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    soseki1_1

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    教祖赤服🤕がチビ🔮を拾う話
    (赤月傭占/なれそめ途中まで)

     暁を終える直前。男は子供を拾い帰還した。
     男は、赤服の人物と呼ばれている。ここいら一帯では知らぬ者など在りはしない名だ。旅人が街に入れば、まず真っ先に男の名を教えられる。高揚の口ぶりで、時には唾を飛ばしながら、病魔に塗れたこの土地を癒したお方なのだと聞かされる。この土地の人間にとって男は偉大な存在で、教祖と謳われた。しかしこの土地以外の場所では、男を悪だと叫ぶ者もいた。対して、男はそれらを気に留めていなかった。男は人間でなく、死の体現たる存在だ。死への認知など時と共に移りゆくものだ。男はこの死に満ちた地の生命に変容を与えた。呼吸をし、日々を目や感情で感じ得ることで人間と呼ぶのならば、この地の住民は未だ人間だ。病魔に塗れた地にとって、それは救いに他ならなかっただけのこと。そして往々のものにとって死とは恐るべきもので、それは信仰と繋がるに容易かっただけのこと。
     男は讃えられ、謳われ、大いなる居館を設けられ、日々を過ごしている。望みはしなかったが、相応しいとは感じ得る館だ。そこに、男が拾い物を抱き抱えて帰った。これに、仕える者たちは仰天した。なにせ男が何かを持ち帰るなど、未だ嘗て無かったからだ。赤服の人物に救いを求める者は、自ら彼の元へと訪れる。そして今や、男が何かを望めば誰もが持ち寄る。その為、男が自らの手で選び取り、望み、持ち帰るなど、皆考えもしなかった。
     それは子供だった。薄汚い布を体に引っ掛け、四肢を力無くぶら下げる、年端も行かない人間であった。誰もが眉を顰めるようなその子供を、男は両手で抱き抱えていた。そして言った。「我が花嫁だ」と。
     男は子供を館の最上階、自室へと持ち帰った。騒ぎ出す民を振り返ることなく、呼び止める声に振り返ることもない。その目は腕の中の子供ばかりに注がれていた。
     子供を自身の寝台に横たわらせると、男はそれから数日ほど、殆どの者を自室に近づけさせなくなった。男の側近二人以外は扉にすら近付かせず、中に入るなど誰ひとり許されなかった。聞けば、「毒を抜かなければならない」とだけ答える。それ以上は、誰も知らなかった。あの日までは。


     
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    PROGRESS大佐🤕と喧嘩して家出した🔮を匿う副官🧲2
    /現パロ大占傭占
    「ああ、いるよ」
     携帯電話から届く声が誰なのかは判別がつかない。ただキャンベルさんの口ぶりと目線で彼だと解った。彼は眇めたような流し目で僕を見た。
    「僕の家に居る」
     裏切られたと思った。立ち尽くした足が後ろにたたらを踏んで、この家から逃げようとする。だけど裏切られたという衝撃が体の動きを固くしていた。そのうちに、彼は言った。
    「なんで? あげないよ。送り届けてなんてやらない」
     踵を返して走り出そうとした足が止まる。息を止めたままキャンベルさんを見ると、彼はもう僕の方を見てはいなかった。ただ、唇を歪めて厭に微笑んでいた。
    「飽きたんだろ?貰ってあげるよ。常々美味しいんだって聞いてたし」
     怒鳴られてる。とは、漏れ出る音で解った。そういう空気の振動があった。それに構うことなく、キャンベルさんは鬱陶しそうに電話を耳から離すと、液晶に指を滑らせて電話を切った。四方形のそれをソファに投げて息を吐く。僕の、何とも言い難い視線に気付いたのだろう。彼はもう一度目線だけで僕を見た。それが問い掛けの代わりの視線だと解ったから、逃げ出すより前に口を開いた。
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    soseki1_1

    PROGRESS求愛してる白鷹とそれに気づかない夜行梟/鷹梟/傭占
     そもそもの始まりは食事からだった。と、夜行梟は呟き始める。狩りのやり方を教えた頃から、やたらと獲物を取ってきたがると思っていたのだ。覚えたての狩りが楽しいのだろうと微笑ましく思えていたのは一、二年ほどで、そのうちどこからか料理を覚えて振舞うようになった。あれはそういうことだったのだ。給餌だ。求愛行動のひとつだったという訳だ。夜行梟はその真意に全く気付かず、私の料理美味しくなかったかな、悪いことしたな、なんてひとり反省していた。
     夜行梟の誕生日に三段の素晴らしいケーキが出された辺りから、つまりは今年のハロウィーンを終えた辺りから、いとし子は本領を発揮し始めた。まず、夜行梟の寝台に潜り込んだ。今思えばこのときに気付いてもよかった。よかったのに、夜行梟は布団の隙間を縫うように身を潜らせたいとし子に「怖い夢をみたのかい?」なんて昔と同じように声を掛けた。もうとっくに子供じゃなくなっていた白鷹は、このときは未だ我慢していた。「そんなものだ」とだけ言って隣に潜り込み、足を絡ませて寝た。今思い返すと完全に求愛だった。鷹族の習性だ。鳥型の鷹は空中で足を絡め合い、互いの愛情を深めるのだ。鷹族の遠い親戚からきちんと聞き及んだ話だった。のに、思い当たらなかった。まだ甘えん坊さんだな、なんて嬉しく思っていた。
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