たまには雛でも飼うか。
夜行梟が鷹族の子供を引き取ったのは、そういう気まぐれからだった。
人間の手により滅ぼされた鷹族の生き残りだった。血塗れの母親が子供を抱き抱えて罪の森に駆け込んできたのだ。子供を託して母親は死に、鷹族の里は焼け落ちたと知らせが入り、あとには子供ひとりが遺された。この痛ましい幼子をどうするかで罪の森の大人たちは悩んだ。皆誰もがわが身が可愛い。勝手の知らない、それも鷹の獣人の子を養育するなど進んで買って出る者はいなかった。ので、罪の森の守り人たる夜行梟が気まぐれを起こす羽目になった。「どいつもこいつも成っていないね」と悪態を吐き、子供を抱き上げた「こんなに美しいお前を放っておくなんて」そう言って微笑みかけた。白い前髪を鼻頭で探り、褐色の肌を持つ額に唇を添わせて祝福のキスをした。
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