「ねーねー。千空ちゃん、千空ちゃん」
「何だぁ?メンタリスト。んな所で何やってんだ。おめーには仕事振ってただろ」
声がした方を振り向けば、何時もはヘラヘラと笑うこの男が何故か満面の笑みでこちらを覗き込んでくる。
「そう!千空ちゃんが俺にしか出来ないってヤヤコイ事頼んできたじゃない!これがまた、ゴイスー大変なのよ!」
これでもかと、オーバーリアクションで身振り手振りを披露しながら話を続けようとするのを遮るように声を被せる。
「ぁ゙〜。めんどくせー御託はいーから、用件だけ言え、メンタリスト」
「それよ、それ!千空ちゃん、俺の名前知らないのかって位名前呼んでくれないじゃない?俺のモチベの為に呼んで欲しいの!」
ゲンからのまさかな要望にこの上なく面倒臭そうに小指を耳に入れながら視線を合わせれば、さぁ来いとばかりに顔面を近付けてくる。
「呼んでんだろ、たまに」
「今!今、呼んで欲しいのよ!」
グイグイと顔を近付けてくるゲンの襟元を掴み、グイッと自分の方に近寄せれば唇を耳元に息がかかるほどの近さで囁く。
「何時もありがとな、ゲン。さっさと、終わらせて帰って来い」
終わったとばかりに、掴んでいた襟元を離し軽く押せば珍しく耳まで顔を真っ赤にしたメンタリストが、口元をその独特な長い袖で隠しながら後退りする。
「そ・・・れは、ドイヒーじゃない?」
「満足したか、メンタリスト?」
ニヤリと笑い、作業に戻ろうと背を向ければベシリと頭を叩かれた。