奉納舞の話 本来それは実弘の役目ではなかった。
だが今年、本来役目を担っている父が腰を痛め、できなくなったため代役を、という連絡があった。特に断る理由もなかったため急遽実弘が役目を引き受けることになり、急ぎ実家に戻って来ていた。
必要なものは衣装と供える日本刀とそれと揃いになっている舞うための刀。一応まだ体は覚えているはずだが、舞うのは三年ぶりである。
それまでは父と共に舞っていたため、ひとりでその場に立つのは全くの初めてでもある。
職場にどうにか都合をつけてもらい、荷物を車に入れて神社へと向かう。今年は職場近くの神社だった。
本番は明日だが、着替えの場所などを確認するために社務所へと顔を出すと、宮司が案内をしてくれた。
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