスは奥に荷物を置いたが、レオンは入り口で立ち尽くしていた。
    「……猫は、と言っただろう」
     ディアスは、傷ついたような表情が消えないレオンをじっと見つめた。
     そもそも、好きじゃなかったら一緒に旅することなどないだろうに。伝わっていないもどかしさに頭を掻く。
     好きなのは、猫ではなくて。
     レオンの元へ寄って手を引っ張り、部屋の扉を閉めた。萎れた猫耳に手の端で触れると、びく、と身体が跳ねる。頭に手を乗せて撫でると、レオンの赤みが差した頬が膨れたのが見えた。
    「〜〜〜っ、どっちにしたって、ちゃんと言ってくれないじゃないか」
     レオンがぎゅ、と腰に抱きつく。顔を埋めようにもベルトが邪魔のようで、横に向いている。ディアスは無言で腰回りの装備を外した。
    「言ったら満足するのか?」
    「言葉だけじゃ、ちょっとね」
    「……それじゃ終わりがないな」
     ディアスが眉を顰めると、レオンは顔を近づけるように手招きをした。片膝をつかせた後、頬にちゅ、と軽く口づける。
    「ぼく以外、一生かわいがらないでよね」
     不敵と笑うレオンに、ディアスは数年後の、成人男性の面影を見る。ふ、と口元を緩めると、レオンが今度は唇に触れた。
     キスを受けながら、動物と接した時にはなかった胸の高鳴りを、ディアスはひとり密かに感じていた。
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