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    kuroi_y

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    kuroi_y

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    九ちゃんがサキュバスになっちゃう皆主。
    バリバリの🔞にしようとしてできなくなってしまったもの。
    ヤッてないし、そういう表現もナシ。供養供養。

    #九龍妖魔學園紀
    kowloonDemonAcademy
    #皆主
    allMain

    無題一歩前に踏み出した足が、想像していたよりも深く沈んだ。しまった、と思った時にはもう遅く、上下左右から勢いよく色濃いピンク色のガスが噴き出て身体を包んでいた。
     とっさに前方へ身を転がしてガスを払おうとするが、意思でもあるかのように体に纏わりついて離れない。砂糖と蜂蜜とバニラを混ぜたような、口の中まで甘くなってくる強い匂いにたまらず咳き込んだ。
    「九龍!」
    「クロウ!」
     後ろに続いていた仲間達の悲鳴に近い呼び声が通路に響く。駆け寄ろうとしたのか、足音が聴こえてその方向を睨んだ。
    「来るなッ、退がれ!」
     普段よりも厳しい口調に、少女が一瞬怯んだのが分かる。
     紳士で頼れる先輩でいたかったのに、下手をすると初任務で先輩トレジャーハンターの死体を見せることになるな。我ながら笑えない冗談だ、などと考える余裕があったのはここまでで、全身が熱くなってきて背中に嫌な汗をかき始めた。装備を着込んでいるはずなのに、まるで裸のまま熱風にさらされているようだ。
     とにかく暑くて体も熱い。指や足の先からピリピリと痺れるような痛みが広がり、胴体に達すると身体が大きく震えた。
    「ああああああああァッッ!」
     吠えるような叫び声をあげ、自分を抱き込むように両腕を掴んで内側から込み上げてくるものを堪える。
     いつの間にかガスは晴れていて、何か出てきてはいけないものが殻を破って僕の中から姿を現そうとしている。そんな気がする。
     うまく息ができない。苦しくて涙で視界が滲む。熱くて熱くて、顔にも汗をかいているのが分かる。服がべっとりと体に張り付いて気持ち悪い。嫌だ、こんなもの取り去ってしまいたい。
     それに、何だか腹が空いてきた。ドクドク心臓の音がうるさくて、死ぬかも分からないこんな時に空腹を感じるなんてと頭の中が滅茶苦茶だ。
     もう嫌だ、楽になりたい。助けて、苦しい、食べたい、欲しい、欲しい、欲しい。何が?
     下腹部の広範囲と背中、尻の辺りにチリッと痛みがあって、すぐに弾ける音がして身体が楽になった。
    「なッ……!」
    「え。そん、な。キャァァァァァァッ」
     ひんやりとした空気が肌に気持ちいい。
     背中の羽も自由に動かせる。人間の服はどうしてああも窮屈なのか。
     声が聞こえた方を向くと、人間の女と男がこちらを見ていた。若くて、なんて美味しそうなんだろう。
    「クロウ、服! 服ッ! っていうか羽生えてるし」
     少女の方が顔を真っ赤にして、目元を手で覆ってしまう。かわいいなァ、僕の後輩。
     下唇を舐め、少し視線を横に動かしてから唾液を飲み込んだ。いい匂いがする。あれが美味しいのも知っている。思い浮かべるだけで腰が揺れそうになる。
     ゆっくり立ち上がり二人に向き合うと、男が女の前に出た。
    「アリスッ!」
     一気に距離を詰めて男が握る銃を叩き落とし、その首に腕を絡ませた。
    「甲太郎、好きだよ」
    「ッ!」
     蹴り飛ばされない内にそのまま体重をかけて床に押し倒し、邪魔な布切れを剥ぎ取っていった。
     綿の白いシャツの向こうからたまらない匂いがする。好きで好きで、惹かれて仕方がない香りが。
    「サキュバス? インキュバス? え、これどういう状況なの。男型だとこういう時に襲われるのは私じゃないの」
     上から女の不満げな声が聞こえてくる。けれど、相手にしている場合じゃない。
     目の前のご馳走で頭がいっぱいで、ズボンのボタンを外してファスナーを噛んで下ろすと再び悲鳴が聞こえた。
    「クロウは裸だし、コータロまで! そんな、私どうしたらッ」
    「馬鹿ッ、今の内に戻って報告! 他の奴等に指示を訊け」
    「えええッ! 大丈夫? コータロ死なない?」
    「一回なら、何とかなるだろ」
     靴を脱がせながら、男が胸元の銀のチャームを揺らしているのが見えた。あれは何だか嫌な感じがして触れなかった物だ。
    「分かった。二人で死なないでよ!」
    「早く行けって」
    「甲太郎、さっきからその子ばっかり……こっち見てよ」
     ポーンと最後まで残っていた側の靴を床に放り投げ、唇を尖らせた。獲物が全然こっちを見てくれない。
     僕はこんなに好きなのに。したくて欲しくてたまらないのに。尻尾をゆらゆら揺らして顔を両手で包み、唇に吸い付いた。
    「キャァッ、ラッブラブー!」
    「うるさいッ」
    「甲太郎ってば」
    「お前も何なんだ! この手の罠は何回目だと思ってる」
    「キス」
     黄色い悲鳴と足音が遠ざかっていくのを聞きつつ、目の前の男と額と額をくっ付けた。
    「して」
    「馬鹿野郎」
     可愛くない言葉を吐く唇は少しカサついている。口の端からわざと音を立てて口付けた。
     向こうからしてくれないのが少し寂しい。抱き締めたり、いつもみたいに頭を撫でてくれもしない。僕だけが好きみたいで胸の奥が少し痛んだ。僕だけがシたい、は間違っていないのだろうけど。
     恋仲であるはずの相手の表情を見たくて顔を離そうとすると、急に背に手が回ってきて羽の付け根に触れられた。
     頭から尾まで電気が走るように痺れ、鼻に掛かった変な声が漏れる。
    「覚悟しろ、九龍。念のため持ってきたゴムはあの中だ。着けてやらないからな」
     甲太郎が立てた親指で指した先には、僕が投げ捨てた甲太郎の服や装備が散らばっている。思ったよりも遠くまで投げていたようで、手を伸ばしたくらいでは届かない。
     自分でここまでしておいて、この後を考えたら文字通り腰が引けてしまった。
    「えッ、このまま?」
    「文句あるか」
     利き手を掴まれて下の方へ導かれ、甲に熱いものを感じて脳にジュワッと気持ちのイイものが溢れた気がした。
     目の前の目に、自分でも見た事のない蕩けた目が映っている。
    「無い」
     やっと頭を撫でられて心のどこかでホッとした。



     人の記憶を操る《秘宝》があるらしい。
     協会のイギリス支部在籍のトレジャーハンターからロゼッタ本部に連絡が入った。
     昔、ある地域では「記憶を盗まれた」と話す人間が後を絶たなかったそうだ。記録は最も古いもので約八百年前。
     時の領主が元凶である悪魔を発見、退治に成功して《秘宝》ともども洞窟に封印した。その鍵を子孫が代々継いできたのだが、現当主が年に一度の見回りで訪れたところ、彼には遺跡の入り口に幾重にも掛けられた鎖が緩んでいるように思えた。
     最後に鎖を張り直したのは五十年前。当時父親と取り替えに立ち会った際にもここまで弛みはあっただろうか、と嫌な予感を覚えた。
     すぐに遺跡を知る神父に連絡をとり、儀式を行なって新しく鎖を掛け直した。しかし、今度は半年後にはまた鎖が緩み始めた。
     当主は神父と共に片っ端から記録を漁り《秘宝》の存在を知った。彼らはこれまで封印されているのは悪魔のみと思い込んでいたため、大変焦った。これはもう自分達だけでは手に負えないのではないか。そう考えた二人は遺跡の情報を業界に流す事にした。
     それから何人もの神父が封印を試み、その度に鎖が緩むまでの期間は短くなっていった。最後に封印しようとした神父は新しい鎖ごと見えない何かに弾き飛ばされ、聖具の矛を手に「直に殴ってくれるわ」と物騒な事を口にして弟子達に止められた。
     この気の短い神父が元トレジャーハンターであり、未だにロゼッタ協会と繋がりがあった。すぐにイギリス支部に連絡し、若いトレジャーハンターが派遣された。やって来たのはアリスという小柄な娘で、年は十八。愛らしい見た目の“お嬢さん”だった。
     当主と元の神父は頭を抱えた。応援を呼んだ年配の神父は協会へどのように伝えたのか。この遺跡に封じられた悪魔は、サッキュバスなのだ。
     記録によると、当時記憶を奪われたと訴えたのは若い男女だ。サッキュバスは女性の身体を乗っ取り、夜に男性の寝台前へ現れて誘惑する。食事として吸精し、行為が終わると交わった記憶を消して姿も消す。男女とも朝起きると裸で横たわっており、性経験の無い女性は下腹部の痛みと流血に悲鳴をあげたという。
     自分の記憶には無いが、たしかにする事はしていたはず。これが、記憶を奪われたということだ。
     他のサッキュバスの言い伝えと異なる部分もあり、同じ対処法が有効とも限らない。そんな状況でやって来たのは、非力そうな少女だった。しかも、実績も無い新人だ。
     身体を奪われて少女が新たなサッキュバスになったらどうするのか! 協会支部へ苦情が行き、本部が送り込んできたのが二十半ばの男二人のチームだった。



    …………んだけどね。
    ここから皆守が九ちゃんをひっくり返してあんな事やこんな事、いつもはお願いしても恥ずかしがってやってくれない事とかを繰り広げちゃうはずだったのですが、力尽きました。
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