落涙したその後はポタリと、急に水分が上から一粒落ちてきた。それは、読んでいた紙面にじわりと染み込み、書かれた文字を滲ませていく。
往生堂の一室、次の講義で使う資料をテーブルに広げ、椅子に座って確認と整理を行っていた鍾離は顔を上げた。
はて、雨漏りだろうか。今日は晴れていた筈だが、通り雨でも降ってきたのかもしれない。そう考えつつ首を傾げていると、驚いた顔の胡桃と目が合った。胡桃も雨漏りにやられたのだろうか?
「…しょ、鍾離さんどうしたの?」
「?…どうかしたのか」
「いや、どうかしたのは鍾離さんの方だよ?それ、気付いてないの?」
それ。と、胡桃に指で指摘されて、指された場所に手で触れる。揃えた指で横に擦ると、水分が手套の上をつるりと滑っていった。
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