maru

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兄者と千さん衣装

##刀 #とうらぶ #刀剣乱舞 #髭切 #クロスオーバー #アイナナ

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#とうらぶ

チタン@Feeeeeee

かけねえ以前書いて挫折した文章でテスト投稿してみますだ。
海底の蛍丸と、それを迎えに来る鮫に変身した同田貫のお話。
【サメとクジラとうみほたる】

 ゆらゆらと仄かな陽光が届いている。
 水の感触も、冷たさも、時折肌を撫でる海流も、全てに慣れた。
 ここにやってきたばかりの頃に恐ろしくて仕方がなかった轟きが、海流と、水面で生まれる波が起こす音だということに、何も知らない蛍丸が気付いてしまう程度には長い間この岩陰にいる。
 海へ投げ込まれた数ヶ月前、全身が収まるほどに広い“水中”に蛍丸は驚き、恐怖し、しかし感動した。
 初めこそ、自分が錆びた姿を想像して思考がいっぱいになったが、蛍丸の精神は何処か達観してこの状況を受け止めていた。

「俺にも、錆びて朽ちる時がやってきたってことかな」

 水へ投げ込まれたのは蛍丸だけではなく、何振もの短刀、脇差、打刀、太刀が周りに転がっていた。おぼろげな人型ながら動き回る蛍丸に対し、他の刀剣達は皆その姿のまま、幽かな囁きを漏らすばかりだった。
 蛍丸は、まず手近な短刀に近付いた。耳を寄せると、幼子の声でしくしくと泣いている。

『父上……父上……』

 刀匠のことが忘れられないのだ。蛍丸は直感的にそう感じた。
 次に、少し向こうの脇差に耳を寄せる。

『主様、泣かないで、主様、わたくしめは、何時迄も主様を、忘れませぬ……』

 持ち主に愛されていたらしい脇差は、満たされた青年の声だった。
 青白い砂地にばらばらと散らばった刀剣の間を縫うように進み、蛍丸は千差万別の声を聞いて回る。
 最後に、蛍丸が落ちた岩の近く、平たい砂地に横たわっていた太刀に近付く。

『ヒトか』 

 蛍丸は素直に驚き、そして首を横に振った。

「違うよ。俺はあそこの大太刀。神社にいたんだ」
『ヒトの姿をとるとは』
「みんな喋ってるじゃない。君は?」
『某は、見ての通りの有り触れた太刀』
「でも、俺にすごく近い感じがする」
『?』
「大事にされたんだね」

 太刀に人型は無いが、蛍丸の頭の中には、古風な壮年の男が見えたような気がした。
 それから数ヶ月。
 蛍丸と太刀は取り留めもない話を続けている。

『大太刀殿には、兄弟はおられるか』
「いるよ、自慢の。今どこにいるのかはわかんないけど」
『某にも幾人か兄弟がいたが、其々の所在など皆目検討つかぬ』
「人間みたいに文のやり取りが出来ればいいんだけどねえ」
『某は不器用ゆえ、大太刀殿のように人の姿を得たとしても何も出来ぬ』
「できるよ。簡単だよ」
『……それ以前に、我らはこの大海より抜け出せるのだろうか』
「さあね。でもまあ、俺は成り行きに任せようと思う」
『大太刀殿は肝が据わっている』
「君もね」

 時折、周りの他の刀剣についても話をした。

「あそこの短刀、ずっと泣いているんだよ」
『ああ。幼子の声がここまで聞こえてくる』
「流石に可哀想になってきちゃった」
『しかし、我らには何も出来ぬ』
「ここにいるしか無い以上は、ねえ」

 少なくとも、蛍丸は話し相手がいることが素直に喜べた。


 その日の海流は生暖かく、妙にぬるりと蛍丸を撫でつけていった。
 光の角度からして、おそらく正午であろう。天気も良いらしく、視界は良好であった。
 柔らかい砂を踏みしめ、蛍丸が立ち上がる。水の抵抗を楽しむようにふわふわと太刀の下に近づいて行った。

「おはよう」
『今日もいい日和だ』
「最近天気悪かったから、遠くまで見えるの久しぶりだね」

 太刀の隣へ腰を下ろす。
 幾つかの思い出話をした後、太刀が不意に妙なことを口にした。

『大太刀殿は、【眠れる】のだな』
「それっぽくはね」
『では、夢を見たことはあるだろうか』
「あるよ。二、三回くらいだけど」
『まことか。実は、昨晩それらしきものを見たのだ』
「ほんと? どんなどんな」
『某に、影のように朧げな人の身があるのだ。驚いて周りを見ると、あの短刀や脇差の近くにも同じような影がある』
「へえ~、俺は出てきた?」
『いや、それが、大太刀殿は見当たらなんだ』
「なぁんだ、残念」
『しかし、それできっと良かったのだ』
「なんで?」
『――空、いや水面から何者かが現れた。岩のような巨躯に鬼のような……きっと誠の鬼だったのだろう。その鬼が、影のような我らを掬い上げて屠るのだ。もう少しで鬼が幼い短刀の下へ辿り着くところで、気が付いた』

 蛍丸は辺りを見回した。
 受け入れ難い、しかし現実の、穏やかな時間が流れる海底を。
 今日も皆、思い思いの独り言を呟いている。

「やな夢だね」
『うむ』

 蛍丸は自分の腕を見下ろす。
 指を握る、開く、と繰り返す。確かな感覚があった。

『大太刀殿、我らは、如何様にして死するのだろうか』

 太刀の静かな声に一瞬で思い浮かんだのは、数ヶ月前の想像の自分である。
 刀身が赤を通り越して黒く錆び、鞘から抜けなくなってしまう。やがて腐食が進み、何とも分からない塊になる。
 そうしてなくなっていく。
 岩の隙間に見える本体を見遣った。あの鞘の内側は、今どうなっているのか。

「忘れられたらだよ」
『というと』
「ヒトの気持ちって物凄い力なんだ。信仰って言ってもいい」
『奉納されていたという大太刀殿であればともかく、』

 珍しく太刀の言葉が尻窄みになる。
 蛍丸が太刀の鞘を一撫ですると、小さく息を飲む音が聞こえた。

「言ったじゃん、「大事にされたんだね」って」


x x x


 燃えるような夕日が出ているのかもしれない。
 仄暗い赤みがかった視界の中で、蛍丸は岩に背を預けて夜を待っていた。
 時間に関わらず、生き物を感じない海の静けさは不気味だ。これより更に深い海には、果たして生き物はいるのだろうか。

「(見ては、みたいかな)」

 岩の狭間に眠る本体を取り出したらこの水底を自由に動き回れるのだろうか。今のところ目にしている魚の数もたかが知れていて、もっと多彩な生き物がこの海にはいるのかもしれない。

「あーあ」

 まだ見ぬ彼方への夢想は尽きない。
 だからこそ、蛍丸は気付かなかった。
 僅かに感じられる程度だった視界の赤色が、奇妙なほど濃くなっていたことに。

『――大太刀どの、』

 太刀の震える声で、蛍丸の意識は彼方の海から岩の上へ戻ってくる。
 なに、と返そうとしたところで、赤い色が夕日などではなく、海面のすぐ近くにある光源からのものだとようやく気付いた。
 大きく揺らめいていた海面が泡立ち、大きな影が二つ、赤い光を纏いながら水底へと降りてくる。
 その影が、ヒトのようで明らかにヒトではない形をしているのが分かった瞬間、蛍丸は弾かれた様に岩から立ち上がり、太刀の元へ駆け寄った。

「ねえ、あれは、」
『あれは……そんな、夢とやらは、そんな、』
「落ち着いて、俺の声を聴いて」

 砂を叩きながら必死に太刀を宥めるが、太刀は完全に我を失っており、うわ言の様な声を上げるばかり。
 影が一つの刀剣を持ち上げた。品定めをするように手のそれをねめまわす。
 そして、ヒトであれば足があるはずの場所にばっくりとあいた大きな口へ、

「あ、」

 ごり、と嫌な音がした。
 それを皮切りにもう一体も動き出して、周囲の刀剣を次々と口の中へ収めていく。
 逃げなくてはならない。しかし本体から離れられないこの状況でどうやって。
 蛍丸は弾かれたように砂を蹴り、岩場へ一足飛びに近付いた。隙間へ腕を突っ込み、柄を手探る。

「」

 嫌な生暖かさが近付いてくるのを感じる。あいつらの熱が場を侵食しているのだ。
 ざわざわと声が聞こえる。久しぶりに聞いた、こんなにもうるさい人の声。
 目を瞑り、勢いに任せて隙間から引き抜いた。肩に峰をのせて足に力を籠める。鞘は抜けていない。

ひゅう

 砂すれすれを、文字通り飛んだ。
 何か叫ぶ太刀の声がしたが聴き取れなかった。



 その時、凄まじい圧が蛍丸と異形を横薙ぎに襲った。
 本体を砂地に突き刺してやり過ごし、浮遊する砂に目を凝らすと、異形の赤い光を遮るように、黒く細長い体躯を割り込ませて一匹の大きな魚が陣取っている。
 もしヒトであれば、両者をそれぞれ横目に睨め付けることができるだろう。
 それは――蛍丸の記憶にある特徴が正しければ――鮫であることは間違いなかった。
 おそらく異形の方へも向けられている黄色く光る目が【不機嫌そうに細められた】のを見て、背筋をぞわぞわと懐かしい感覚が這い登ってくるのを感じる。

「きみ、」3490 文字