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    takanawa33

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    焼肉 悠七

    「君とは違って私はもう年ですからね」と前置きした瞬間、買い物カートにイチゴのパックを放り込んだ七海はフルーツコーナーをあとにして野菜コーナーに直進した。
    「油ものと一緒に食べるサンチュ、おいしいんですよ」そういってきょろきょろと葉物野菜を見渡し、お目当ての緑色の葉っぱを手に取る。「すごい、悠仁くん。ここサンチュがパックに入ってます」と感動した様子で10枚セットのソレをポイポイ三個ほどカートに放りこみ、もやしコーナーで腕を組む。
    「豆つきの方が絶対美味しいですよね」そう言って悠仁の意見など聞く前に選んで放り込む姿は真剣である。本人いわく、すでに焼肉は始まっているらしい。
     そんなこんなでエリンギを買い、キャベツを買い、キムチを購入してやきそばをポンと中に入れ、あれよあれよと海鮮コーナーにきてまた七海は止まった。ちなみにここまで悠仁の発した言葉は『あ、うん』のみである。それはいいとして。
    「お肉もいいけれど案外シーフードもいいものです。殻付きのエビなんて剥くのが最高に面倒なんですけど、でもやっぱりおいしいし、最後に海鮮焼きそばにするなんてのも夢がありますね」
     将来の夢については口を閉ざすのに夕飯ではドリームを見る、それが七海建人。悠仁は再び「あ、うん」と頷きもくもくとカートに海老と殻付きホタテとイカを放り投げる七海を見守っていた。
    「悠仁くんは、なにが食べたいですか」
     ようやく発言権を得たのは精肉コーナーであった。目の前で店員さんがグラム数ぶんのお肉を量ってくれる本格的なお肉屋さん。肉といえば白いパックに並べて陳列されてあるもの、という悠仁のイメージを瓦落瓦落に崩してくれた七海愛用の店。
    「うん、と、やっぱ牛タンは食べたいかな」
    「ですよね、薄いものにネギ塩をくるんで食べるのもいいし厚く切られたものを噛みしめるのもいい……どうしましょう」
     あ、俺にも決定権があるんだ。と思った瞬間「どちらも買いましょう」と頷くので開いた口を閉じる。いいのだ。七海が楽しければ悠仁はそれで。
     そんな七海が購入したのは和牛の切り落としにタン、少し分厚いヒレ肉とステーキハラミ。「牛以外は何か食べますか?」と聞かれたけれど今家で予約時間を目指して炊かれている白米の量を考えたら悠仁は首を振る。
    「ではこのウインナーお願いします」あ、まだ買うんだ。両手でカートを掴んだまま七海の背中を見守る悠仁はせっせと肉を量りに乗せているお姉さんたちを見守りながらどのビールを買うか考えていた。
    「けっこう買いましたね」
     エコバッグ三つ分になった食品。一つを七海が持ち残りを悠仁が。そうだねえと頷きながらポクポクと歩く帰り道、今は夕方の五時。
    「先に風呂入っちゃう?」
    「いえ、油が跳ねるので食べたあとに入りましょう」
    「確かに」
     エントランスにカードをスライドさせコンシェルジュの横を通ってエレベーターに乗り込む。親子連れに軽く会釈をしながら目的階で降りて再びカードをスライド。現れる大理石の玄関にとりあえず買い込んだものを下ろす。
    「私が準備するので悠仁くんはお風呂頼んでいいですか」
    「いいよ、他は?」
    「ビールでも冷やしてて」
     はいはいと買ってきたものを二人で冷蔵庫に突っ込んでから浴室へ。男二人入っても余裕のある浴槽は広くていいのだけど掃除のことを考えるとけっこうな労力である。まあ、本当に疲れている時は外注するし、普段は軽い掃除だけだけど。悠仁はでかい身体と大きな手を活かしてグワシグワシと黒の浴槽を洗い上げる。
     最後にシャワーで泡を流していると、すでにいい香りがするので手を拭いながらキッチンへ顔を出した。
    「ナニソレナニソレ」
     くんくん、鼻を動かしながらアイランドキッチンに立つ七海の後ろに立つ。ついでに首筋もクンクンとすれば「そこは関係ないでしょう」とグイと顔を退けられた。そういう雑な扱いをされるのもまたイイ。たまらん。それはいいとして。
    「ネギソースですよ。刻んだネギにごま油、塩、にんにく、ちょっとだけうま味調味料いれてレンジでチンです」
    「うまそ~、タンにつけるやつ?」
    「その通り」
     黒いエプロンをつけて「楽しみですね」と分かりやすくにやにやしている七海を抱きしめると再びスルリと退けられる。
    「ナムルも作るので、お風呂掃除終わったならホットプレート出してくれます?」
     はーい、と返事してから七海の足元にあるはずのホットプレートを取り出す。棚を開け、出てくる一人三役プレート。たこ焼きもついてるそれの中から焼き肉用を取り出してリビングテーブルにセットする。ついでにサンチュも洗って皿に乗せる。
    「イチゴもなんかソースにでも使うの?」
    「私が食べたかっただけです」
     あ、はい。悠仁はサンチュ同様、イチゴを洗いフルーツボウルに入れてから冷蔵庫に入れておく。その時、六時を告げる炊飯器の音がピーピーとキッチンに響いたので七海はエプロンを外して微笑んだ。
    「ビール、まだ冷えてないかもですね」
     うん、でもそんなのはどうでもいいの。ナナミンが楽しそうならそれで幸せ。経木に包まれた和牛をバットに移し替えながら悠仁は七海と同じように笑った。本日の白米、二人分の五合炊き。
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