夏の誘惑 蝉の鳴き声が鬱陶しく汗が額にまとわりつく。遠くの景色ががぐわんぐわんと歪み、足取りが重くなる。耐えきれずハンディタイプの扇風機を取り出した。しかし、こんな暑さではなんの足しにもならないかもしれないと、取り出しながらファウストは思った。
隣で歩いてるネロがこちらを向いて
「あっ! それ今流行ってるんだよね! いいなーファウスト。 」
と羨ましそうに言った。
「叔母がくれたんだ。暑いだろうと言って」
「私もやってみていい?」
キラキラした笑顔を浮かべながらネロはこちらを見ている。きっちりと制服を着ているファウストとは対照的にネロは制服の襟のボタンを二つほど開けていて、決して細すぎず白い太ももが見えるほどにスカートも短い。そして、滴り落ちる汗が首元をつたうのが見える。その水滴が彼女の色っぽさを増し、ファウストはドキッとしてしまう。恋人としては心配になってしまうほど彼女は魅力的なのに本人は無自覚なのだ。
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