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    吸いたい

    別垢統合ポイピク

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    吸いたい

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    気力体力が追いついてない感じがして、書きかけのやつです。これは「寮内は姦通禁止だよ!」て言わないタイプの寮長です。

    エーテルチャームきらきらしゃらしゃら、鬱陶しい。保健室に入ってすぐ、エースは目を眇めた。
    「あーこりゃ、やっぱり自然に抜けてくの待つしかないっすわ」
    「どんくらいかかりますかね……」
    「ま、ま、一週間から二週間かな。ほっときゃ治るよ、魔力注ぎ足したりしなければだけど……」
    長身瘦軀、滴るような青い炎を全身にまとわりつかせた先輩が、その身を屈めてベッドを覗き込んでいる。ベッドに腰掛けているのはハーツラビュルのベストを着た、ネイビーの髪に丸い後ろ頭の生徒。彼こそ、エースが呼び出された原因である。
    原因である、が。別にエースとデュースが一緒に居ないから呼び出されたわけではない。当然のことだ。誰かと一緒に居ないと呼び出されるのなんて、エースの部活の先輩のジャミル・バイパーくらいだ。彼は最近、カリム・アルアジームに新しい弟妹が増えたとかで、なんとはなしにずっと疲れている。主人のカリムは出産祝いをどうしようかと楽しげなので、その対比が余計に悲壮感を煽っていた。
    「あの、すんませーん。呼ばれてたトラッポラですけどー」
    まだ何やら話し込んでいる二人に近づきながら声を掛ける。保健室にほかの人影は無く、どうやら保健医も出払っているようだ。
    「ヒッ」
    エースの声に大袈裟に肩をビクつかせた先輩……イデアは、それまでの軽い話し口調からは想像も出来ないほど、すごく小さな声で言った。
    「ア、おおお、お迎え、来たみたいだし、せせっ拙者は帰りますので……」
    「えっ先輩待ってください。僕、うまく説明できません」
    「そんな堂々と言うことかな〜!?」
    「お願いします、エースだって僕の説明よりは分かり易いだろうし」
    「う……ゔぅ…………恨みますぞ……」
    デュースに懇願された先輩は顔中に脂汗をかいて、すごく渋々といった様子で頷く。エースは(この人、なんでデュースには強気なんだろう)と思いつつ、デュースの隣に腰掛けた。そうして近づくと、いっそう眩しい。
    なんというか、異質だった。普段見かけない先輩もそうだが、デュースの気配が、特にそうだった。常とは違って、魔力の輝きがその肌を内から輝かせている。呼び出されたことに関係があるのは明白だろう。
    「あー……その、デュース氏が今日、森の方でフィールドワークだったのは知ってる?」
    しばらく貝みたいに黙っていた先輩が口を開いた。知っている。エースは「はあ」と言った。
    「その、そこで、みっ……妖精にこう、祝福されちゃったんだよね……」
    「……お前、まだ人間?」
    「なっ、失礼な奴だな! ヴァンルージュ先輩とシュラウド先輩が仲裁してくれたから、ちゃんと人間だぞ!」
    胸を張るデュースを、疑わしい気持ちで上下左右じろじろ眺める。確かにいつもより魔力がラグジュアリーだが、白目が無くなったり指が増えたり耳が尖ったりはしていない。外見上は問題なさそう。
    だけど体内はどうだろう。内臓が増減していたとしても確認できない。仕方ないので考えないことにする。
    エースが顔を正面に戻すと、先輩は髪の毛を掴んでオドオドしながら、中断していた説明を再開させた。
    「あ、ええ、そう、リリア氏が下手人ならぬ下手妖精をうんたらして聞き出したところ、ギリ人間に戻れる感じだったんで……近場にいた拙者……古代の魔法にチョトクワシイだった僕にお鉢が回ってきた感じ……。ぐぐ、具体的には今、デュース氏に祝福の中和薬を服用してもらってて」
    「中和薬?」
    「これだ」
    デュースが枕元から小瓶を拾って差し出す。エースは受け取って、そのラベルも何も無い表面を眺めた。蓋がコップになっていて、内側にメモリがついている。爽やかなブルーの液体が少しの粘度をもって揺れる。
    「起きた時と寝る前、一日二回飲まなきゃいけないらしい」
    「の、飲むの忘れると人の範囲から外れちゃうかもだから……。わ、わ、忘れないようにきっ気を付けてもろて」
    「ふーん……」
    介護みたいだな、と思った。
    デュースにかかった祝福がなんなのかは、何となく分かる。多分チャームだ。そうでなくとも、ある一定の魔力がある人間は他者にとって魅力的に感じられる傾向があると、魔法研究の様々な面でも認められている。デュースが眩しく感じるのは、恐らくそういう影響を受けているからだった。これは学園に来て最初のHRで習うので、学園内にもそういう魔力の生徒が居ることは知っている。
    「そそ、そういうワケで……はい……暫くはこう、変な虫とか寄り付くから一人にはしない方が……イイカモヨ〜……っていうだけ……。一応君らんとこの寮長には知らせてあるから、付き添いとして呼ばれたと思ってくれたら……はい……」
    拙者は務めを果たしました故……帰りたいんだが……と蚊の鳴くような声で呟く先輩を横目に、エースはリドルからのDMを思い出す。
    =====================
    寮長:保健室に行ってデュースを回収しておいで
    A.T:え?なんでですか?
    寮長:呼ばれてるから
    A.T:誰に?
    寮長:四の五のお言いでないよ。早くお行き
    A.T:DX
    =====================
    当事者とは言え他寮の先輩をこれ以上引き留めても、会話とか色々面倒くさい。エースは適当に「お守りあざしたー」とか「マジ助かりましたこいつ妙なとこ鈍臭いんでー」とか言った。
    「ででで、では……これにてドロンします……」
    それに背中を押されたように早口で言いきると、イデアはさっさと保健室の出入口に向かう。そして扉に手をかけてから「あっ!」と言った。
    「言い忘れるところだった! 間一髪……こんなイレギュラー対応ですら完璧に対応できちゃう拙者、やはり天才……フヒヒ」
    「どうしたんですか?」
    「ヒィッ! す、すすすみませッ……まともに報告もできないのかよこのオタク! って思われてるのは承知の上ですぅぅ!」
    「いや、そんなこと思ってないんスけど」
    「シュラウド先輩はいつもあんな感じだぞ」
    「ふーん」
    「うそ……拙者の後輩、ドライすぎ……!?」
    愉快っちゃ愉快な先輩かもな、と思いつつ、エースは爪を眺めていた。今日の飛行術で爪の先を箒に引っ掛けてしまったのだ。ちょっとささくれている。
    部屋に帰ったらヤスリかけなきゃ、などと考えていた。そしたらいつの間にか立ち直ったイデアが、ススス……と廊下に滑り出ながら、なんでもない感じで爆弾発言をした。
    「あの、祝福の効果が切れるまでの一週間、一切の魔力交換禁止なので。セックスせんといてね」
    そしてストン、と扉が閉まり、保健室は静寂に包まれた。


    ***


    「中和薬を朝晩欠かさず飲んで一週間。祝福によって変質したデュースの魔力が元に戻るまで、絶対に性行為をしてはいけないよ」
    「? 聞き間違いかな……寮長、もっかい言ってください」
    「一週間セックス禁止」
    「聞き間違いじゃなかった! デュースどういうこと!?」
    「ぼ、僕が知るわけないだろ!?」

    寮に戻ってすぐ、待ち構えていたケイトによって、二人は寮長の部屋に通された。リドルは「大変だったねデュース。エースも、迎えに行ってくれてありがとう」と二人を労い(あのDMって幻? とエースは一瞬、自身の記憶を疑ってしまった)その流れでサラッと『一週間の性行為禁止』を言い渡した。
    二人は確かにそういうことをする仲だが、誰かにわざわざ言った覚えはなかった。デュースも言っていないと首を振る。
    リドルは顔を見合わせる二人に、これみよがしに溜息をついた。
    「あのね、僕だって全寮制男子校の寮長だよ。その類の報告を受けることもあるし、揉め事の仲裁だってしてるんだ。なにより魔力が混ざっていれば、すぐに分かるのだからね」
    「だからって直接言う!? デリカシー皆無じゃん! セクハラ反対!」
    「お黙り! そういうことは、同室のほか二人から騒音の苦情が出ないくらい上手くやってから言うことだね!」
    「あ、アイツら……! いや! でも天蓋に防音魔法かけてたはず!」
    「ベッドの揺れは天蓋の防音魔法では誤魔化せないんだよ」
    「そこか……ッ!」

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