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    東の飯屋に情緒をやられました
    ボスはいい男
    呪い屋先生はつよい

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    #ブラネロふぁみりー_思い出アルバム
    展示作品

    ふわっとしたお話。色々適当。
    厄災討伐後の平和な日常世界線。
    一人息子が居なくなって焦る二人。探し出した先に居たのは……
    とある日の家族の1日。

    ##ブラネロ

    誰に似たのかとある日の夕方。

    「ブラッド! チビがいねえ」
    「は?」
    出迎えたネロの第一声に、任務から戻ってきたブラッドリーは眉間にシワを寄せた。
    「その辺に居るんじゃねえか」
    「気配が辿れないんだ」
    「……」
    即座にブラッドリーの周りの空気が張り詰める。
    精霊達がピリついているのがネロにも伝わった。
    「居ねえな」
    「ちょっと目を離した隙に……悪い、俺がちゃんと見てなかったから」
    「とにかく、探すのが先だ」
    《アドノポテンスム》
    ブラッドリーは箒の上に立ち、そのまま上空へと浮き上がる。まだ幼いとはいえ魔法使いだ。更にブラッドリーとネロの子だと知れたら狙われる可能性は大いにある。だからこそ人目につかない北と東の国境を隔てる山の麓に家を建てたのだが、それでも可能性はゼロではない。
    「面倒なことになってないといいがな……」
    探知の魔法は本来ネロの方が得意なのだが、チビの探索にかけてはどうも上手くいかないらしい。もしかすると、チビが一枚上手なのかもしれない。誰に似たのか元気が良すぎるのだ。
    「……」
    精霊に命じて所在を探させる。少しして、ようやくそれらしき反応を掴んだ。
    「ネロ」
    「っ、居たか?」
    「てめえは飯作って待ってろ」
    「俺も行く」
    「……ブチ切れんじゃねえぞ」
    「約束はできねえな」
    言いながらネロも即座に箒を取り出し隣に並ぶ。あまり良いとは言えない顔色にブラッドリーは舌打ちする。
    「頼むぜ、相棒」
    「分かってる」

    ***

    ブラッドリーが向かった先を見て、ネロは驚愕した。
    「え、なんで」
    「知るかよ」
    ほらとっとと行くぞ、とネロの首根っこを掴んで見慣れた景色をずんずんと歩く。本来ここには強い結界があり誰も入れやしないはずなのだが、恐らく『呼ばれて』いる。

    「ったくなんだってこんな所に……」
    「こんな所で悪かったな」
    ブラッドリーのボヤきに被せるように、不機嫌な声が飛んできた。ネロは思わず肩をすくめる。
    「どうやら君たちは親としての自覚が足りないようだ」
    眉間に深くシワを刻んだ、全身黒ずくめの陰気な男は眼鏡越しに呆れた視線をネロに投げかけた。
    「ごめんよ、先生」
    「このくらい言ってもバチは当たらないだろう」
    久しぶりの再会がこんな形になろうとはね、とファウストは苦笑する。
    「チビはどうしてる」
    「ぐっすり眠ってるよ。軽く擦り傷があったが治癒魔法を施してあるから心配ない」

    どうやら嵐の谷へ向かう途中、森の中で子猫を抱いて傷だらけになっていた所をファウストが発見し保護したようだ。

    「本当に助かったよ。ありがとう」
    「それにしても、彼は中々の切れ者だね」
    保護するのに手こずったと聞いて、ネロはため息混じりに呟いた。
    「悪知恵だけは上手いんだ」
    「誰に似たんだか」
    二人の視線がブラッドリーに注がれる。
    「うるせえな」
    息子が自分に似るのは素直に喜ばしいのだが、今はあまり良い意味ではない事に複雑な心境だ。
    「とはいえ野生の狼に狙われた子猫を助けるなんて、中々出来やしないよ」
    「へえ、立派なじゃねえか」
    「大事な仲間だって離さなかったよ」
    「……」
    ネロとブラッドリーは思わず顔を見合わせた。

    ***

    ファウストに礼を言って、三人と一匹は帰路へと着いた。ぐっすり寝こけている息子をベッドへと寝かせ、懐いている様子の子猫へも守護の魔法をかけてそばにいさせる事にした。

    「すっかり遅くなっちまったな」
    「全くだ」
    「急いで飯作るよ」
    「ネロ」
    寝室を出てキッチンに立つネロの名を呼ぶと同時に後ろから抱きしめる。肩口に頭を埋められ、ネロはその温もりを噛み締めた。
    「……ありがとう、ブラッド」
    「おう」
    「任務もお疲れ様」
    「おう」
    「……おかえり」
    「ただいま」
    やっぱダメだ、と声が聞こえて何事かと思えば首筋へ温かい感触が伝わる。
    「なっ……!おい」
    「腹も減ったがてめえが先だ」
    「なんだそれ」
    チビが起きるぞ、と制しても構わないさと強引に抱きしめる力が強まった。こういう時は言っても聞かない事をネロはよく知っている。
    「……ったく、しょうがねえな」
    それじゃあ、とネロが身を委ねかけた時。
    「はらへった!めし!」
    勢いよくドアが開くと同時に聞こえたその声に、二人で固まった後に吹き出した。
    「よお、チビ。元気だな」
    「ブラッド、おかえり!」
    「おう」
    どうやら今夜は長くなりそうだ。ネロは笑ってエプロンのリボンを締め直したのだった。
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    DONEエアスケブみっつめ。
    いただいたお題は「ネロの初期設定傷ネタで、キスするブラネロ」
    リクエストありがとうございました!
    「なあ。ちょっと後で部屋来てくんねえ?」
     ネロにそう言われたのは夕食後のことだった。
     珍しいこともあるもんだ。というのも、ブラッドリーとネロは今でこそ度々晩酌を共にすることはあれど、誘いをかけるのはいつもブラッドリーの方で、こんな風にネロに直接的に呼ばれることは殆ど無かったからだ。
     適当に風呂を済ませてから、グラスと酒瓶を持って四階へと向かう。見慣れた扉を叩くと、しばらくして内側から開け放たれる音がした。
    「あれ、つまみ作ってたんじゃねえのか?」
     普段ならば、扉を開いた時点でネロが用意したつまみの良い匂いが漂ってくるはずだ。しかし、今日はその気配は無い。
     もしかすると、晩酌の誘いではなかったんだろうか。よく考えると、部屋に来いとは言われたものの、それ以上のことは何も聞いていない。
     ネロはブラッドリーが手に持ったグラスに目を向けると、ぱちりとひとつ瞬きをした。
    「ああ、悪い。ちょっと相談っていうか……でも、腹減ってんなら簡単なもので良けりゃ先に作るよ」
    「馬鹿、折角来てやったんだから先に話せよ」
     つかつかと歩を進め、部屋の寝台へと腰を下ろす。椅子を増やせとブラッドリーは再三 2351

    salmon_0724

    MAIKING2023.3.5 日陰者の太陽へ2 展示作品ですがパソコンが水没したので途中までです。本当にすみません……。データサルベージして書き終えたら別途アフタータグなどで投稿します。
    ※盗賊団についての独自設定、オリキャラ有
    ※数百年後にブラネロになるブラッドリーと子ネロの話
    死にかけの子ネロをまだ若いブラッドリーが拾う話 雪に足をとられてつんのめるように転んだネロには、もう立ち上がる気力さえ残っていなかった。
     突き刺すような吹雪でぼろぼろになり、白く覆われた地面に叩きつけられたはずの体は、寒さで麻痺して痛みさえ感じない。
     ぴくりとも動かす気力のおきない自分の指先に、雪が降り積もっていく。
     その様子をぼんやり見つめながら、このまま死ぬんだろうな、と思った。
     他の感想は特にない。
     すっかり疲れ果てていたので、もう全部がどうでもよかった。
     誰が家族なのかもよくわからないまま出て行った生家にも、殴られたり逃げたりしながら掏りや窃盗で食いつないだ日々にも、大した感慨はない。
     最後にはとっ捕まって場末の食堂で働かされていたが、足りない材料を地下室に取りに行かされている間に食堂どころか村ごと燃やし尽くされていた。
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    時緒🍴自家通販実施中

    TRAININGお題:「花火」「熱帯夜」「一途」
    ムルたちが花火を楽しむ横で、賢者の未来について語ろうとするブラッドリーとそれを止めるネロのお話です。
    優しいあなた 夏の夜、魔法舎に大きな花火が上がった。俺はそれを偶然厨房の窓から見ていて、相変わらずよくやるものだと、寸胴鍋を洗う手を止めてため息をついた。食堂から歓声が聞こえたから、多分そこにあのきらきらと消えてゆく炎を作った者(きっとムルだ)と賢者や、素直な西と南の魔法使いたちがいるのだろう。
     俺はそんなことを考えて、汗を拭いながらまた洗い物に戻った。魔法をかければ一瞬の出来事なのだが、そうはしたくないのが料理人として出来てしまったルーティーンというものだ。東の国では人間として振る舞っていたから、その癖が抜けないのもある。
     しかし暑い。北の国とも、東の国とも違う中央の暑さは体力を奪い、俺は鍋を洗い終える頃には汗だくになっていた。賢者がいた世界では、これを熱帯夜というのだという。賢者がいた世界に四季があるのは中央の国と一緒だが、涼しい顔をしたあの人は、ニホンよりずっと楽ですよとどこか訳知り顔で俺に告げたのだった。——しかし暑い。賢者がいた世界ではこの暑さは程度が知れているのかもしれないが、北の国生まれの俺には酷だった。夕食どきに汲んできた井戸水もぬるくなっているし、これのどこが楽なんだろう。信じられない。
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