誰に似たのかとある日の夕方。
「ブラッド! チビがいねえ」
「は?」
出迎えたネロの第一声に、任務から戻ってきたブラッドリーは眉間にシワを寄せた。
「その辺に居るんじゃねえか」
「気配が辿れないんだ」
「……」
即座にブラッドリーの周りの空気が張り詰める。
精霊達がピリついているのがネロにも伝わった。
「居ねえな」
「ちょっと目を離した隙に……悪い、俺がちゃんと見てなかったから」
「とにかく、探すのが先だ」
《アドノポテンスム》
ブラッドリーは箒の上に立ち、そのまま上空へと浮き上がる。まだ幼いとはいえ魔法使いだ。更にブラッドリーとネロの子だと知れたら狙われる可能性は大いにある。だからこそ人目につかない北と東の国境を隔てる山の麓に家を建てたのだが、それでも可能性はゼロではない。
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