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    夏naaa

    ここは墓場です。
    書き捨ても普通におきます。

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    夏naaa

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    その後二回目のデート。

    あまり納得がいってない小説だが、ここの部分がないと書きたい所が書けないため、はんば無理やり完成させた。登場人物の多さになんとか書き直したいと思ってるこの頃。

    雑渡さんが嫉妬してる所を書きたかったし、雑渡さんが完全に折れていさ子に惚れた所も書きたかった。
    かっこいい雑渡さんはもちろんいません。

    後日デート二回目 女体シリーズ平日の夕方4時
    「わーーー!!」
    リビングで思わず嬉しさで叫んでしまった。
    「な、なに!?どうしたの!?」
    「これ!雑渡さんから土曜日会いませんかって!!」
    ソファーから対面キッチンにいるいさ子ママに携帯を向けて
    「これ!!!」っと見せて喜んでいる。
    「あぁ、雑渡さんと連絡交換したって言ってたわね・・・。」
    「うん!超嬉しい〜。」
    「・・・」
    ママは少し複雑だった。会社のためとは言え14歳の娘の未来を奪っていいものだろうか。
    幸運な事にいさ子はその許婿さんを好きらしく、デートをした日はかなり喜んで
    帰ってきたし、スカートも買ってもらったと喜んでいたが。
    完全に堅気じゃない見た目に、かなり大きいのでいさ子みたいな子供だと
    力では絶対負ける。約束の時間に遅れてきたし、服装だってあんな格好で来た
    人間だ、信用はできない。
    「ねぇ。」
    「ん?なにママ。」
    口に煎餅を食べながらこちらを見てる娘を見て、拍子抜けするが続ける。
    「もし嫌なことされたり、強要されたりしたらすぐに逃げるのよ。
    痴漢防犯グッズを鳴らしたり、痴漢対策用に教えた護身術をお見舞いしてもいいからね!
    とにかくなんかあったらなんでもいいから生きて帰ってくることだけ考えなさい。」
    きっと目を上げて約束よ!と念を押す。いさ子はキョトンとしてプッと笑うと
    「大丈夫だよそんなに心配しなくても〜。ママは心配性だなぁ。」
    あははと笑ういさ子を見るとイラッとした。
    「あのねぇ・・・。」
    わなわなと手を震わせてこめかみに青筋を立てる。
    「それに雑渡さんはそんな人じゃないよ。大丈夫だって。」
    何を根拠にそんなに信頼してるのだろうか・・・。
    「遅刻してあの服装で来た人をなんでそこまで信用できるのよ。
    本当はあのまま連れて帰りたかったのに、お父さんが大丈夫だからって…。
    まぁ、いいけど。あんた不運体質なんだからもうちょっと警戒してよね・・・。」
    母親としてはそこも心配なのよと伝えるといさ子は「えへへ」と苦笑いでごまかした。


    「土曜日何着て行けばいいか・・・。」
    「まだ悩んでるんですか。」
    仕事場の喫煙所で缶コーヒーを飲みながらタバコをふかす。
    雑渡がうーんと悩んでいる所を見て、尊奈門が呆れていた。


    「若い子と初めてどっか行くからさ〜わかんないんだよねぇ。」
    「最初にデートしたって言ってませんでした?」
    「あれはデートじゃない。」
    「え?違うんですか?」
    「ただケーキ食べて服買って帰ってきただけだもん。」
    「だもんって…おっさんが言うときついから辞めて下さい。あと、
    それデートでは??」
    「違う、カウントしない。」

    デートだったらもっとちゃんとした服着てる。と愚痴ってたが、尊奈門は無視をする。

    「(どちらにしても、見合いで徹底的にフラれるようなスーツしか着なかった雑渡さんが悪い…。)」
    「尊~、服どうしたらいいと思う?」
    「知りませんよ…。」
    「はぁ~もうスーツでいいかなぁ。」
    「それだとかなり気合い入ってる人みたいでキモがられる可能性がありますよね。」
    「尊…。」少し怒気を混ぜて愛称を呼ぶ。
    「…もう~なんでもいいんじゃないですか?あのスーツで会って嫌がらなかったらもうなんだっていいでしょう。」
    はぁ。とため息混じりに言うと、さっさとその場を後にした。
    取り残された雑渡は妙に納得して「確かにな」と呟いた。




    土曜日。
    お昼も一緒に食べる約束をしたので、お昼には少し早めの時間に待ち合わせをする。
    自分の住んでいる町から3つ程進んで行く駅で待ち合わせだ。
    いさ子はこの前雑渡が買って貰ったスカートを履いて、上には白いブラウスを着て待っていた。
    ちなみに、空は曇り。
    「…天気予報では雨20%で曇りと書いてたけど…。」
    い、一応折り畳み傘は持ってきたけど…。どうか必要になりませんように。

    「やぁ。」
    「あ!雑渡さん。」
    某スポーツメーカーの黒いジャケットと、ベーシックチノパンで現れた。
    いさ子は思わずジーっと眺めてしまう。
    「変?」
    その視線に雑渡は焦って聞いてきた。
    「いえ、前回のスーツのイメージとはちがったので。あと、眼帯・・・。」
    「・・・今回は一応デートだからね。」
    ちょっと恥ずかしいなと思いながらコホンと、咳払いをする。
    そのまま手下げ袋をいさ子に手渡した。
    「はいこれ。スカート、なんとか綺麗に取れたみたい。」
    「ありがとうございます!」
    心なしかとても嬉しそうに笑うのでひとまずは安心する。
    「スカート、履いて来てくれたんだ。」
    「え?だって一緒に歩くから・・・。」
    さも当然のように言うので雑渡は恥ずかしくなり横を向いて緩む口元を抑えた。
    すぐに切り替えて会話を続ける。
    「そ、そういえば、この前言ってたお店ってどこにあるの?」
    やり取りの中でいさ子がここに行きたいと言ってたお店があるらしい。
    「案内しますね!」
    こっちですよ!と手提げ袋を歩くリズムで降りながら、ズンズン先に行くいさ子の後をゆっくりとついていく。

    「幸運食堂…。」
    「安くて、美味しくて、なにより量が多い!というお店らしいです!」
    鼻息荒くお店の紹介をするいさ子を見て、この子は花より団子派だなと改めて認識した。
    「雑渡さん、ちゃんとお腹空かせてきました?」
    「言われた通り朝ごはん抜きできたよ。」
    「ではでは!」
    お店に入ってみると、何組か入っているが席は空いていた。
    「いらっしゃいませ。何名様ですか?」
    女の店員さんが出迎えてくれた。緑色の髪に丸い目をしていてとても可愛らしい。
    「二人です!」
    いさ子は指を2本ずいっと出して店員にアピールをする。
    それを見てにこやかに笑い「こちらにどうぞ。」と案内をされる。
    席に座って周りを見渡すと、内装は新しめで白やを基調としている作りだった。
    キッチンは対面になっており、中にはマスクをして料理をしている男がいる。
    カウンターには常連さんなのか親しげに話して楽しそうだ。

    「決まりましたらお声をかけてください。」
    水とメニューを置いて下がって行った。
    「さぁ雑渡さん!なに食べますか?」
    「何あるのかな・・・」
    二人でメニュー表を見るとかなりのメニューがあり、写真も何枚か載っていた
    が、どれも皿いっぱいの量で、二人はメニュー表に釘付けになった。
    「これすごいね・・・。」
    「想像以上でした。友達から教えてもらって写真まで見たのですがあれはデザート
    だったので・・・。」
    「友達、ランチこれ食べてデザート食べたの・・・??すごいね・・・。」
    「そうですね・・・。私よりも食べる子なんで・・・。」
    どんな子なの????逆にそっちが気になるわ・・・。
    いさ子があっ!と何かに気づいた。
    「これ、量決められるみたいですね!!よかった!
    もしかしたら友達も普通で食べたかもですね。」
    「ほんとだ。そうだよねきっと・・・。(そうだと思いたい。)」
    二人で色々話して結局普通の量で食べることにした。
    いさ子はオムライス定食、雑渡は生姜定食にした。

    雑渡は待ってる間に気になってることを聞こうと思った。
    「両親は何か言ってたかな?ちょっと遅くに帰らせてしまったから・・・。」
    「んー何も言ってませんよ。お父さんも別に怒ってなかったです。
    あ、母はちょっと苦い顔してました。」
    「やっぱり・・・。」
    夕飯も食べないで帰らせてしまったと返した後で気づいたし、色々まずかったのではと考えていた。
    「電話して謝った方が良かったかな。」
    「スカート選びで私が迷ってたらって伝えたら納得してたので大丈夫ですよ。
    あと、とっても楽しかったって言ったら安心したと言ってましたし!」
    「そうか・・・。」
    どちらにせよ、一度電話しなければなるまい。
    安心したと言ってるのは、多分そんなに信用はないから出た言葉だろう。
    結婚しないにしても、それは筋が通らないだろう。

    「お待たせしましたぁ。」
    女の店員さんはいさ子のオムライス定食を置いて横に避けると、後ろから紫の髪をした男の子が雑渡の前に生姜定食を置いた。
    「こちらが生姜て、あ、いさ子先輩?」
    「…数馬?」
    「あれ?知り合い??」
    女の店員さんが数馬といさ子を交互に見て驚いて聞いてきた。
    「え?!なんでここに?!」
    「ここ、僕の両親がやってる店なんですよ。」
    「えー!知らなかった!!」
    数馬という男の子はどうもいさ子と知り合いらしい。
    なんとなく疎外感を感じる雑渡。
    「あ、雑渡さん。この子は僕の後輩なんです。」
    初めまして。と丁寧に挨拶をされたので、どうも。と挨拶を返す。
    「引っ越して違う学校に行ったって聞いてたから寂しかったんだよ!」
    「学年も違うし、そんなに話せなかったですもんねぇ。」
    「まさかここで会うなんて!」
    いさ子が嬉しくておもむろに席を立った。
    「良かったら携帯の連絡先教えてよ!他のみんなにも伝えとくから!

    「ありがとうございます!そしたら今携帯持ってきてますので!
    そうこさん、ちょっとお店任せるね!」
    「はーい。」
    そう言うと数馬が店のキッチンへ姿を消したの見て、そうこと呼ばれていた店員さんが「ごゆっくり。」とその場から離れていく。

    やや興奮気味に携帯を持ってきて、連絡先を交換し、「では、ゆっくり食べて下さいね!」とまたキッチンへ消えて行った。
    「わー!嬉しなぁ!まさか後輩がここにいるなんて思いもよらなかった!
    幸運食堂と言う名前通りの店ですね!」
    興奮したまま、椅子に座って話しかけてくる。
    「良かったね…。」
    雑渡は嬉しそうに話してるいさ子を見ると嬉しい気持ちになるのに、
    別の黒いモヤモヤが止まらなかった。
    「食べようか…「「いただきます。」」
    しかし、ご飯は美味しい。
    「美味しいな。」
    「オムライスも美味しいです~!」
    食べてるいさ子を見ると、幸せそうにハフハフしている姿は本当に可愛くて、感じていたモヤモヤが薄れていくように感じた。

    するとキッチンから料理をしていた人が二人分の皿を置いて「良かったら喰え。」
    と言ってきた。
    お皿の上にはラッキョウ漬けが入っている。
    いさ子は「いいんですか?!」と訪ねるとマスクはしているが、豪快に笑ってる様子が見えた。
    「自家製らっきょなんだ。」

    「ありがとうございます!!」
    いさ子は嬉しそうに受けとる。
    ふと、先ほどの会話で両親の店と聞いたので
    「あ、数馬のお父さんですか?」
    と聞くと首を横に降った。
    「俺はここの従業員だよ。ここの両親は忙しくてね。
    海外や国内をあちこち飛び回ってるよ。」
    「へぇ…。」
    雑渡も感心して話を聞いている。
    「数馬が店の売上とか、ホールの手伝いとかをしてくれるんだよ。
    引っ越した時はそんなに忙しくなかったんだけどね。
    これから色々展開したいからってさ。」
    「そうでしたか…」
    いさ子は少し心配になった。
    なにせ小学生の数馬で記憶は止まっていて、
    寂しい思いをしたのではないかと想像に難くない。
    「まぁ、俺が数馬の代理父みたいなもんだ。今度数馬と会ってくれや。」
    「…わかりました!是非そうします!」
    「そうしてくれ!」
    わはははと笑いながらキッチンへ戻っていった。
     
    席に数馬がやって来て、
    「いさ子先輩。そういえばこの人は…?お父さん?」
    「そう見えるよねやっぱり。」
    そう言わざる得ない。
    雑渡自身だって思っていた事なのだ。
    「違うんだ。この人は許婿なんだ。」
    と説明するとすぐに「違うよ。」
    と反論した。
    「え?」「え?」
    いさ子も数馬もびっくりして雑渡の方を向いた。
    「…まだ決めてないから。」
    「もぉ~。デートって言ってくれたじゃないですか!」
    「デートはデートだけど、だからと言って結婚は認めてない。」
    どういうこっちゃと言う顔で二人のやり取りを見て、少し引いている数馬はボソッと。
    「結婚しないのにデートしてるんですか?」
    と呟いた。
    ピタリと雑渡といさ子は止まり、雑渡が先に話し出す。
    「デートしたからと言って必ずしも付き合ったり、結婚しなければならないなんて決まりはないだろう。」
    雑渡も負けじと反論する。
    「いさ子先輩、向こうもそう言ってるんで辞めて別の人と付き合ったらいいと思いますよ。」
    眉間にシワを寄せ、かなり不機嫌な顔をしていさ子を説得すると。
    「あはは…厳しいな数馬は…。」
    それをムッとして聞いてる雑渡だった。 


    「ご馳走さまです…」
    会計は割り勘で!と話していたが、デートだから。ということで雑渡が支払った。
    「いいよ。」
    もしかしたら今日が最後かもしれないし。



    「今日はありがとうございました。スカートも。」
    「いいえ。むしろごめんね。」
    「いえ!おかげで雑渡さんに会えましたし!」
    「…」
    ばつの悪い顔をして横を向いた。
    もしかしたら今日が最後だと思ってたのだが、そう言われると離れ難くなってしまいそうだ。

    「ごめん、ちょっとそこのコンビニでタバコ買ってきていい?」
    「いいですよ!」

    雑渡はいさ子を置いてそそくさとコンビニに入っていくと、すれ違いに男の子の軍団が出ていった。
    多分高校生だろう。背丈一つ低い子が二人。後輩なのか「先輩!」とテコテコついて行った。
    なんとなく昔の事を思いだし少し感傷に浸りながらタバコを注文すると、なにやら外が騒がしかった。
    どうやらさっきの男子たちだ。
    (なんかたむろしてんのか?)
    と思うと急にいさ子の事が心配になり、タバコを手にいれると早足で外に出ていく。
    「まさかここで会うとはな!一人か?」
    「びっくりしました!今人を待ってるんですよ。」
    いさ子が仲良さげに先ほどのすれ違った男たちと話している。
    それを見ると、今まで感じた事がなかった腹の底にあるなにか、黒いモヤが濃くなっていくのを感じ、先ほど買ったタバコの箱をくしゃっと潰した。
    (なんなんだ今日は。)
    潰したタバコを尻ポケットに乱暴にいれ、ずかずかといさ子の方に近づいた。


    「お待たせ。」
    ぬっと現れる大柄な男がいさ子の前に立って、話しかけた男を威嚇をする。
    猫背をしっかり伸ばして、胸を前に張って少しでも背を高くする。
    「お?誰だこいつ。」
    物怖じせずにその男は話しかけた。
    男は少し目付きが悪くなり、二人の間にピリついた空気が流れる。
    その男と同じ年の子達も同様にピりついて雑渡を眺めている。
    後ろにいる後輩たちは「ひぇ…」とその光景を涙めで下がってみるしかない。
    すると、雑渡の後ろにいたいさ子が、更に割って入っていき
    「ま、待って下さい!!雑渡さん!!この人達は私の先輩です!!」
    「え?そうなの?」
    棒読みで驚いた台詞をはいても、まだその男と雑渡は睨みあっている。
    「いさ子、誰だこいつ?」
    「あの、えっと。」
    先ほどの会話を思い出して「許婿」とは言い出せずにいると、雑渡少し目線を合わせておどけてながら代わりに答えを言った。
    「いさ子ちゃんと結婚する予定の者だけど。」
    「はぁ?!ふざけてるのか?!」
    「へ?!え?!あぁ先輩!ふざけてないです!!本当なんです!!」
    まさか雑渡からそんな言葉が出てくるなんて思わず、戸惑いながらもその言葉に嘘はないと訴える。
    「はぁ?まじでか??!こんな奴と?!」
    「まじです!」
    「さり気に私の事侮辱したでしょ。」
    「すいませんね、信じられなくて。」
    お互いに睨みはしてないが、若干のピりつきはまだ収まらないでいる。


    「えっと、先輩の食満留三郎先輩です!」
    「先ほど失礼しました。頭に血が上ってしまいまして。」
    「いいよ。若い時は誰だって血の気が多いもんだよ。」
    まだお互いに心を許してないが、とりあえずはいさ子の必死の取り次ぎを見て一先ずは休戦とした。
    「いさ子の婚約者って?」
    「さぁ?しかしでけぇな…。」
    「「あの人怖すぎる…」」
    他の男友達がヒソヒソと話をしてるつもりであろう。ガッツリ二人に聞こえる音量で話している。
    いさ子が「こほん!」と咳払い。
    「こちらが潮江文次郎先輩、七松小平太先輩です!」
    「どーも。」「よろしく。」
    「んで、後ろにいるのが後輩の平滝夜叉丸と田村三木ヱ門です!」
    「は、初めまして?」「こんにちわ…?」
    びくびくしながら雑渡に挨拶をするが、雑渡は「どうも」と短く挨拶を返した。
    「先輩達と後輩は委員会で仲良くなったんですよ!だからそんな喧嘩みたいな事しないで下さいね!」
    食満と雑渡を交互にみながら仲良くね!と釘を刺した。
    「いさ子、こいつ歳いくつなの?」
    「え!えっとぉ。」
    言っていいのかわからず、助けてほしくてチラッと雑渡を見た。
    それに気づいた雑渡が変わりに答える。
    「35です。」
    「「「「「え?????」」」」」
    「え?ロリコン?」「いさ子脅されてるのか??」「いさ子先輩大丈夫ですか?」「いさ子先輩無理なさってるのでは…」
    それぞれ言いたいことをいさ子を取り囲んで伝えられ、いさ子は少しパニックになる。
    雑渡はその光景を見ても先ほどよりもモヤモヤは収まったてはいたが、言われのない言葉にうんざりする。
    するといさ子は大声をあげた。
    「一遍に言わないで下さい!!それに大丈夫です!私が好きな人なんでそんなに悪く言わないで下さいよ!!」
    ピタッとその言葉で周りが黙った。
    「わ、悪かったよ。」
    食満が雑渡の方に少し目線を投げてそう言うとプイッと横を向いた。
    雑渡はそれよりも、その言葉に頬が熱くなって口元がニヤケそうになったので片手でそっと隠した。
    みんなそれぞれ雑渡にすいませんと謝り、気まずくなってしまい「そしたらここで」と食満が立ち去ろうとした際に小平太がふと雑渡の前に立った。
    小平太はここまでに何も言わず雑渡を眺めていた。この中では背が低い。雑渡に見下ろされてもじっと眺めいた。
    いさ子はなにかされるのか?と思い「七松先輩?」と心配そうに話しかけると、小平太は手をポン叩いて「思い出した!アンタこの近くのトレーニングジム行ってただろ?」
    「あ、そう言われると君この前会ったな?」
    二人で思い出して少し笑いあう。

    なんとなく気まづいが駅まで一緒に歩くことになった。
    前を歩いてるのは食満、潮江、滝夜叉丸、三木ヱ門。
    その後について行ってるのは、雑渡、小平太、いさ子。
    主に雑渡と小平太しか話してないが。
    今度はいさ子が蚊帳の外でつまらなそうに二人を眺める。
    「へー、別のジムに行ってんだ。」
    「あそこは場所が良かったけど、閉まる時間が早くてだめだった。」
    「しかし、中学からジムに通うのは羨ましいなぁ…。」
    「平日は部活をしてたんだが、土日には有り余る体力のせいで手持ちぶさたになってしまって。親のコネで学校には内緒で土日に見学してたんだ。今は受験対策で部活を休んでるから尚更だな!」
    元気よく雑渡と会話をしていて、前の4人はチラチラと二人のやり取りを怪訝に見る。
    意外と二人の会話が弾みなかなかいさ子が入れなくてとうとうブスッと口を尖らせて目線を前に向けた。
    それに気づいた食満が手招きをしてこっちにこいと合図をする。
    それに気づいて、そちらに行こうと早足で歩くと雑渡が話しかけた。
    「いさ子ちゃんは高校どこに受けたいかって決まってるの?」
    「あ?!え!」
    急に話しかけられ、そのまま雑渡と同じペースで歩いてしまった。
    チラッと食満を見て「ごめんなさい」と目線を送る。
    それをみて食満は(奴は相当めんどくさいやつだ…。)と確信した。

    「ではここで!」
    「あぁ、ありがとう。」
    小平太と雑渡が別れの挨拶をし、前の4人と合流して「じゃーないさ子!」と食満が挨拶をしてみんな少し頭を下げてから進んでいく。
    「意外に小平太先輩と話が合って驚きです…」
    「私もびっくりしたよ。」
    お互いに見合って妙な気持ちになった。
    「そしたら駅まで」
    と雑渡が言いかけると、鼻になにか当たった気がした。
    「ん?」
    「え?」
    雑渡が上を見ると、ポツポツと雨が降りだした。
    「あ、雨だ。」
    「え、嘘。」
    するとそれを合図に奥から雨足が速くなっていく。
    「まずい。」
    「と、とりあえず駅まで走りましょう!」


    「君の不運は凄いな。」
    「あはは…すいません…」
    いさ子が途中で転んでしまい、雑渡が着ていたジャケットを傘代わりに駅まで来たのだった。
    雑渡はジャケットを少し払うと撥水加工のおかげですぐに水滴が飛んだ。
    「いさ子ちゃんは大丈夫…」
    「ちょっとだめかもです…」
    思わず固まっていさ子を凝視してしまう。
    なぜならいさ子のブラウスは濡れて透けていたから。
    雑渡はジャケットを急いでいさ子にかけてやる。
    「雑渡さん?」
    「いさ子ちゃん、目の毒だそれ。」
    (これで帰すのは不味い。)
    下手をすると風邪をひく。どうするかと考えてた際に、無意識に思った。
    「(ここから自分のアパートが近い)」
    はっ!として、その考えだと自分の部屋にいさ子をいれることになってしまう。
    それは果たして大丈夫なのか?
    自分の考えが浅さかではないか?
    と思ったがいさ子のくしゃみでぶっ飛んだ。 
    なるべく感情をいれないで説明をする。
    「いさ子ちゃん。その格好だと風邪を引くので、私のアパートに行って服を貸すよ。」
    「え?!そ、それは…」
    いさ子は顔を真っ赤にして口ごもってたが、雑渡はそれを気にしなかった。
    なによりもいさ子の身体が心配なのだ。
    「服も汚れてるし、このまま家に帰せないよ。」
    「あ、でも、それは悪いような…自分が転んだのが悪かったし…。」
    「君の不運はわかったから。」
    「う、すいません…。」
    「ここから10分くらいだからタクシーで行こう。」
    「え?!歩いて行きますよ!」
    「身体が濡れてるから体温が奪われるよ。早く服を着替えた方がいい。」
    「あ、そうですか…」
    淡々と説明をされたので、いさ子の顔の赤らみが徐々に引いていった。

    「ひぇ、立派…。」
    「言うほど立派じゃないよ…。」
    全4部屋のアパートで角の一階の部屋に案内され、玄関にあがった。
    部屋はあまり物がすくなく、2人がけくらいのソファーの背もたれに普段着てるであるう服がかけられている。
    「わぁ。初めて男の人の部屋に入ります…。」
    「え?そうなの?さっきの先輩の家とか行かないの?」
    「行きませんよ!今まで友達みんな自分の家に遊びに来てたので。」
    「ふぅん(そんなもんなのか)」
    お風呂場へ行きタオルをもってきていさ子の頭をふいてあげる。
    「うわ!」
    「あ、ごめん。痛かった?」
    「い、いえ!大丈夫です!」
    ドキドキして顔を見れず、なすがままタオルでガシガシとされる。
    ある程度ふくと、肩にタオルをいさ子にかけて次はベッドの寝室に行き、雑渡の服をもってきていさ子に手渡す。
    「多分大きいと思うけどこれ着て。」
    「は、はい!」
    「お風呂場で着替えるといいよ。ドライヤー使って髪乾かして。濡れた服はこのビニール袋にいれなさい。」
    あまりにも手際が鮮やかで、いさ子はコクコクと返事をして、説明されたお風呂場へ入っていった。


    「(ひぇーーー雑渡さんの服!)」
    やはりいさ子には大きいサイズだ。
    黒いロングスリーブで太ももが隠れる。
    いけないと思いつつも、雑渡の匂いを確認する。
    先ほど着てたジャケット最近買ったものなのか、あまり匂いはしなかったが、これは柔軟剤の匂いしかしない。
    「(ちょっと残念だな)」と思いつつ借りて着たズボンを履くとウェスト
    がダボダボだ。


    雑渡はいさ子を車で送るため寝室で濡れたズボンを脱いで新しいクライミングパンツに着替えた。
    ちょっとどうかな?と考えたが、「あのスーツ」で会った両親ならこれならば大丈夫だろう。
    脱いだ際にズボンの後ろのポケットに違和感があったので、手を入れ確認すると、握り潰したタバコの箱が出てきた。
    「あ」あの時潰したのか。
    勿体無かったと思った反面、潰した事など覚えていなかった自分に驚愕した。
    思えば、今まで生活していてあの強烈な「妬み」の感情など持ったことがなかったのだ。
    自分にもあんな黒い感情があったのか、タバコの箱が自分を現しているように感じる。
    いさ子の存在が、自分が知らなかった事を教えられてるのか、産み出されてるのか…。
    向こうから「カラカラ」と引戸が開けられる音が聞こえてきたので、考えるの辞めて、タバコの箱を適当に置いていさ子の元へ行く。

    ベッドと居間をしきっている引戸を開けて「終わった?」と覗いて見ると可愛い女の子がいて時が止まる。
    正確に言うと、ブカブカの自分の服は鎖骨がおもいっきり見えていて、ズボンの腰周りは折って厚さを出して押さえ、裾を折って短くし、フワフワの髪をおろしていて、先ほど渡した白いタオルをかぶった可愛いいさ子がいた。
    (え?可愛すぎない?彼シャツというんだよな…これ。)
    いさ子が気づいて雑渡の方に笑顔で寄ってくる。
    「雑渡さんありがとうございました!」
    「あぁ、全然いいよ…。」
    直視できず、視線をズラして受け答えをする。
    「ちょっと近いかな…タオルかぶってるのは…?」
    「あ、すいません。癖なんです。
    髪長いから途中まてま乾かして、あとはタオルを被りながら自然乾燥してやるのが癖で…。」
    「あ、そうなの…。」
    ならすぐには移動できないか。と冷静自分が考えた。
    「乾いたら、車で送って行くから。」
    「え!いいんですか!」
    「仕方ないよね、雨まだ止まないし。」
    「すいません…。」
    目に見えてしょげているので、少し焦って雑渡は「大丈夫だから!!気にしないで!!!」と押しきる。

    「せっかくスカート染み抜きしてもらったのに、新しいスカートも汚れるなんて、せっかく雑渡さんが買ってくれたのに…不運…。」
    ソファーに体育座りでボソボソと嘆いていて、いさ子の周りの空気だけがドヨーンと暗くなっている。
    キッチンから雑渡がいさ子に作った飲み物を差し出す。
    「ココアとか飲める?」
    「わぁ、大好きです!」
    少し目に生気が戻り、嬉しそうにココアを受けとり、フーフーと冷ます。
    雑渡もココアを持ちながら座らずにいると。
    いさ子がトントンとソファーを叩いてアピールをする。
    「なに?」
    「隣、座らないのですか?」
    「え?!」
    少し気恥ずかしくて座らないで居たのに、断るのも変な気がして、仕方なくゆっくり座り、少しでも離れて座れるように距離を開ける。
    少し間が空いて気まずい、が、最初に話しかけたのはいさ子だ。
    「あの、結局雑渡さんはどうしたいです?」
    「え?」
    「婚約はしないような事を言ってたのに、先輩たちには結婚するって言ってましたから…雑渡さんはどうしたいですか?」

    自分で言っておいて、そう言う行動に出てしまったので、確かにどうしたいのか聞かれても仕方ないだろう。
    (しかし、ズバッと聞くなぁ。)
    子供ながらに感心する。
    自分が14歳の頃はとにかく我慢してた気がした。
    割かし大人の言うことを聞いてたような…。
    いさ子みたく自分の意見を大人に堂々と言えてただろうか?
    「雑渡さん?」
    「あ、ごめん。ちょっと違う事考えてた。」
    雑渡の返事に少しムッとしたが、ココアを一気に飲んで目の前の机にコップを置いて一呼吸。
    「別に、雑渡さんには無理に決めて欲しくはないですけど、流石に自分の言った事には責任持ってほしいです…。」
    大人なんですから。と付け足した。
    うっと痛い所を突かれてごめんねと謝り、自分もココアを飲んでまだ残ってるが机に置いて、いさ子に正直に話す事にした。

    「今日で最後かなって思ったんだけど、君が異性と話したり、仲良くした所を見ると、凄く嫌だったんだよね。自分でもこんな風になるとは思わなかったのだけど。」
    「…」
    「それに、歳がね。今日の先輩たちをみたらわかるでしょ?
    私ロリコン扱いされてたし。」
    「そんな気にしないのに。」
    「君はそうかもね。」
    自虐的に笑うのをいさ子は不快そうに眺める。
    いさ子はそれを否定したいのか、話し始めた。
    「私が雑渡さんと結婚すると私から言ったんですよ?だから気にしてません。挨拶に伺って向こうのお義父さんに写真を見せると言われたのですが、断りましたし。」
    「え?!会ってたの?!」
    「はい。」
    あの親父…なんも言ってなかったぞ…。
    「誰と結婚してもいいと思いました。父の会社がそれで続けられるなら。」
    そう話すいさ子の表情は覚悟を決めている。
    14歳の女の子にしては迫力があると思ったのは、どうやらここで決まったみたいだ。
    「まぁ、それでも見合いの日は怖かったですよ。どんな人がわからないまま来ちゃったのをちょっと後悔するくらい。」
    「いさ子ちゃん…」
    「でも緊張して、お腹空いたから、あの立ち食い蕎麦を食べたら案外平気でした!」
    おいおい。と雑渡が座ってた位置から腰が少しずり落ちた。
    いさ子は続ける。
    「で、そこで会ったおじさんがとても優しそうで、あの時思ったのが(結婚するならこんな人がいいな。)て思いました。」
    その言葉を聞くと心底びっくりしていさ子の顔を凝視した。
    いさ子の頬は赤らんでいて、雑渡は嬉しさで口元が緩んでしまう。
    「あ…ありがとう。」
    しかし、雑渡はあと一つ気になることがあり、思いきってそれもこの際だからと聞くことにした。
    「いさ子ちゃんは、この傷は気にならない?」
    「え?」
    「あの時も聞いたけど、これ、火傷のあとなんだけど。大抵はみんなこの傷を見ると引くんだよ。いさ子ちゃんは、こんな傷がある私でもいいの?一生こんな傷がある奴でもいいの?」
    いさ子はまだ、未来ある子供だから今一度考えてほしくて聞き出した。
    眼帯をしていても、顔半分、耳あたりまで火傷の跡が残っているこの傷と自分との折り合いがついていない。
    ここで、もしいさ子から辞めると言われても仕方ないが、自分の心が持つのかは疑問だ。聞くのも本当は嫌だったが、この傷がある限りは向き合わないといけない問題なのもわかってはいる、どんな答えでも受け入れなければならない。
    少し伏し目になりながらいさ子の答えを待っていると。
    体育座りを崩して雑渡の横に移動してきた。
    少し驚きつついさ子を見ると、たち膝になり、雑渡が多少上目遣いでいさ子を眺める形になった。
    そっといさ子は雑渡の顔を両手で挟め、雑渡の眼帯がある方の手で眼帯を外した。
    「い、いさ子ちゃん?」
    年甲斐もなく心臓が跳ね上がって音がうるさい。
    目を細め、雑渡の傷を少し指で撫でると
    「…雑渡さんは雑渡さんですよ。
    傷があってもなくても、私が好きな人は今の雑渡さんです。」
    その言葉に雑渡は目を見開く。
    頭にかぶってるタオルが、聖母マリアを連想させた。
    子供ながらの答えなのだろうが、今の雑渡には愛しくて堪らない。
    誰かを縛るのも縛られるのも嫌いだったはずだ。
    同情で一緒に居られるのも嫌だったし、親が無理やり結婚させようとしてたのも嫌だった。
    これからの人生は自分だけでいいと覚悟をしてたはずだったのに。
    この14歳の少女に全てを狂わされた。
    思わずいさ子の身体にだきついてしまう。
    いさ子は驚いたが、よしよしと頭を撫でてやる。
    「わかった、降参する。
    私もいさ子ちゃんと結婚したい。」
    「やっと言ってくれましたね?お願いしますね。」
    「うん。」

    「ちなみにさ。」
    「はい?なにか?」
    「もしかしてなんだけど、中なにも着てない?」
    「そうですよ!下着も濡れてたので!」
    そっと離れて肩をぎゅっと掴み
    「あのね、男の人前で下着は脱がないでね。」
    「わ、わかりました…」
    少し眼光が鋭くて驚いて口ごもってしまったいさ子。


    「こんな形で報告してしまって申し訳ないです。」
    雑渡がいさ子の両親に頭を深々下げた。

    「雑渡さんの口から聞けて良かったよ。どうなるか正直不安だったから、二人が決めたことだから私は嬉しいよ。」
    いさ子のお父さんが優しく微笑んで雑渡の肩を叩いた。
    雑渡の父親にはない優しくてなにもかも包んでくれるような笑顔に、雑渡は一瞬見惚れてしまった。

    「雑渡さん夕飯は食べてないの?」
    母親が雑渡にずけずけと聞く。
    「あ、はい。」
    「良かったら一緒に食べていかない?」
    「え?」
    「そうしましょうよ。私の母ご飯は美味しいですよ。」
    ニコニコと隣で笑ういさ子を見て、少しきが引けてたが、その言葉を受け止めて「では頂きます。」と答えた。
    今日はきっと更に楽しい夕飯時間になるだろう。
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