Recent Search
    Create an account to bookmark works.
    Sign Up, Sign In

    soseki1_1

    @soseki1_1の進捗置き場 センシティブもある

    ☆quiet follow Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 93

    soseki1_1

    ☆quiet follow

    教祖赤服🤕がチビ🔮を拾う話
    (赤月傭占/なれそめ途中まで)

     暁を終える直前。男は子供を拾い帰還した。
     男は、赤服の人物と呼ばれている。ここいら一帯では知らぬ者など在りはしない名だ。旅人が街に入れば、まず真っ先に男の名を教えられる。高揚の口ぶりで、時には唾を飛ばしながら、病魔に塗れたこの土地を癒したお方なのだと聞かされる。この土地の人間にとって男は偉大な存在で、教祖と謳われた。しかしこの土地以外の場所では、男を悪だと叫ぶ者もいた。対して、男はそれらを気に留めていなかった。男は人間でなく、死の体現たる存在だ。死への認知など時と共に移りゆくものだ。男はこの死に満ちた地の生命に変容を与えた。呼吸をし、日々を目や感情で感じ得ることで人間と呼ぶのならば、この地の住民は未だ人間だ。病魔に塗れた地にとって、それは救いに他ならなかっただけのこと。そして往々のものにとって死とは恐るべきもので、それは信仰と繋がるに容易かっただけのこと。
     男は讃えられ、謳われ、大いなる居館を設けられ、日々を過ごしている。望みはしなかったが、相応しいとは感じ得る館だ。そこに、男が拾い物を抱き抱えて帰った。これに、仕える者たちは仰天した。なにせ男が何かを持ち帰るなど、未だ嘗て無かったからだ。赤服の人物に救いを求める者は、自ら彼の元へと訪れる。そして今や、男が何かを望めば誰もが持ち寄る。その為、男が自らの手で選び取り、望み、持ち帰るなど、皆考えもしなかった。
     それは子供だった。薄汚い布を体に引っ掛け、四肢を力無くぶら下げる、年端も行かない人間であった。誰もが眉を顰めるようなその子供を、男は両手で抱き抱えていた。そして言った。「我が花嫁だ」と。
     男は子供を館の最上階、自室へと持ち帰った。騒ぎ出す民を振り返ることなく、呼び止める声に振り返ることもない。その目は腕の中の子供ばかりに注がれていた。
     子供を自身の寝台に横たわらせると、男はそれから数日ほど、殆どの者を自室に近づけさせなくなった。男の側近二人以外は扉にすら近付かせず、中に入るなど誰ひとり許されなかった。聞けば、「毒を抜かなければならない」とだけ答える。それ以上は、誰も知らなかった。あの日までは。


     
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    💖💖💖💖👍👍🙏🙏☺💴🙏😭🙏💕🙏
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    soseki1_1

    PROGRESS求愛してる白鷹とそれに気づかない夜行梟/鷹梟/傭占
     そもそもの始まりは食事からだった。と、夜行梟は呟き始める。狩りのやり方を教えた頃から、やたらと獲物を取ってきたがると思っていたのだ。覚えたての狩りが楽しいのだろうと微笑ましく思えていたのは一、二年ほどで、そのうちどこからか料理を覚えて振舞うようになった。あれはそういうことだったのだ。給餌だ。求愛行動のひとつだったという訳だ。夜行梟はその真意に全く気付かず、私の料理美味しくなかったかな、悪いことしたな、なんてひとり反省していた。
     夜行梟の誕生日に三段の素晴らしいケーキが出された辺りから、つまりは今年のハロウィーンを終えた辺りから、いとし子は本領を発揮し始めた。まず、夜行梟の寝台に潜り込んだ。今思えばこのときに気付いてもよかった。よかったのに、夜行梟は布団の隙間を縫うように身を潜らせたいとし子に「怖い夢をみたのかい?」なんて昔と同じように声を掛けた。もうとっくに子供じゃなくなっていた白鷹は、このときは未だ我慢していた。「そんなものだ」とだけ言って隣に潜り込み、足を絡ませて寝た。今思い返すと完全に求愛だった。鷹族の習性だ。鳥型の鷹は空中で足を絡め合い、互いの愛情を深めるのだ。鷹族の遠い親戚からきちんと聞き及んだ話だった。のに、思い当たらなかった。まだ甘えん坊さんだな、なんて嬉しく思っていた。
    877

    soseki1_1

    DOODLEナワーブ🤕と喧嘩して家出したイライ🔮を匿うノートン🧲/現パロ大占傭占
     火種って簡単に点くんだなって思った。鼻の先にある、灰色の間からちらちら覗く赤色は綺麗で、心臓みたいだなんて見たことのないものの想像をした。ただ咥えてるだけなのに口の中に煙が溜まるのが不思議だった。吐き出してばかりいたそれを思い切って吸い込んだとき、喉が焼けるような不快感に襲われて咳き込んだ。そこからはもうてんで駄目で、ただ口内に煙を溜めておくだけで僕は咳をするようになった。向いてない。明らかに分かる事実が悔しくて、認めたくなくて、僕は咳をしながら煙草をふかし続けた。
     ひたすら歩いて歩いて歩いた先にあった見慣れたコンビニでそれは買えた。ライターだって簡単に買えた。レジの隣に置いてあった。「煙草を」と言った僕に気怠げな店員は「何番ですかぁ」と草臥れた問いかけをして、僕は、淀み無く番号を言った。彼がたった一度だけ僕の前で言った煙草の銘柄を僕は馬鹿みたいに覚えていて、彼が言わなかった番号まで調べて覚えていた。言うつもりはなかったのに、その番号が口からついて出た。悔しかった。その番号以外知ってるものなんてなくて、店員はスムーズに立ち並んでる箱達からたったひとつを取り出していて、僕は撤回する機会を失った。
    1556

    recommended works