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    夏naaa

    ここは墓場です。
    書き捨ても普通におきます。

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    夏naaa

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    ケーキ話から始まり、出逢いの話をまで書くことに。

    雑渡両親、いさ子両親も出させました。
    拙い文章だし、文法がおかしいかもだが、幸せな小説を書けて良かった。
    雑伊に幸せあれ。

    出逢い ケーキシリーズ「なんでここに決めたのかなぁ。」
    少しくたびれたスーツを着た雑渡昆奈門がボソッと駅に付いて発した言葉。

    車では遠い所で「見合いをしろ」と言われて駅にきた。
    両親とは仲が悪い。ただ育ててもらった恩はあるので、
    今までだって「見合いをしろ」と言われて断ったことがなかった。
    まぁ、全て破談にさせたけど。

    グゥ
    「む」

    お腹が空いた・・・。
    朝作るのがめんどくさくて
    そのまま来たんだった・・・。
    「ん?」
    いい蕎麦の匂いがする。
    匂いを辿って行くと割とすぐ近くにお店があった。
    「蕎麦・・・」
    美味しそうな匂いに少し迷ったが、ふと店を見ると女の子が
    立ち食い蕎麦を食べているのが見えた。
    (今どき珍しい組み合わせだな。)
    それを見ると余計に食べたくなったのでふらっと中へ入る。

    「いらっしゃい。」
    おじいさんが迎えてくれた。
    ちらっとこちらを見られてあるものがない為注意をする。
    「食券外にあっただろ、そこで買ってこっちに来な。」
    「あ、すいません。」
    そうか、立ち食いは今そんな感じなのか。
    「おじいちゃん!このそばすっごい美味しい!」
    「そうだろう、嬢ちゃんいい顔で食うね。」
    「よく言われる〜。」
    その会話を聞いてちらっと見ると、ポニーテールをしてる可愛らしい女の子がいた。
    女の子らしいプリーツのスカートを履いて、上は少し大きめなベージュ色のスウェットを着ている。
    すごく美味しそうに食べてるな。物は?とのぞいて見ると、
    その視線に気づいた女の子がこちらを向いて
    「おじさん、これおすすめ。春菊玉ねぎ天そば!」
    「・・・君の食べてるやつが知りたかったから助かるよ。ありがとう。」
    いいえ〜とまたズルズル食べてたので、とりあえずは自分も
    食券へ買いに戻り、先ほど女の子が教えてくれたメニューボタンを押す。
    「こういうの新鮮だなぁ。」

    ガラッとまた入り今度こそおじいさんに食券を渡す。
    「はい、すぐできるから。」
    「お願いします。」
    女の子の隣で立つと、先ほど食べてたそばは完食していた。
    しかも汁まで飲んでる。
    「ふ〜美味しかった〜!」
    「おお嬢ちゃんいい食いっぷりだったね。」
    「美味しかったもん。ごちそうさまです!」
    そんな会話をして床に置いてたカバンを持って行く準備をしている。
    「(もう行くのか。)」
    とてもいい顔で食べてたので、もう少し見たかったのだが。
    「はいよ。」
    目の前にそばがきた。美味しそうな湯気と匂いが立ち込めてついゴクリと息を飲む。
    「おじさん、食べてみてよ。」
    もう行ってしまうと思われてた女の子が横で話しかけてきた。
    「え?あ、あぁ。」
    急かされて、早速割り箸を手に取り、パキンと割ると、湯気が顔に当たるが気にせずズルズル食べると
    とても美味しかった。女の子の言う通りのメニューを買ってよかった。
    「どお?美味しいでしょ?」
    雑渡の顔を覗き込んで嬉しそうに話しかける。
    モグモグ ごくん、
    「うん、とっても美味しい。」
    「おじさんもいい顔して食べるね。」
    なんか、まじまじと人に見られるのは久しぶりだ。
    「君、この火傷怖くないの?」
    たまらず自分の顔の火傷の事を聞くと、「全然」と返って来た。
    珍しい、見た目も結構大きいので物怖じせずに話しかけられたのは久しぶりだ。

    「おじさんのいい顔見れたからよかった。じゃあ。」
    「あ、ありがとう・・・。」
    ガラガラと扉を開けて颯爽と出ていった。閉めらられたドアをしばらく見続けてしまった。

    そばは最高に美味しかった。
    久しぶりに立ち食いなんて食べたし、何より可愛い女の子に会えたのがよかった。
    「はぁ、気がだるい。」
    これから見合いじゃなくて、家に帰りたい。いい気分で帰りたい。
    この後一時間の近く遅刻する予定なので漫画喫茶で一服する。
    その間にバンバン電話は鳴るが、聞こえないふりをした。

    『お前毎回いい加減にしろ。早く来ないか。』
    携帯の向こうで雑渡の父親が腹立ちを抑えながら話をする。
    「もうついてるよ。向こうさんは怒ってるの?」
    『怒ってはいないが・・・。』
    「じゃあいいじゃん、もう部屋まで来てるから。」
    部屋の前で携帯を切って扉を開けた。
    ガラガラと個室の部屋を開け
    「いや〜すいません。道に迷ってしまって。」
    「あ、立ち食いそばのおじさん。」
    「え?」
    そこに居たのは立ち食いそばにいた女の子だった。
    「おじさんって雑渡さんだったの?」
    女の子の母親がびっくりしながらお辞儀をする。
    ついでに父親にも挨拶された。
    「は?え?」
    正気か???
    雑渡の父親が座れと促されたので、まだ頭が整理されていない状態でとりあえず席に座った。
    「この度はバカ息子が遅れてしまって申し訳ない。」
    「す、すいません・・・。」
    なにこれ?現実??
    「先ほど私たちも迷子になって・・・と言うか急にいさ子が走り出して見失って
    しまったので、雑渡さんも迷子になるのはわかります。」
    「えへへ。」
    だから一人だったのか。

    女の子の父親が「それでは」と仕切り直す。
    「本日は、遠方からお越しいただき、ありがとうございます。」
    と言うと雑渡の父親が
    「かた苦しいのはいいです、決まったことなので。」と口を挟んだ。
    ではと続けて「娘の善法寺いさ子です。」
    「いさ子です、よろしくお願いします。」
    雑渡に向かって頭を下げる。つられて雑渡も挨拶を返す。
    雑渡の父親も「こちらが先ほど話した息子の雑渡昆奈門です。」
    「よ、よろしくお願いします。」
    なんだか妙な雰囲気だ、お見合いにしてはざっくりしている。
    雑渡の母親が「では、入籍の日程は後ほど。」と言う言葉に驚愕した。
    「は??????」
    「そうですね。後は若い人同士で・・・。」
    お互いの両親がその場で立ち上がり、部屋から出ようとしている。
    「ちょっ!!!待って!!!親父!!!ちょっと!!!」
    出ようとしてるのを引っ張って先に部屋から出る。

    「あのさ、これ、見合いじゃないよね?結婚する前提の顔合わせだよね?」
    「そうだ。」
    「いやそうだじゃないから。なに勝手に決めんの。てか向こう10代の娘さん
    だよな?頭おかしいんじゃないの???」
    「お前な・・・。正直に言ってたらここまで来ないだろ。」
    「いやそうだけど、俺35歳だよ。向こうは?」
    「14歳だ」
    「フざけんな。21歳差あるじゃん。向こうのご両親もなに考えてんの!?」
    「会社の関係でお互いに利害が一致してな。向こうから提案してくれたんだ。」
    「はぁ???政略結婚ってこと??」
    「そう言うことだ。じゃあ、後は向こうの娘さんと話せ。」
    「はぁ?!ちょ」
    焦ってる雑渡を放置し、雑渡の父親が個室のドアを開け
    「お待たせしました、では私たちはこれで」
    と声をかけると、
    「私たちもここで失礼しますね。」
    といさ子両親、雑渡の両親も部屋からそそくさといなくなってしまった。

    あとに残された雑渡といさ子。
    ポカーンといさ子を見てどうしようかと悩んでいると、
    「とりあえず座ったらどうですか?」
    「あ、はい。」
    ズズズとお茶を飲んで冷静に言われてしまったのでつい敬語で
    返事をして、いさ子と向き合うとこに座る。
    「ここの料理美味しかったのに食べれなくて残念でしたね。」
    「え。あ、まぁ・・・。」
    婚約者として座っているこの状況にどう話していいのかわからない。
    「雑渡さん、結婚の話さっき初めて聞いたんですね。」
    「あぁ、うん。そうなんだ。実は。」
    「そうなんですね〜。」
    事の重大さに気づいてないのか?あまりの緊張のなさについイラっとしてしまう。
    「あのさ、君、それでいいの??」
    「え?」
    つい厳しめに言ってしまったが、もうそんな気にしてる余裕はない。
    「君の将来の旦那さんがこんなおっさんなのに、当の君はそんな感じで。
    見ててイライラする。今からでも君のご両親に結婚の話は破断したと言うんだ。」
    びっくりした顔で雑渡を見ていたが、「嫌です。」ときっぱりと答える。
    その返答にいさ子よりもびっくりした顔で「はぁ!?」と返す。
    「そんな事言われても困ります。もう決まった事なので。」
    「え?何?君はそれでいいの!?」
    「私はいいと思ってるんですけど?」
    「はぁ・・・。」
    思わず片手で頭を抱えてしまう。
    (最初に会った時はとてもいい子に見えたのに。疲れる。)
    体制を立て直していさ子に伝える。
    「もう今日は帰ろう。疲れた。とにかく結婚の話はなしだから。
    そっちのご両親に俺から破断したと伝えてくれ。」
    と立ち上がって出て行こうとするといさ子が急に大きい声で一人事を話し始める。
    「困ったなぁ〜。」
    「え?」
    思わず足を止める。
    「私の父に、雑渡さんと必ずデートしてこいって言われてるんですよね〜。
    行かないと会社の契約がおじゃんになるみたいで〜。」
    「・・・そんなの適当に嘘つけばいいじゃないか?」
    「私勢いでデートの写真も撮ってくるねって言ってしまったんですよね〜。え〜困った〜どうしよう〜。私怒られちゃう〜。」
    「・・・」
    「善法寺家は約束を守るのが家訓ですから。」
    キリッとこちらを向いて再度「約束ですから。」と言われてしまうと
    「仕方ないね・・・。」と言わざる得なかった。

    「(デートって言ったって・・・)」
    確実に周りの目には”お父さんと娘”に映っているだろう。
    若い子は何が好きなんだ?と考えながらいさ子と一緒に歩いていく。

    「そういえば、一時間もどこに居たんですか?」
    「あ、あぁ、さすがにバレるよね。満喫に居たよ。見たい漫画あったから。」
    漫画なんてこれっぽちも見てない。とにかく時間がすぎるのを待って居ただけ。
    「ふーん。なんの漫画が好きなんですか?」
    「え?(まさか聞かれるとは・・・)」
    うーんと考え思いついたのは
    「某忍者漫画かな?」
    一回も読んでないけど。存在は知っていた。
    「え!その漫画懐かしいですね!小さい頃よく見てました!」
    「え?そうなの?」
    「私はアニメでしか見た事ないですけど。」
    「自分は漫画だったよ。世代を感じる。」
    あははと力なく笑うのでやっとだ。こんな子供とどんな話すればいいのか。
    「てか、怒んないの?君の両親だって怒ってるだろ。」
    父親は怒ってないと言って居たが、表向きだろうと思いいさ子に聞いてみる。
    「大丈夫でしたよ。雑渡さんのお義父さんが「こう言う手口なんです。」って言って
    ましたもん。」
    「(ちっあの親父め・・・。)」
    心で舌打ちをして顔に黒い影を落とす。
    「ところで君はどこに向かって、あれ?」
    いつの間にか横にいさ子がいないので焦って探すと、後ろで転けていた。

    「大丈夫?」
    「いや〜すいません。」
    いさ子の手を持って立たせてやると、服を払ってやった。
    「よく転ぶの?」
    「はい・・・お恥ずかしい。」
    赤面してそう答えたいさ子に少し同情した。
    「あ。」
    「ん?」
    いさ子の目線の先にケーキ屋さんがあった。
    「(ここは、よく名前を聞く店だ。)」
    いさ子を見ると完全に犬みたいに耳と尻尾を生やしてる、
    そんなイメージで店のケーキを凝視していいるので、ため息を一つついて。
    「ここのケーキ食べて見る?」
    「え!?いいんですか!!!」
    「まぁ、デートだから?」
    これを買って食べたら帰ればいい。写真も撮れて一石二鳥だ。

    中に入ると甘い匂いが漂っていて、「デザートは別腹」とはよく聞くが、今それができた気がする。
    「わぁ〜美味しそう〜!!」
    どのケーキも可愛い。でも値段は決して可愛くない。
    「(ケーキ好きなら好きだろうな。見た目が上品っぽい)」
    そう思ってるといさ子が雑渡の服を掴んでかがめと合図をする。
    いさ子の方に耳を寄せるとぼそっと呟いた。
    「見た目がすごい上品ですね!」
    全く同じことを思っていたのでびっくりしていさ子の方を向くとニコリと笑いかけられた。
    雑渡は怪訝な顔をし「(エスパー?)」と思った。
    ふと店内で食べれないかと席を探すが、どうもここは持ち帰り専門らしい。
    「ここで食べれないのか。」
    ぼそっと呟いたつもりだったが、いさ子には聞こえていたみたいでそれに答える。
    「でしたら公園で食べませんか?いい天気ですし。」
    「公園か、君がそれでいいなら。」
    「大丈夫です!ケーキ選んでいいですか!」
    「いいよ。私はどうしようかな・・・。」
    いさ子はショートケーキ、
    雑渡はチョコレートケーキを選んだ。

    「少し歩いたけど公園あってよかったです。」
    ベンチに二人で腰掛けて一休みする。
    「しかし、よく歩くね君。」
    「普段からこれぐらいの距離歩いてるので。」
    「若いねぇ。」
    「雑渡さんには申し訳なかったです。革靴で痛くないですか?」
    「いや、私も革靴で歩くから慣れてるよ。」
    少し汚れてる靴をクイッといさ子の前で見せて平気とアピールする。
    「それならよかったです、さ!ケーキ食べましょう!」キラキラとした目で改めて箱を見つめた。
    「あ、あぁ。」

    ケーキを銀紙をつけたまま丁寧に取り出して、お店からもらったフォークを袋からいそいそと出して、
    改めて食べる準備を終わらせ「いただきます!」と一口食べた。
    「お、美味しい〜。」
    立ち食いそばの時に見た表情よりもキラキラ輝いてるいさ子を見て、思わずふふっと笑う。
    「よかったね。」
    「はい〜ありがうございます〜!!すっごく美味しい!」
    キャーキャーと感想を言ってるいさ子を見て「可愛い」と心の中で呟いた。
    「(ん?)」
    その気持ちに違和感を感じたが、気のせいだろうと無視することにして自分もケーキを食べることにした。
    「ん、美味しい。」
    あまりケーキとか甘いものは普段食べないが、さすが有名店、甘さ控えめビターが美味しい。
    「…」
    なにやら視線を感じるので、その方向をみると
    「やっぱり…」
    いさ子がじーっと眺めている。
    犬みたく「待て」と言われてるみたいだ。
    「ん、これ私の口つけてるやつで良かったら。」
    といさ子の方へ渡す。
    「え?!いいんですか!!!」
    「え?!ほんとに気にしないの?!」
    「全然気にしません!」
    わーい!と言いながら雑渡からケーキチョコを受け取る。
    「(変わった子だな。)」
    笑うつもりはなかったが、なんだか面白くなってつい笑みがこぼれる。
    いさ子のケーキが食べ終わり、次は雑渡のチョコケーキを食べようと
    「いただきます!」
    と言った瞬間に黒い影がそのケーキに当たって落ちた。
    しかもスカートの上に。
    「「あ」」

    「まさかカラスに邪魔されるなんてね。」
    爆笑した雑渡がケーキの残骸の袋を持って駅まで歩いていた。
    「うぅ…ケーキ食べたかった…。」
    不運だと言いながらトボトボと歩く姿がまた面白くてくくくと笑いを押さえる。
    笑いながらいさ子を横目で見ると、スカートを残念そうに気にしてるようだった。
    ふと笑いが収まりいさ子に訪ねる。
    「もしかしてスカート気に入ってるやつだった?」
    「あ、いえ…」
    なんとも煮え切らない態度に、少し罪悪感を覚えてふと立ち止まる。

    「雑渡さん?」
    完全に笑みが消え、立ち止まる雑渡に不安を感じて雑渡を呼んだ。
    「すまない。そのスカート今度会うまでにクリーニングして返すから、新しいの買ってあげるよ。いや、買わせてくれ。」
    ”今度”なんてあるのかと言った後で驚いた。
    「え?!なんですか?!」
    いさ子がうろたえていいですから!と騒いでいたが言葉を続ける。
    「仮にも私のためにその服を着てくれたんだろ?
    すまないね。そこを汲み取ってやれなくて。」
    「い、いいんですよ!!いつもの事ですから!!」
    「いつもそんなこと起こってるの?ほんと不憫な子だな君は。」
    いさ子はうっと詰まり返す言葉もなく黙ってしまう。
    「まぁ、会いたくないならお金渡すけど?」
    「え!やです!だったらスカート買ってください!」
    「ならスカート買いに行こうか。」
    急遽買い物に行くことになったので、駅のなかのショッピングモールへ行くことにした。

    「このスカート可愛いぃ…」
    「似合うんじゃない?」
    雑渡は飽きていた。
    こんなに女性の買い物が長いなんて知らなかったからだ。
    やっと気に入った店についたが、またそこから長かった。
    少し自分の発言に後悔をし始めた。

    「雑渡さんこれとこれどっちがいいですか?!」
    二つのスカートを持って雑渡に聞いてきた。
    一つはレザー フレア スカートのミモレ丈でカーキ色、もう一つはリネン生地のネイビー色のマキシ丈スカート。
    鼻息を荒あげて鏡の前でどっちかな~と悩んでる姿がとても楽しそうだ。
    その姿を見てはぁとため息をついて壁にもたれ掛かる。
    すると「雑渡さん!」と呼ばれてたので、「またか」とハイハイといさ子の所へ行くと、腕を組まれて鏡の前に連れてこられた。

    「は?」
    さすがに意味がわからなくて眉をひそめて不機嫌な声を出すと、いさ子は笑顔を我慢できない様子で
    「雑渡さんと歩く時、どっちのスカートがいいですか?」と聞いてきたので、
    「へ?」と思わぬ質問に間の抜けた返事をしてしまった。
    「こっちのカーキのスカート、雑渡さん似合うよって言ってくれてたし可愛いから、こっちにしようかな?」
    ついには周りに花が咲いたのではと錯覚するほどの屈託のない笑顔が雑渡に向けられて、思わず胸がいっぱいなる雑渡。
    「あ…だったらもう一つの方が好みかな…?」
    と言うと「こっちですか!」と鏡の中のいさ子がそのネイビーのスカートをあてがい左右に揺れる。

    その姿に見惚れてしまう。
    今までここまで女性に、感動にも似た感情を持ったことがあるだろうか?と考えた。
    いさ子の嬉しそうな姿を見て、喜んでいる自分が居ることに驚いている。
    「だったらこっちにします!」
    「…本当にそっちでいい?」
    「雑渡さんがこっちが好きって言うことは、きっと私に似合うからですよね!」
    どこからそんな自信が湧くのか。
    そんないさ子でも、可愛いとさえ思ってる。
    (やばい、自分はロリコンだったのか…)
    と心配になってきた。

    「ありがとうございます~」
    「いいえ、どういたしまして。」
    汚れたスカートの袋も持って少し荷物になってきた。
    普段ならこんなに荷物をもつ事がないので、やはりちょっと新鮮だ。
    おもむろにいさ子が立ち止まり、カバンからごそと封筒をだして雑渡にはいとだしてきた。
    「なにこれ?」
    「両親からお金を預かってきました。今日掛かった分はちょっと足りないかもしれませんが…。」
    何せスカートを買ってもらえるなんて思ってもいませんでしたからと明るく付け加える。
    「いや、いいよ。こっちが勝手にやってる事だから。」
    「えぇ、それだと私が怒られますよ。」
    「うーん。君の小遣いにしたら?」
    軽い気持ちでそう言うと、いさ子の表情がすっと暗くなった。
    「これは両親が一生懸命働いたお金です。今日の為にって渡してくれた両親の気持ちを裏切りたくないです。」
    今までの表情のギャップと、気迫のこもった表情に怯んでしまい、雑渡は軽率に言ってしまったことを後悔した。
    「ご、ごめん。」
    その言葉を聞くと、先ほどの穏やかな表情に戻る。
    「お金を受け取ったら許します。」
    「…わかった。」
    そういうといさ子の手から受け取り内側の胸ポケットにいれた。

    (びっくりした…)
    可愛い子があんなに怒ると怖いもんなんだな…とまだ胸がドキドキしている、
    (子供の気迫ではなかったぞ…。)
    いさ子の後ろをついているので背中しか見えないが、先ほどの表情がなかなか忘れられない。
    気づいてるのか、気づいてないのか、雑渡の方に振り反ってきた。
    一瞬ドキリとしたが、意に反してごく普通の会話をされる。
    「もうこんな時間なんですね。」
    「え?」
    モールの時計をみると6時近くになっていた。
    「え!もうこんな時間なんだ!」
    「一時間も遅刻した人が居ましたからね。」
    「あ~」
    原因が自分だった事をすっかり忘れていた。
    「今日はここで帰ります。」
    「そう。」
    少し残念な気持ちがあったのだが、気のせいと思いまた無視をしよう、としたのだが。
    「あのさ、連絡先教えてよ。」と口からでていた。
    本当は両親を通じて伝えてもらおうと思ってたが、なんとなくそれは嫌だと思った。
    「え?いいですよ。」
    携帯をお互いに出して連絡先を交換する。
    「スカート、今度会うときに渡せるようにしとくから。」
    「すいません、ありがとうございます。」
    「…ここから遠いの?」
    「いえいえ~JRに乗ったらすぐですよ。」
    「そう、気をつけて。ご両親によろしくと伝えておいて。」
    「! ふふふ、わかりました。」
    「なに笑ってるの。」
    「いえ、破談と言ってこいと言ってたのになって思って。」
    「あ。」
    なんだか今日は色々起きすぎて記憶が塗り替えられていくようだ。
    「…とりあえずは言わなくていい。」
    「結婚は認めてくれるんですか?」
    「…いや。」
    一瞬躊躇ってしまった。なぜかはまだ自分の中には明確にはわからない。
    「わかりました。連絡待ってますね!」
    ニコニコと嬉しそうに携帯を握ってそう答えた。
    「電車はあるの?」
    「この時間でも本数はあるので。」
    「そう。」
    「じゃあ!」と蕎麦屋と同じ様に颯爽と行ってしまった。

    (嵐のような子供だった…。)
    しかし、一緒に居てとても楽しかったのは事実だった。



    実家に泊まれと言われて嫌々ながらも了承した。
    今日のことについて聞きたいこともあったからだ。
    実家は古臭い家だがしっかりしている家の作りで、昔は大人数が住んでいたのが作りでわかるくらいの外見は立派な家だ。

    「ただいま」
    そう声を出してもシンとしてすぐには返事は帰ってこない。
    靴を脱いでギシギシと家の中に入っていくと、その音に気づいたのか母親が居間からでて雑渡を迎える。

    「お帰りなさい。」
    「親父は?」
    「居間にいますよ。」

    そそくさとキッチンへ行ってしまった。
    飲み物を準備しに行ったのだろう。
    居間に行くと父親がいた。雑渡に背中を向けて座って新聞紙を読んでいて、
    そこは昔から変わってない姿だった。
    「どういうつもりなの?」
    その背中に正直に不躾に投げつける、若干の不満の色ももちろん添えて。
    くしゃっと新聞を置いて、雑渡の方へ顔向けて「まぁ座れ。」
    珍しくポンポンと畳を叩いて座るように促した。
    父親が少し機嫌がいい時にやる合図みたいなもので、妙に機嫌がいいのも今の雑渡にはそれがストレスが溜まる材料になる。

    父親と少し離れて座ると父親が話し始める。
    「帰りが遅いっていうことは善法寺さんの娘さんとうまく話せたんだな。」
    「質問の答えじゃないよねそれ。」
    「まぁ、そう邪険にすんな。」
    最近新しく買ったであろう机にある湯呑みを、父親が持ってお茶をずずっと飲んだ。
    「お前も、そろそろ伴侶をもて。これまで好き勝手やってきたろ。」
    「あのねぇ、だからと言って10代の娘さんを充てがう馬鹿親どこにいんの?」
    「ここにいるだろ。」
    ケラケラと笑う父親に吐き気がする。機嫌がいい時は本当に人を馬鹿にしたような
    態度をするのが昔から嫌いだった。自分がいくら本気で怒っても相手にされていないような
    小馬鹿にしたような態度が昔も今も嫌いだ。
    「善法寺さんは最近会社が大きくなった所でな。縁談が向こうから来たんだよ。」
    「へぇ。」
    「今回大きな会社の取引にな、私の力がいるんだと。」
    「それでか、娘さん可哀想だね。」
    「そうとも言えんぞ。」
    「なんで親父がそう言えんの??」
    「娘さんも協力的だからだよ。」

    そこへ母親がお茶を持って雑渡の分のお茶を前に置く。
    父親のお茶に持って来た急須で継ぎ足した。
    「「ありがとう」」
    二人揃って同じタイミングでお礼を言うので、そんなに笑わない母親が
    珍しくふふと笑いまたキッチンへ向かった。構わず父親は続ける。

    「聞いた話だと娘さんからその提案をしたらしいぞ。」
    「え?まじで?」
    「らしいな。どっかの息子よりも親思いな子だよ。」
    「・・・」
    つい黙ってしまう。どんな気持ちでその提案をしたのか想像してもわからない。
    親の為にそこまでやれるのか疑問もあったが、あのお金の時のやり取りの迫真の
    言葉には確かに説得力があった。
    「今日は、お前も大変だったんじゃないか?」
    ニヤニヤとした顔つきにまた腹の底からふつふつの怒りを感じた。多分図星でもある。
    「お前の姿を見ても物怖じしなかったろ?スーツや靴を見ても、気にしなかったんじゃないか?」
    確かにそうなのだ。今までの見合いの娘さんは遅刻したら怒るか帰る、
    もしそこで待っていても、着ている服や靴を見したら怪訝な顔をするか顔を引きつらせて黙るとか、
    そんな態度だったのだが、いさ子は全く反応しなかった。
    あまりにも自然に受け取られすぎてこちらが戸惑うばかりで
    「まぁ、確かに大変だった。」
    珍しく父親の言葉に素直に同調したので、父親もまさかの反応に少し驚いて目を見開いた。
    そして、ぷっと吹き出し少し抑え気味に笑う。随分楽しそうに笑う父親を久しぶりに見たので
    一瞬それに対して怒ることを忘れてしまった。
    「まぁいいさ、連絡先は聞いたのか?」
    「あ、あぁ。スカート返さないとだし。」
    「は?なんでそうなった??」
    しまった、そこも話さなくてはならなくなった・・・。
    珍しく父親が話しを聞きたくて堪らなそうにあってるのでめんどくさい。



    ーーーーー
    「そういえば写真は大丈夫だったの?」と連絡をして聞くと
    「あれ嘘なんで大丈夫です!」
    と返ってきて、してやられた。と突っ伏する雑渡がいた。
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