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    soseki1_1

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    朦朧とした夢を見にいくノワ🔮
    (大ノワ+DM/傭占+写)

    「?」
     ドアノブがやけに冷たかった。まるで冬みたいな冷たさだ。捻って押し開けると、薄暗がりの室内が静かに目に入ってくる。カーテン越しに差し込む日差しが柔らかく届いていて、それだけなら暖かなのに、物がないものだからどうしても寂しそうに映る部屋だ。持ってきた小さな箒を手に敷居を跨ぐ。机の方に行き、在りもしない埃を掃いて取ろうとして……気付いた。机上が見えない。インク壺とペンが置かれている無機質な机上が。
     なんで?
     首を傾げようとして、出来なかった。さっきは机上ではなく引き出しが見えていたのに、今は床が見えた。可笑しい、と気づいたとき、手遅れだと気づいた。ドアオブは正しく今の季節の冷たさだった。キッチンもきっとそこまで熱くなかった。熱いのは僕だ。体中が熱い。節々に至るまで、痛みを発するくらいに熱くなっている。それから重い。指先ひとつ伸ばすだけで苦労する。
     こんなことには慣れていたので立ち上がれた。真っすぐ立とうとは思わない。どうせふらふら揺れて横か前か後ろかに倒れる。手を伸ばして指の腹で壁を探して、触れたとたんに全身を押し付ける。そうして倒れ込むのを堪えた。足と膝を引きずって部屋を出る。この部屋で倒れるのはまずい。駄目な部屋だ。自分の部屋に行かないと。自分の部屋。どこだったっけ。
     一度締めた扉を掻き引くように開けて外に出る。床についた頬が毛の長い絨毯に撫でられて心地よかった。瞼を瞑りたくなるのを堪えて、腕で押しのけて起き上がる。もう前も横もわからなくって、宙に体を置いておけそうになかったので、壁に肩を押し付けて歩く。階段の下の部屋。あそこにならタオルも寝具もベッドもある。早くいかないと。隠れないと。怒られる。
    「サフィール」
     見つかった。
    「にいさん」
     兄さん。兄さんは怒らないけど、兄さんに見つかるのが一番いけない。役立たずだと思われる、かも。役立たずなんかじゃない。薬なんかに負けない。何を飲んでも熱なんか出さない。出してもどうにかできる。直ぐに治る。貴方の弟はちゃんとできるから、だから
    「にいさん?」
     兄さんだろうか? 不思議に思った。あの人は僕を、サフィールって呼ばない。
    「サフィール」
     視界がまた床になる。頬をもう一度柔らかな絨毯が撫でる。不思議にとらわれて体に回していた意識がなくなったからだ。僕を呼ぶ声が聞こえる。ずっと昔になくしたのに忘れられなかった名前を呼んでくれてる。
     誰だろう
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    soseki1_1

    PROGRESS求愛してる白鷹とそれに気づかない夜行梟/鷹梟/傭占
     そもそもの始まりは食事からだった。と、夜行梟は呟き始める。狩りのやり方を教えた頃から、やたらと獲物を取ってきたがると思っていたのだ。覚えたての狩りが楽しいのだろうと微笑ましく思えていたのは一、二年ほどで、そのうちどこからか料理を覚えて振舞うようになった。あれはそういうことだったのだ。給餌だ。求愛行動のひとつだったという訳だ。夜行梟はその真意に全く気付かず、私の料理美味しくなかったかな、悪いことしたな、なんてひとり反省していた。
     夜行梟の誕生日に三段の素晴らしいケーキが出された辺りから、つまりは今年のハロウィーンを終えた辺りから、いとし子は本領を発揮し始めた。まず、夜行梟の寝台に潜り込んだ。今思えばこのときに気付いてもよかった。よかったのに、夜行梟は布団の隙間を縫うように身を潜らせたいとし子に「怖い夢をみたのかい?」なんて昔と同じように声を掛けた。もうとっくに子供じゃなくなっていた白鷹は、このときは未だ我慢していた。「そんなものだ」とだけ言って隣に潜り込み、足を絡ませて寝た。今思い返すと完全に求愛だった。鷹族の習性だ。鳥型の鷹は空中で足を絡め合い、互いの愛情を深めるのだ。鷹族の遠い親戚からきちんと聞き及んだ話だった。のに、思い当たらなかった。まだ甘えん坊さんだな、なんて嬉しく思っていた。
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    soseki1_1

    DOODLEナワーブ🤕と喧嘩して家出したイライ🔮を匿うノートン🧲/現パロ大占傭占
     火種って簡単に点くんだなって思った。鼻の先にある、灰色の間からちらちら覗く赤色は綺麗で、心臓みたいだなんて見たことのないものの想像をした。ただ咥えてるだけなのに口の中に煙が溜まるのが不思議だった。吐き出してばかりいたそれを思い切って吸い込んだとき、喉が焼けるような不快感に襲われて咳き込んだ。そこからはもうてんで駄目で、ただ口内に煙を溜めておくだけで僕は咳をするようになった。向いてない。明らかに分かる事実が悔しくて、認めたくなくて、僕は咳をしながら煙草をふかし続けた。
     ひたすら歩いて歩いて歩いた先にあった見慣れたコンビニでそれは買えた。ライターだって簡単に買えた。レジの隣に置いてあった。「煙草を」と言った僕に気怠げな店員は「何番ですかぁ」と草臥れた問いかけをして、僕は、淀み無く番号を言った。彼がたった一度だけ僕の前で言った煙草の銘柄を僕は馬鹿みたいに覚えていて、彼が言わなかった番号まで調べて覚えていた。言うつもりはなかったのに、その番号が口からついて出た。悔しかった。その番号以外知ってるものなんてなくて、店員はスムーズに立ち並んでる箱達からたったひとつを取り出していて、僕は撤回する機会を失った。
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