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    soseki1_1

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    天眼を上手くコントロールできないホワイト🔮と、甘やかす驚異の部屋🤕、巻き込まれるモグラ🧲
    (驚異ホワ/傭占+探)

    「帰っていい?」
    「練習をすると言ったろう。聞こえていなかったのか」
    「聞こえてるから言ってるんだけど」
    「そう邪険にするな。素直で無垢。いい子だ」
     ナワーブは扉を人ひとり分開けると、体で隠していた子供を部屋の中へと導き入れた。モグラはそこで初めて、噂の天眼の少年の全貌を見ることとなった。
     白い髪に白い肌。華美なトレーを持っている手の爪先まで白い。血が通うのに慣れていない肌だ。本来は不憫を示すはずの白皙は、けれども着飾られることによって儚い美しさなのだと魅せられている。あの肌に掛かる服を織りなすどれか一枚とったとして、どれだけの金が費やされていることだろう。髪飾りひとつ取ったとしても財産と言って違いない。しかしどれもこれもが、瞳には及ばないと思わされる。白く薄透明な瞳。無垢でありながら全てを映す眼は、言いようのない不可思議を湛えている。
     全て、あのオークションに参加していなかった人間が二度と見られるはずのなかった姿だ。例のお部屋に囲っている珠の君。実際はどの部屋にも飾らず手元に置いて愛でているようだ。気に入っているどころの話ではないなど、ナワーブの眼差しひとつとっても明らかだった。
     少年はナワーブに誘われるままモグラへと歩み寄る。少年が持っていたはずのトレーはナワーブが片手に取り上げていた。ナワーブはもう片方の手で腰を抱き、その細い体を支えるようにしている。過保護。呆れた風にそう思いながら、モグラは今一度少年を見た。
     目を合わせた。
    「ノートン、」
     キャンベル。まで、出かかったのだろうとは、その口の動きで察せられた。モグラ……ノートンが目を見開いた頃には、その唇はナワーブによって塞がれていた。
     口づけている。
     なんで?
    「間違えました」
    「そうだな」
    「いやいやいやいや」
     ノートンは腰を上げる。身に抱いた吃驚を思えばもっと早く擡げられても可笑しくなかった。起立によって揺れる椅子の音を聞いて、ナワーブは目線だけノートンを見た。少年の顎を擡げた指先で、今はその白い顎の下や頬まで擽るように撫でている。その光景に、ノートンはますます眉を顰めた。眩暈がするようだった。
    「悪いな。まだ対人会話に慣れていない。人目には出せない」
    「人目云々の半分くらいは君のせい」
    「こうするとお利口になる」
    「君の趣味だろ」
    「まあそれもある」
     事もなげに言ってのけながら、ナワーブの目線は未だノートンに無かった。睫毛を僅かに伏せ、金に青が混じる瞳をただただ少年へと注いでいる。穏やかだが熱のある眼差しだ。指は頬から耳へと向かい、そのまま頭を撫でて、後ろ髪へと至った。項を覆い包むように自身に抱き寄せれば、少年は逆らうことなくナワーブの腕の中へと納まる。肩へ頭を傾け、うっとりと頬を寄せて目を瞑る。これも趣味で、一連の流れなのだろうか? ノートンは頭の痛くなる予想を振り払いたかった。出来やしなかった。
    「今回はまあ……まだ名前くらいだ。最初は俺の母親の名前まで零し始めてな。大変だった」
    「それでキス?」
    「ああ」
    「黙らせるために?」
    「ああ」
    「馬鹿じゃないのか」
    「否定はしない」ナワーブは少しだけノートンに視線をやり、微かに微笑む。新兵時代に良く見た、悪戯好きの悪ガキの笑みだ「馬鹿になる部類のそれだ。解るだろ」
     笑みは直ぐに引っ込められる。ナワーブは腕の中にある少年の頭をもう一度撫でる。耳を擽るようにすれば、微睡むように目を瞑っていた子供が瞼を擡げて、今一度美しくも恐ろしい瞳を晒す。子供は示し合わせたように顔を擡げ、ナワーブへとその目をやった。素直に眼差しを絡めた彼へ、ナワーブは微笑む。ノートンの知る限り、久しく見ていない顔だった。
    「ホワイト。言ったろう? まずは相手から名乗られるのを待ちなさい」
    「うん」
    「なら、人前では……俺のことはなんと?」
     そのとき今一度、ノートンは予感をつぶさに感じ取った。ナワーブの指先が、無遠慮に真実を告げた唇をなぞっている。この光景からして予感は明らかだった。やっぱり今すぐ席を立つべきだ。この馬鹿とまさしく天眼を持っていた子供を押しのけてでも、この部屋を出るべきである。
     けれどもやはり、それらを行動に移すことは出来なかった。ノートンは根が真面目で、存外一途な男だった。だから腐った縁をここまで切れずにいたのだから。
    「旦那さま」
     馬鹿じゃないのか。
     眉間を抑える。丸眼鏡を掛け直す。眩暈を起こしかけた視界に溜息しか出なかった。
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    soseki1_1

    PROGRESS大佐🤕と喧嘩して家出した🔮を匿う副官🧲2
    /現パロ大占傭占
    「ああ、いるよ」
     携帯電話から届く声が誰なのかは判別がつかない。ただキャンベルさんの口ぶりと目線で彼だと解った。彼は眇めたような流し目で僕を見た。
    「僕の家に居る」
     裏切られたと思った。立ち尽くした足が後ろにたたらを踏んで、この家から逃げようとする。だけど裏切られたという衝撃が体の動きを固くしていた。そのうちに、彼は言った。
    「なんで? あげないよ。送り届けてなんてやらない」
     踵を返して走り出そうとした足が止まる。息を止めたままキャンベルさんを見ると、彼はもう僕の方を見てはいなかった。ただ、唇を歪めて厭に微笑んでいた。
    「飽きたんだろ?貰ってあげるよ。常々美味しいんだって聞いてたし」
     怒鳴られてる。とは、漏れ出る音で解った。そういう空気の振動があった。それに構うことなく、キャンベルさんは鬱陶しそうに電話を耳から離すと、液晶に指を滑らせて電話を切った。四方形のそれをソファに投げて息を吐く。僕の、何とも言い難い視線に気付いたのだろう。彼はもう一度目線だけで僕を見た。それが問い掛けの代わりの視線だと解ったから、逃げ出すより前に口を開いた。
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    soseki1_1

    PROGRESS求愛してる白鷹とそれに気づかない夜行梟/鷹梟/傭占
     そもそもの始まりは食事からだった。と、夜行梟は呟き始める。狩りのやり方を教えた頃から、やたらと獲物を取ってきたがると思っていたのだ。覚えたての狩りが楽しいのだろうと微笑ましく思えていたのは一、二年ほどで、そのうちどこからか料理を覚えて振舞うようになった。あれはそういうことだったのだ。給餌だ。求愛行動のひとつだったという訳だ。夜行梟はその真意に全く気付かず、私の料理美味しくなかったかな、悪いことしたな、なんてひとり反省していた。
     夜行梟の誕生日に三段の素晴らしいケーキが出された辺りから、つまりは今年のハロウィーンを終えた辺りから、いとし子は本領を発揮し始めた。まず、夜行梟の寝台に潜り込んだ。今思えばこのときに気付いてもよかった。よかったのに、夜行梟は布団の隙間を縫うように身を潜らせたいとし子に「怖い夢をみたのかい?」なんて昔と同じように声を掛けた。もうとっくに子供じゃなくなっていた白鷹は、このときは未だ我慢していた。「そんなものだ」とだけ言って隣に潜り込み、足を絡ませて寝た。今思い返すと完全に求愛だった。鷹族の習性だ。鳥型の鷹は空中で足を絡め合い、互いの愛情を深めるのだ。鷹族の遠い親戚からきちんと聞き及んだ話だった。のに、思い当たらなかった。まだ甘えん坊さんだな、なんて嬉しく思っていた。
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